民主法律時報

「民事訴訟法(IT化関係)等 の改正に関する中間試案」に 反対する意見書を出しました

弁護士 原 野 早知子

1 意見書の作成と発表

2021年11月12日付けで民法協として表記の意見書を発表し、法制審議会に送付しました。裁判府労委委員会が9月に開催した学習会をきっかけに、同委員会にて草案作成を行いました。

民事訴訟手続のIT化については、法制審議会IT化部会で検討が進んでいます。同部会の「中間試案」は、内容が多岐にわたり弁護士も全体を把握しているとは言い難く、まして法曹界以外にはほとんど知られていません。

意見書では「中間試案」のうち、労働裁判に影響する、①ウェブ方式による口頭弁論・証拠調べ、②第三者の閲覧等の制限の決定に伴う当事者の義務、③新たな訴訟手続、④和解に代わる決定の4点について、反対の意見を述べています。(民法協HPに全文を掲載。)

2 各点の問題について

①は、法廷での口頭弁論を「ウェブ方式」で行うものです。これが導入されると、「裁判官は座っているが、当事者・代理人がいない(モニターの向こうにいる)法廷」が実現してしまいます。尋問も、証人・本人が在廷せず、モニター越しで実施できる場合が広がります。しかし、そのような緊張感のない法廷で、主張を闘わせ、会社側証人や代表者を追及して真実に迫ることが出来るでしょうか。労働裁判闘争では、労働組合員や支援者が法廷を傍聴し、裁判を監視するとともに、法廷のやりとりを社会的に広げることが、一つの中心的な取組みです。ウェブ方式の口頭弁論・証拠調べはこうした運動の力を弱めてしまいます。

②は、訴訟記録中の「秘密」(プライバシーや営業秘密)について第三者に対する閲覧制限がなされた場合、当事者・代理人に目的外利用、開示を制限する義務を課すものです。導入されれば、裁判の証拠に基づいて、事実を訴え発信する活動がしづらくなり、萎縮させられてしまいます。また、労働組合が同種の請求権を持つ労働者に向けて権利行使の呼びかけをする活動や、証拠資料などを情報提供したり、共有したりすることも難しくなります。

③は、審理期間を6ヶ月以内に制限する訴訟制度を新たに創設しようというものです。このような短期間のラフな訴訟手続を導入する理由(立法事実)は存在しません。また、今のところ、「個別労働関係民事紛争」は適用外とされていますが、一旦制度が導入されれば適用対象が拡大される恐れがあります。

④は、和解が調わない場合、裁判所が相当と認めるときは、職権で「事件の解決のため必要な和解条項を定める」決定をすることができる制度を導入しようというものです。いわば「強制和解」を可能にするもので、労働裁判でままある、強引な和解(事件の終了のみを目的に行う和解)を追認することになりかねません。当然、理由も記載されないので、当事者である労働者や労働組合の納得も得られません。

なお、③・④は、いずれも、民事訴訟手続IT化とは直接関係ないのに、法制審部会が導入を推進しようとしているものです。

3 意見書の意味

民事裁判のIT化は、弁護士にとっては便利な側面もありますが、裁判闘争の在り方をマイナスの意味で変えてしまう問題点が含まれていることは看過できません。

労働者・労働組合の立場から、民事訴訟手続のIT化について意見をまとめた例は余り見当たらず、民法協が意見をまとめたことには一定の意味があったと考えています。2022年には「中間試案」が更に具体化される見込みで、引き続き注視が必要です。

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