民主法律時報

民法協 第66回定期総会のご報告

前事務局長・弁護士 谷   真 介

 2021年8月28日、エル・おおさか+オンラインで、第 回定期総会を開催しました。新型コロナ禍で4回目の緊急事態宣言が発令されている中でしたが、昨年に引き続き、実会場に上限を設定して密を回避しつつオンライン(zoom)併用で実施しました。実会場で50名、オンラインで約80名で合計130名と、近年で比較しても多数の参加をいただきました。

萬井隆令会長

冒頭、萬井隆令会長より、民法協総会には2つの意味があること、一つは民法協の各会員の活動と課題を民法協総体として把握する機会にすること、そしてもう一つはそのときどきの情勢・課題に応じふさわしい方に講演をいただき、会員自身のものにして来期の活動に活かしていくことにある等、開会のご挨拶をいただきました。

西谷敏先生

西谷敏大阪市立大学名誉教授

これを受け、今年は西谷敏大阪市立大学名誉教授に「コロナ後の労働法と労働運動――第二段階の『働き方改革』への対抗戦略」というテーマで基調講演をいただきました(ご自宅からオンラインでのご講演)。民法協の研究者幹事でもある西谷先生には、これまでもたびたび節目にご講演をいただいてきましたが、今回はコロナ禍における労働者が置かれた状況を踏まえ、コロナ禍によって広まったテレワークや、また拡げられようとしている裁量労働制、兼業・副業、さらには解雇の金銭解決制度、フリーランスの拡大など「働き方の多様化」を「第二段階の『働き方改革』」として位置付け、これらが政府・経済界のどのような狙いに基づいて出てきているものであるのか、ある労働者にとっては利益になりまたは不利益にもなるという複雑な利益状況にあることを踏まえた上、これに対する労働運動側の対抗軸や役割、戦略について整理をいただきました。私が最もはっとしたのは、例えば裁量労働制の拡大について反対をしていくにしても、労働における裁量性は「働きがい」につながる重要な要素であるとの視点がこれまで抜け落ちていたことを自覚したことです。ただしそのことと、実際には存在しない裁量性を口実とした「裁量労働制」については厳密に区別する必要があり、これには規制の枠をはめ、その中で労働者の働きがいを実現していく運動を構築する必要があります。裁量労働制の新しい調査でも裁量労働制に満足していると答えている適用労働者も相当数いる結果となっており、複雑な問題状況がありますが、西谷先生のご講演で対抗軸をどう考えればよいかについて整理ができました。

最後に、西谷先生は、「労働組合は死んだ」という言説に対し、労働組合は簡単には死なない、しかし問題はそれが真に「生き続ける価値があるかどうかが問われる」と提起されました。また、より具体的に、職場や組合の中で自らの頭で考えること、組合員が自分の意見が反映されたと感じる組織であること、労働者の働きがいにもっと組合が関心をもつことなども指摘されました。厳しい指摘ではありますが、各参加者が基本的なところを再確認できたのではないかと思います。

その後、総会議事に移りました。事務局長である私より1年間の活動総括と方針を報告し、その後、①コロナ禍と職場・労働組合、②大阪地裁労働部の現状と課題をテーマに討論しました。①では、大阪府職労から保健所の逼迫した人員不足、長時間労働の実態と無力感にさいなまれながらも奮闘する保健師さんたちの状況、またこれらを可視化させる運動について報告されました。また福祉保育労から、福祉・介護職場で感染の危険に晒されながら就労している実態や労働組合ならでは横のつながりでの情報共有、またその中で組合員の要求をくみ取り実現していく実践について報告されました。次に②については、西川大史弁護士より、大阪地裁労働部がコロナ禍と裁判のIT化の状況にいわば便乗し、省力化ばかり頭において審理しようとしていることの危惧が報告・提起されました。

その後、4つの特別報告をいただきました。①20年ぶりに改訂される脳心臓疾患の労災認定基準(いわゆる過労死ライン)について(岩城穣民法協幹事長)、②奈良学園大学事件の高裁勝利和解解決の意義(原告・西川弘展さん)、③表現の不自由展おおさかの意義と今後の課題(藤木邦顕弁護士)、④障害のあるひとり親の児童扶養手当併給調整違憲裁判(田中俊弁護士及びきょうされんの雨田信幸さん)と、いずれも重要な報告がなされました。

また一昨年から始まった本多賞の表彰では、今年は、今年2月に大阪地裁で歴史的勝利判決を勝ち取った生活保護基準引き下げ違憲訴訟の大阪弁護団及び支援団体である「引き下げアカン! 大阪の会」が受賞しました。弁護団から喜田崇之弁護士、支援団体から大口耕吉郎さん(大生連会長)にスピーチをいただきました。いずれのスピーチも、立ち上がった原告ら、そして粘り強い活動をし裁判官を説得した弁護団、原告を支え世論をつくった支援者が一体となって取り組み、裁判官の理性と正義感を突き動かしたことが語られ、参加者一同が裁判と運動の力を確信することができた感動的なものでした。また控訴審でも絶対に勝利するという強い決意が語られました(本多賞については10月号に詳細が掲載されますのでお楽しみに)。

最後に、決算・予算及び会計監査報告、そして総会の特別決議として、「新型コロナ禍の中で、政府に対し従前の政策を転換させ、真の労働者・就業者保護のための政策を行うよう求める決議」を採択しました。そして新役員の人事案も承認されました。今回は久しぶりに幹事団体が新しく3団体(音楽ユニオン関西、年金者組合大阪府本部、大生連)選任されました。また長らく会計監査を務めていただいた田窪五郎弁護士が退任され、松本七哉弁護士が新たに就任されました。また事務局も多数の交代がありました。退任は事務局長である私、事務局次長の喜田崇之、藤井恭子の各弁護士、事務局の冨田真平、大久保貴則、足立敦史、西川翔大、中西翔太郎の各弁護士、新任は事務局長に西川大史弁護士、事務局次長に片山直弥、清水亮宏の各弁護士、事務局に西田陽子、西川裕也、佐久間ひろみ、脇山美春、垣岡彩英の各弁護士です。フレッシュなメンバーとなり、今後民法協の新たな運動を支えて下さるものと思います。最後に豊川義明副会長から閉会の挨拶をいただき、定期総会は終わりました。

2022年度も、新体制の下で、コロナウイルスによりますます打撃を受ける労働者やフリーランス、市民等を守る取組み、また迫る総選挙や、西谷先生の講演でもあった解雇の金銭解決制度や裁量労働制など第二次「働き方改革」への対峙など、課題が山積しています。引き続き民法協の活動にご参加のほどよろしくお願いします。

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