民主法律時報

労働相談懇談会に参加して

弁護士 清水 亮宏

1 はじめに
本年1月21日に開催された、2016年度第1回労働相談懇談会に参加したので、同会の内容について簡単に紹介する。

2 労働情勢報告
当会会員の西川大史弁護士から、昨年10月からの労働情勢について報告があった。大阪地裁で勝訴が続いていた大阪市の入れ墨訴訟や組合事務所退去訴訟について、大阪高裁において厳しい判決が下されていることや、和民の過労死裁判における和解の内容などについて報告があった。

3 大阪弁護士会開催の外部労組対応の研修を受けて
当会会員の安原邦博弁護士から、昨年末の大阪弁護士会の研修「外部労組に対する対応一般に関する相談対応」の内容や、これを踏まえた組合側の対応などについて、報告があった。(研修内容については、「民主法律 2016年権利討論集会特集号」に、同弁護士による詳細な報告がある)
(1) 講師について
研修の講師は、使用者側として、外部労組の「対応」に数多く携わっている弁護士であり、団体交渉に代理人が出席するメリット・目的は、早期の紛争解決にあると繰り返し主張していたとのことである。
(2) 第1部 はじめに~外部労組とは
第1部では、いわゆる外部労組についての説明があった。労使紛争自体が事業活動にとってマイナスである、外部労組とは継続的信頼関係の構築が困難である、非組合員との関係で安易な妥協が困難である等の説明が印象的であった。
(3) 第2部 背景としての基礎知識
第2部では、労働組合の定義・目的・活動等について説明があった。ここでは、「組合が入ると勝負の土俵が対等ではなくなる」という学者の言葉を紹介する場面もあった。
(4) 第3部 団体交渉対応
第3部では、使用者の団交応諾義務、支配介入の意義、団交には応じないが協議の場には参加するという対応もあり得ること、使用者の事務所で団交をすると交渉が長引くおそれがあるので貸会議室等を借りるべきであること等についての説明があった。
そのほか、誰が使用者側の団交の交渉担当者として望ましいのか、義務的団交事項の内容、団交前の準備、団交中は誠実な対応が求められること、外部労組の交渉担当者に花を持たせることが重要であること、安易な妥協は禁物であること等についての説明があった。
(5) 第4部 団交後の対応
第4部では、団交を1、2度経た後に担当者同士の「事務折衝」によって解決を図るのが一般的であること、労働組合の活動等を調査するために組合事務所を積極的に訪問すべきこと、組合の街宣活動への対応等についての説明があった。

4 地域・産別からの事例報告
参加した地域・産別労組から、使用者側の弁護士が団交に立ち会った事例についての報告があった。
弁護士が同席して良かった点については、会社の法律違反の問題では是正することを約束せざるを得ないこと、知識のない社長を説得することによって比較的早期に円満解決できたこと等が指摘されたが、弁護士が同席して良かった点はないと回答した組合も半数近くみられた。
一方で、法律論からしか回答しない、会社との打ち合わせが不十分で質問・要求に回答できない、遠隔地の弁護士の場合は団交日時が大幅に遅延する、刺激的・逆上的発言を行う等の問題点も指摘された。
その後の質疑では、組合側で、使用者側弁護士が団交に出席した場合の対応策を検討・集約すべきとの意見も出された。

5 最後に
研修により、外部労組の「対応」に数多く携わっている弁護士の団交対応を知ることができたことはマイナスではない。団交に使用者側弁護士が出席した場合に、組合側としてどのように対応すべきかを検討し、今後に繋げることが重要であると思う。

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