民主法律時報

2020年度 第3回労働相談懇談会「コロナ関連学習:解雇・雇止め、退職強要、労働条件の不利益変更について」

おおさか労働相談センター事務局長 福地 祥夫

 おおさか労働相談センターに最近寄せられる労働相談では、新型コロナによる経営困難を理由にした解雇、退職強要、労働条件不利益変更などの相談が増えています。そこで、原野早知子弁護士を講師に「新型コロナに関わる解雇・雇止め、退職強要、労働条件の不利益変更などの相談にどう対応するか」をテーマにした第3回労働相談懇談会を2020年6月25日(木)に開催しました。当日は7産別・8地域の組合役員と弁護士など 40名が参加しました。

最初に労働相談センターの舛田相談員からコロナ関連の相談事例と相談の傾向についての報告が行われ、続いて学習会が行われました。学習会の冒頭、原野弁護士は「コロナによって法律が変わった訳ではない」とした上で、コロナによる経営不振が原因の解雇・雇止め、内定通り消しであっても、従来の整理解雇4要件を満たしているかどうかの検証が重要であると指摘されました。

そして4要件のひとつひとつについての具体的説明に加えて大日本印刷事件(最判昭54年7月20日)、インフォミックス内定取り消し事件(東京地決平7年 10月31日)などでの「会社の主張」と「裁判所の判断」を具体的に紹介しながら、解雇・雇止め、内定取り消しに客観的合理性や社会的相当性があるかの検証と、会社に経営状況に関する客観的資料を出させるなど会社を追及することが大事で、労働組合の力を発揮するときであると指摘されました。

退職強要・退職勧奨についても、文章で退職の意思がないことを明確にすることが大切。応じてしまうと、強要や脅迫をされたと、無効を争ってもハードルが高い。と指摘した上で、会社側の言動が、許容された退職勧奨の範囲を逸脱するとして、慰謝料の支払いを命じた日航雇止め事件の判例(東京地判平23年10月31日)を紹介され、退職強要・勧奨についても労働組合による申し入れなどの重要性を指摘されました。

労働条件の不利益変更については、労働者に合意するよう迫り賃金などを不利益に変更するという事例として山梨県民信用金庫事件での最高裁判例(平成28年2月19日)を挙げて、合意書や同意書にサインした場合でも、不利益の程度が著しいのに説明が尽くされていないようなときは「合意」がないと主張すべきだと指摘されました。

参加者からは、「原野先生の話は判例もあってわかりやすかった」「整理解雇について、今後の団交に役立つ方法もあり参考になった」「法的確信を持って団交でがんばっていきます」などの声が寄せられています。

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