民主法律時報

「運転従事者の過重勤務・過労死緊急110番」を行いました

弁護士 上出 恭子

 未来ある大学生らが多数犠牲になった長野県軽井沢町のスキーツアーバス事故を受けて大阪過労死問題連絡会では、平成28年1月30日に運転労働者の方に向けて緊急の電話相談を実施しました。その後、全国過労死弁護団の主催で同年2月12日にも全国21都道府県で「過労運転・過労死110番」を行い、大阪でも実施しました(全国で51件の相談があり、そのうち37件が運転労働者の相談だったようです)。

1月30日の相談では、約30件の相談が寄せられ、そのうち約20件がタクシー、バス、トラック運転手の方からの相談でした。
法律で定められている始業前の点呼がきちんとなされていない、定期健康診断が10年近く実施されていない、運転手が足りないということで厚生労働省が勤務条件改善のために策定した「改善基準」告示に違反した勤務実態で、自分もいつ事故を起こすか心配でならないといった相談がありました。
中でも、貸し切りバスの会社で運行管理等で内勤をしていた元労働者の方からは、①バスの保有台数との関係で運転手が少ないと過密勤務を疑われるということで労働者名簿に勤務実態のない従業員や死亡した元従業員の名前が入っている、②実際には2時間以上かかる距離であるにもかかわらず、30 分で運行する前提で指示書を作成して、労働時間規制をクリアしているかのように偽装している、③運転手に16時間拘束の勤務の後、3時間洗車業務をさせたりしている、④ 点呼もしていないのに点呼したことにしたり、点呼する人間が酒に酔っていたこともある、⑤ 民家等を営業所に偽装し、偽営業所から出庫する指示書を作成して労働時間規制をクリアしているかのように偽装している等々のいくつもの深刻な法令違反がある会社の相談がありました。

平成26年度の脳・心臓疾患の過労死(救命分も含む)の労災認定件数は277件ですが、バス・トラック・タクシー運転者等自動車運転従事者の認定件数は85件と全体の3分の1近くに及び認定件数からしても、運転労働の過重性は裏付けられるところ、電話相談の内容からは、業界全体の過酷な労働実態がより明らかになりました。
連絡会では、必要な事案に対しては、弁護士が違反通告者として労基署へ改善を求める申し入れを行うなどの取り組みを今後行う予定です。

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