民主法律時報

大企業の身勝手許さない―シマノ「雇止め」争議で勝利和解

全国一般労働組合大阪府本部 書記次長 竹口 登美

自転車、釣具で世界的に有名な(株)シマノで起こった有期契約社員の雇止め事件が、2015年12月22日、大阪地裁堺支部で和解しました。2012年に会社が行った雇止め意思表示の撤回、同年12月31日付けでの合意退職、解決金支払いという、原告勝利の内容です。

(株)シマノの基幹業務である自転車部品のプレス作業に従事していた原告・多炭さんは2006年から派遣社員として、09 年からは(株)シマノに直接雇用される有期契約社員に。1年ごとの契約を反復更新し、5度目の契約を前に雇止めされました。
12 年10月、雇止め通告直後に多炭さんは全国一般労働組合大阪府本部に加入。団体交渉で、職場責任者が「来年は忙しくなる」など更新期待の発言があったことや、同年8月10日施行の「労働契約法19条」(雇止め法理)を示し雇止め撤回を求めました。しかし会社側弁護士も出席する団体交渉で「1年ごとの契約なので、一方的に通知すれば雇止めできる」と、まったく要求に応じないため、大阪地裁堺支部・第2民事部合議係(高橋善久裁判長)に雇止め無効・地位確認を求めて訴えました。

会社は「減産で4人余剰になる。多炭さん以外は自主退職の予定」と雇止めを通告。しかし団交で、他に退職者が出たため5人減ることになると指摘すると「人数の問題ではない」と言い、「他部署への配転など雇用確保をはかれ」と要求すると「検討したが無かった」と言っていたものの裁判の途中からは「検討の余地は無かった」と、会社主張に一貫性がありません。そもそも(株)シマノは毎年順調に売上を伸ばす黒字経営で株主への特別配当も続いており、人員削減の必要はありません。このように合理的かつ具体的な雇止め理由を示さない対応が裁判でも続いていました。

ところで、多炭さんは11年3月、労災事故で後遺障害が残るケガを負ったため、会社の安全配慮義務違反による損害賠償請求訴訟を起こしました。これは会社が解決金を支払うことで和解しました。ところが雇止め裁判が進むと会社は労災事故を多炭さんの不安全行動だと強調し、雇止め理由として言い出しました。非正規労働者の多くが、「文句を言えば契約更新されないかも」と泣き寝入りするのが実情です。そのような中で、勇気を出して会社の非を改めるべく労災補償裁判に立ち上がったことを嫌悪し、職場から排除しようという会社のネライは明らかです。

裁判ではこれまでの勤務実態や更新の期待を証明し、会社主張の矛盾を追及する中、裁判所は証人尋問を前に和解を提案。最終的に双方代理人による和解が成立しました。雇止めからちょうど3年。解決金は3年間の闘いに見合うもので、有期契約・非正規雇用労働者ということをみれば画期的な内容の勝利和解です。

労働者の4割が非正規雇用でその多くが低賃金かつ雇用不安を負っています。「契約社員はいつでも一方的に雇止めできる」と断言する経営者が増えれば、さらに雇用情勢が悪化し、格差と貧困が広がることになります。私たちは引き続き、大企業の横暴許さず、非正規労働者の権利向上と均等待遇実現、そして「非正規だから」の泣き寝入りをなくすために奮闘する決意です。

(弁護団は、山﨑国満、井上耕史、南部秀一郎)

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