民主法律時報

労基法を活かして賃金・残業代の不払いを無くそう――第2回労働相談学習会「残業時間、残業代の計算方法について」

おおさか労働相談センター事務局次長 宮 崎   徹

2023年2月7日(火)午後6時30分から「第2回労働相談学習会」が大阪国労会館3階大会議室で行われました。当日の参加者は、9産別、5地域組織、弁護士・その他から計35名でした。

学習会は、おおさか労働相談センター事務局長の福地氏の司会進行で始まり、まず主催者代表あいさつとして、川辺和宏所長は「労働時間管理・時間外労働の規制は喫緊の課題。しかし、経営者側は労働時間の規制を緩和するだけでなく、残業代を払わなくても良いように変形労働時間制の意図的な悪用や裁量労働制改悪を画策している。このような動きへの反撃を強めると同時に、しっかり労基法を学び、日頃の相談活動に活かそう」と話しました。

次に労働情勢報告が民法協事務局の佐久間ひろみ弁護士からあり、昨年11月末~本年2月初旬までの労働問題に関する判例や訴訟の動向について報告がありました。コンビニ店主の団体交渉権をめぐる裁判(東京高裁)では「労組法上の労働者に該当しない」と一審に続いて店主側が敗訴、上司が女性従業員の口にガムテープを貼るなどしたパワハラ裁判では、女性従業員側が熊本地裁に引き続き、高裁でも勝訴。「腐ったミカンは要らない」暴言でうつ病を発症した追手門学院のパワハラ・労災認定裁判では元職員の2人に逆転「労災認定」。羽衣国際大学の雇い止め訴訟では、元講師側が大阪高裁で逆転勝訴したことなどが報告されました。

続いて、「残業時間・残業代の計算方法について」というテーマで民法協事務局次長の清水亮宏弁護士より講演していただきました。まず、テーマに沿って労働基準法上の労働時間、時間外労働と割増賃金の原則をできるだけ簡潔に解説すると講演の主旨が述べられました。

残業代の計算上問題となる労働時間・休日に関する概念、用語の解説があり、続いて労働時間や休日、割増賃金と関連のある労基法の条文を学習(復習)しつつ、残業代の基礎となる1時間当たりの単価の対象となる賃金項目や割増率、具体的な計算の仕方などについて説明がありました。割増賃金の算定基礎は「労働に対して支払われた通常の労働時間または労働日の賃金」であって、①それ以外の属人的な手当(住宅手当、家族手当、通勤手当、名称ではなく実質で判断される)、②臨時に支払われた賃金、③1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は除外されます。

月給制の場合、その金額をその月の所定労働時間で除した額となりますが、1年間における1ヶ月平均の所定労働時間数で算出することができます。
(契約上の1ヶ月当りの所定労働時間が不明な場合)
365日/年÷7日/週×40時間÷12ヶ月=173.8時間(うるう年174.28時間)

残業代の端数は50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げでき(義務ではない)、残業時間は1日当たりは1分単位で算出、1ヶ月単位では30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げることもできます。

準備作業や後始末作業、待機時間(手待ち時間)、仮眠時間等が時間外労働として認められるか否かは、労働時間の定義が「労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間」とされていることから判断する必要があること、労働時間は労働者側が立証しなければならないとされており、証拠の提出にとどまらずその内容や作成経緯を詳細に説明して、その証拠と労働時間の関連性や正確性を説明することも重要であることが報告されました。

出来高払い制などの特殊な賃金制度の1時間当たりの労働単価の算出方法や固定残業代、変形労働時間制、賃金・時間外労働手当の請求権の消滅時効についてなど、短時間の講演の中で多岐にわたって説明していただきました。

会場からは3人の参加者から質問がありましたが、清水弁護士から丁寧な回答がなされました。
今回の学習会はまさに「入口」です。今後、参加者や各加盟組織からの要望に基づき、さらに学習を深めていきます。ご意見ご要望を引き続き、おおさか労働相談センターに寄せて下さい。

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