民主法律時報

裁判・府労委委員会例会「大阪市食肉市場事件」

大阪争議団共闘会議 小 林 隆 司

1 はじめに

裁判・府労委委員会は2022年5月19日、エル・おおさかで例会を開催しました。今回のテーマは「大阪市食肉市場事件」。組合員に対する一方的な解雇通告、不当配転、賃金未払など、経営側の不当な圧力と闘う状況について、弁護団の脇山美春弁護士が報告を行い、井上耕史弁護士が補足説明をしました。続いて、早瀬雄章執行委員長をはじめ複数の組合員が発言。その後、出席者との間で活発な議論が交わされました。例会には24名が参加しました。

2 「大阪市食肉市場事件」とは

事件の舞台である大阪市食肉市場株式会社(以下、会社)は、酪農家などから出荷された牛や豚などを食肉に加工し、これらを「競り」によって業者に販売するのが主な業務です。社員は管理職以外、ほとんどが大阪市食肉市場労働組合(以下、組合)の組合員です。

職場では2018年末頃まで特に大きな労使紛争はありませんでした。しかしこの頃から会社は、第三者の会社からパート従業員や出向社員を受け入れはじめました。その一方で、組合員に対し賃金減額を通告するなど、不利益変更を行うようになりました。

これに組合も対抗します。2019年2月、団体交渉で会社側と「労働条件や人員補充について事前協議すること」等とする確認書を締結し、いったん収束したかのようにみえました。

ところが会社は同年6月、組合と事前協議もせず、「全従業員35名の整理解雇」を一方的に通告しました。当時、従業員数は45名で、うち組合には35名が加入していました。整理解雇の対象は組合員だったのです。組合は直ちに大阪府労働委員会に救済を申し立て、実効確保の措置勧告申立を行いました。その結果、翌7月に府労委より会社に対して口頭要望があり、整理解雇を会社に撤回させ、同年12月には和解協定も成立しました。

しかし、現社長の田中達夫氏が2020年2月に会社顧問に就任して以降、和解協定を反故にする事件が発生しました。

3 現状

会社は2020年4月、和解に反し、定時昇給をストップ。早瀬委員長への出勤停止処分や組合三役に対する降格処分、配転を強行します。こうした攻撃は一般組合員にも行われ、賃金減額や一時金の不払い、事務職の女性を現場職に配転するなどしました。

現在、大阪地裁では組合幹部や女性事務職員等合計4人に対する配転無効訴訟と未払賃金請求訴訟、府労委においては救済命令待ちといった状況で、まさに「争議のデパート」と化しています。

4 今後の展望

弁護団の井上弁護士は、会社の違法行為を止めたいが、これまでに発出された府労委の実効確保には限界があると指摘。その一方で、会社は裁判そのものには「勝つ気がないのではないか」と述べ、時間をかけて組合の弱体化を狙っていると発言しました。

早瀬委員長は「年収ベースで200万円近くは下がっている」と一方的な賃下げの実態を発言。組合員も15名に減少したと述べ、「会社は組合員を排除し、出向や派遣社員に入れ替えている」と会社の姿勢を批判。組織拡大にも取り組み、会社の攻撃には屈しないと決意を述べました。

支援する建交労大阪府本部の荻田智書記長は「当該と弁護団、私たちが一体となり、争議を解決するまで支援する」と訴えました。

出席者からは、「株式会社とはいえ、『大阪市』の名を冠しているのだから、大阪市当局に強い指導をさせるべき」「財務諸表を読み込むなど、当該は踏ん張っている。支援の輪を更に拡げるべき」等の意見も出ました。

一刻も早い争議解決が望まれます。大阪争議団もできる限りの支援を継続してまいります。

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