民主法律時報

第4回労働相談懇談会報告 コロナ関連学習:会社倒産と労働者の権利保護

おおさか労働相談センター事務局次長 宮崎  徹

第4回労働相談懇談会を2020年8月25日(火)午後6時30分より、国労大阪会館3階大会議室で開催しました。猛暑とコロナ禍の中、4産別・5地域から22名の参加がありました。

主催者あいさつに立った、おおさか労働相談センターの川辺和宏所長は「コロナ禍によって中小企業の倒産と労働者の解雇・失業問題が増加し、深刻化する可能性は大きい。そのことに対応できる相談活動を展開するために学習の強化と経験交流を活発に行おう。」と挨拶。

またこの間の労働相談で、コロナ休業に関わる相談に対する行政機関(労基署、労働局)の窓口の対応が非常におざなりで不親切だとの訴え、特に休業支援金についての苦情が多く寄せられていることを踏まえ、おおさか労働相談センターとして大阪労働局に対して、①休業手当の支給と雇用調整助成金制度活用に関する行政指導、②労働者個人による休業対応支援金制度に関する窓口対応の改善、③休業手当に関わる正規・非正規の均衡・均等対応に向けた行政指導の徹底などを求め、労働局に要請を行う(9月8日)と報告が行われました。

この間の情勢報告では、加苅匠弁護士(大阪法律事務所)から、民主法律協会が行ったコロナ関係労働相談と労働審判におけるコロナ整理解雇事件についての報告がありました。

労働相談内容では「休業手当・賃金の未払い」に関する相談、「解雇・雇止め・派遣切り」に関する相談、「生活相談、感染防止等」に関する相談が多く、傾向としては、「休業手当・賃金の未払い」に関しては、緊急事態宣言が開けてからも継続している点、「解雇・雇止め・派遣切り」に関しては徐々に増加している点、「生活相談、感染防止等」に関しては、医療関係職場から多い点、職場における労働組合が有っても相談してくる点などが報告されました。

一連の労働相談を通じて、生活が困窮するなかで、無料で相談できる機会を探す人が多いため、マスコミ報道やHP等を見ての相談が多い一方、弁護士費用の問題から事件に繋がる件数が少なかったのではと加苅弁護士は分析されていました。

労働審判におけるコロナ整理解雇事件の報告では、コロナ不況による整理解雇を主張する会社側に対して、裁判官が整理解雇の4要件に即して雇用調整助成金等の検討(利用)状況や業務の具体的見通しについての質問が行われ、会社側もたじろぐ有様だったとの報告がありました。

労働組合としては、会社に対して休業手当を求めると同時に雇用の維持を図るためにも、雇用調整助成金等、国や自治体が行う制度の活用を企業側に求める運動を強めると同時に、制度の拡充を求める運動を国や自治体に対して行っていくことの重要性を再確認した情勢報告でした。

コロナ関連学習会では「会社倒産と労働者の権利保護」をテーマに愛須勝也弁護士(京橋共同法律事務所)より講演が行われました。

まず、会社が倒産・廃業した場合の法的手続きとして債務整理・破産・民事再生・会社更生があること、それぞれの制度内容や特徴、メリット、デメリットについて詳しい説明が行われました。

続いて倒産等により労働債権(未払い賃金・未払いボーナス・退職金など)を回収するに当たって留意する事項として、債権は民法、商法、国税徴収法などの定めを参考に優先順位が決められること。先取特権を活かして労働債権を仮差押えしても破産開始が決定された場合は無効になること。労働組合としては、破産管財人との面談・交渉を通じて理解を求めるとともに「労働者健康福祉機構」による未払い賃金等の立替払制度(賃金の支払いの確保等に関する法律)を活用し、当面の生活を確保することが重要であることなどが、建交労アクアライン分会の経験などを踏まえて説明されました。

倒産に対する対応(偽装倒産含む)では、これまでの労働組合の闘いや判例などから教訓が紹介され、労働組合が日常から経営監視活動(経営分析や労使経営懇談会など)によって会社の状態と動きを迅速かつ正確に把握し、状況によって法的整理に向けた準備をしておくことが大切だとの指摘がありました。

参加者からは、偽装倒産への対応についての質問・意見が寄せられ、建交労からはアクアライン分会の争議経験をもとにした発言もあり、法律や理論と併せて経験交流なども含めた充実した学習になりました。

最後に労働相談センターの福地事務局長による「倒産・廃業の労働相談の多くは、未組織職場から寄せられるケースが多いことを考えると、職場の団結を訴えることが1番。その上で、弁護士との連携を1日も早く行うことが大事になってくるのではないか」とのまとめの挨拶で労働相談懇談会を終えました。

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