民主法律時報

「解雇の金銭解決制度」に 反対を!

弁護士 西 川 大 史

1 はじめに

民法協では、2021年11月26日に、「解雇無効時の金銭救済制度導入に反対する声明」を発表しました。

厚生労働省は、いわゆる「解雇の金銭解決制度」について、すでに取りまとめの段階に至っているようです。そもそも、違法な解雇は無効となるため、雇用関係は終了せずに継続します。しかし、「解雇の金銭解決制度」により、違法な解雇でも、労働者に金銭が支払われることによって労働契約関係が終了することになります。「解雇の金銭解決制度」は、労働者を救済する制度ではなく、労働者にとっては何のメリットもありません。

2 労働者に新たな選択肢を与える制度ではない!

訴訟や労働審判でも、違法な解雇事案では、事案に適した金額の解決金を支払うという内容で和解解決ができます。「解雇の金銭解決制度」により、労働者の選択肢が増えるというわけではありません。

現在の案では、裁判外で権利行使することができないとされており、労働者が訴訟を提起し、あるいは労働審判を申し立てて、解雇が違法であると認められることが前提となっています。労働者の負担が今よりも軽減されるものではありません。

現在でも訴訟や労働審判などでの金銭解決水準は決して高くなく、労働者が十分に満足できるものではありません。仮に、「解雇の金銭解決制度」が導入されれば、解決金が画一化して、さらに解決金の水準が低くなることも危惧されます。

3 使用者にとって大きな武器となる!

「解雇の金銭解決制度」が導入されれば、裁判所が違法・無効と判断した解雇であっても、金銭さえ支払えば労働者を企業から排除することができるという感覚が使用者に芽生え、違法・不当な解雇・雇止めを助長することになりかねません。

使用者は、解雇のコストを予測することができ、リストラの大きな武器となりかねません。

4 使用者側にも申立権が拡大するおそれが大きい!

現在検討されている「解雇の金銭解決制度」では労働者側に申立権を限定しています。しかし、厚労省の当初案は、使用者側にも申立権を認める案でした。

今後もし「解雇の金銭解決制度」が定着すれば、使用者側にも申立権を認めるべきとの動きが拡大するのは必至です。使用者側にも申立権が拡大すると、金銭さえ支払えば、違法な解雇でもやりたい放題、首切り自由の社会が到来することになります。

5 労働組合の存亡にもかかわる!

労働組合員であることを理由とする解雇は、法律上許されません。しかし、「解雇の金銭解決制度」は、すべての解雇・雇止めが対象とされており、法律で禁止されている労働組合員であることや組合活動を理由とする解雇も対象に含まれます。使用者側が、労働組合員を狙い撃ちとした解雇を行い、金銭の支払により労働組合員を企業から放逐するおそれもあります。

6 反対の機運を高めて、導入阻止を!

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多数の労働者が雇用に対して大きな不安を抱いています。違法な解雇・雇止めを助長する制度の導入ではなく、雇用の安定の実現こそが望まれます。

「解雇の金銭解決制度」について、導入ありきで議論が進められてきました。しかし、労働者にとっては何のメリットもなく、必要のない制度です。「解雇の金銭解決制度」の内容を多くの方に知っていただき、こんな制度はいらないという声をあげることが重要です。反対の機運をさらに高めて、「解雇の金銭解決制度」の導入を阻止しましょう。

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