民主法律時報

開かれた裁判所に逆行する 「民事裁判手続等のIT化」に反対!――裁判・府労委委員会例会

大阪争議団共闘会議事務局長 宮 崎 正 光

正木みどり弁護士

正木みどり弁護士

202年年9月14日、民法協・裁判府労委委員会の例会で「民事裁判IT化と裁判闘争」と題して正木みどり弁護士から、①民事裁判のIT化②新たな訴訟手続についての学習会が行われました。
「民事裁判手続等のIT化」は政府の「未来投資戦略2017」で「迅速かつ効率的な裁判の実現」を図るため、政府主導で「IT化検討会」を設置しました。さらに「未来投資戦略2018」では「世界で一番企業が活躍しやすい国の実現」の項目で、「裁判手続等のIT化の推進」を掲げ、2018年の「骨太方針」で、司法を「治安・司法」の項目で位置づけられているとし、こうした背景の下で「民事裁判手続等のIT化」が推し進められているとの報告がありました。

現在、財界の要求や政府・与党により急テンポで司法制度「改革」の方向性や内容を打ち出されていますが、具体的に、いつ、どのようなシステムが作られ、信頼性(セキュリティを含め)・安定性・利便性が保障されるのか、また、オンライン提出についての本人確認や、なりすましや非弁問題等、様々な問題点が何ら明確になっていない状況の中、政府の関係府省庁連絡会は「2022年中に民訴法改正」を目指すとして、2022年2月の法制審議会総会で答申を承認し、同年の通常国会に民事訴訟法改正案を成立させるタイムスケジュールありきで導入が計画されています。さらに「民事裁判手続等のIT化」と何ら関係がなく、最高裁が提案する新たな訴訟手続として、審理期間を6ヶ月以内に制限する「期間限定訴訟」と裁判所の職権で、事件の解決のために、必要な和解条項を定める「和解に代わる決定」の創設も提案されているとして問題点を指摘されました。

「期間限定訴訟」は、期間を限定し、証拠を制限すれば、主張や立証の機会を制限され、不十分な審理や粗雑な審理で誤った判決が下される危険性を伴うこと、「和解に代わる決定」では「強制和解」「理由なし判決」として、裁判所が判決を回避し、和解の押し付けが濫用される危険性が指摘されました。いずれも2週間以内に異議を申し立てれば、通常訴訟や訴訟手続に戻るが同じ裁判官が審理し判決を書くことになり、当事者は結局諦めてしまうことが想定されるなど、近代訴訟制度の原則や当事者の裁判を受ける権利に反するとして「新たな訴訟手続」の新設に反対の声を上げていくことが重要だと報告されました。

IT化が進んでいると言われる諸外国では書面の提出(e-filing)は進んでいるが、e-法廷はあまり見られない、日本より進んでいる韓国のIT化でも書面の提出(e-filing)は8割(本人同意)で、e-法廷は例外的にしか行われていません。ところが今回の「IT化」提案では当事者本人にも義務化し、e-法廷から始めるといった本末転倒な提案内容となっています。
報告を受けての質疑・応答では、①ハイブリッド方式の証拠調べ②WEB裁判や人証調べの方法③裁判傍聴の保障④IT化は阻止していく必要がある等の意見・質問が出されました。
学習会に参加し大阪争議団共闘会議として、争議支援の運動の一つの「裁判傍聴」は憲法第 条1項の「裁判の対審及び判決は,公開法廷でこれを行ふ」とする公開原則によること、裁判の迅速化や経費削減を理由とした「IT化」で形骸化される危険性もあり、これまでの開かれた裁判所に逆行する「IT化」や「新たな訴訟手続」の学習を強め、反対運動を積極的に取り組んでいくことを強く痛感しました。

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