民主法律時報

反対!!「定額(低額)働かせホーダイ」 在阪法律家8団体共催5.21緊急集会

弁護士 中 峯 将 文

 2015年5月21日、エル・おおさかにて、在阪法律家8団体の共催で、「反対!!『定額(低額)働かせホーダイ』5.21  緊急集会」と題して、いわゆる「残業代ゼロ」法案に反対する集会を開催しました。300名が参加しました。

 最初に、城塚健之弁護士(民主法律協会・幹事長)から開会あいさつがあった後、たつみコータロー参議院議員から来賓あいさつがありました。
その後、中西基弁護士(民主法律協会・事務局長)から、法案提出までの経過や国会情勢等の報告がありました。

 また、竹信三恵子教授(和光大学)から、「女性は活躍できない、子育ても出来ない……~『残業代ゼロ』で日本が食い尽くされる。」とのテーマで、いわゆる「残業代ゼロ法案」がもたらす日本の仕組みの転換についてご講演いただきました。まず、竹信教授は、残業代ゼロ法案の年収要件について、派遣法の要件が緩和されてきた歴史を引き合いに出し、また、年収要件が省令で変更できてしまう仕組みを指摘して、一度法律が成立してしまえば、なし崩し的に年収要件が引き下げられてしまうことを説明されました。また、竹信教授は、残業代ゼロ法案が成立した場合に、①国際的にみても長時間労働者が多い日本で、労働時間規制を撤廃すれば労働者はますます長時間労働を強いられるようになり過労死を促進してしまうこと、および、②長時間労働が出来ない子育て世代の女性は非正規社員として低賃金で働かざるを得ず、家計を支えるために男性が益々長時間労働を強いられ、ますます貧困化が進むという悪循環になるということを、データを用いて分かりやすく説明されました。

 次いで、松丸正弁護士(過労死弁護団全国連絡会議代表幹事)からは、自身が過労死事件に取り組まれる中で考えた、過労死が生じる原因についてお話しいただきました。松丸弁護士は、過労死問題の一番大きな問題点は、労働時間が職場の中で適正に把握されていないことだと言います。実際、松丸弁護士から紹介された事例では、自己申告による労働時間とパソコンや警備記録から明らかになった実態との乖離はすさまじいものでした。労働時間が適正に把握されれば、労災認定も通るし、会社としての責任も自然に明らかになり、コンプライアンス機能が働くし、労働組合としても労働時間規制に取り組むことができるが、労働時間が把握されていないことが、過労死・過労自殺を生み出す一番の元凶だとのことでした。松丸弁護士は、「残業代ゼロ」法案は、労働時間の液状化現象を労働現場全体に合法的に持ち込もうとしている法案だと考えると述べられましたが、強く共感しました。

労働行政が過労死防止のスタンスを取るのか、過労死促進のスタンスを取るのか、今問われていると思います。松丸弁護士の言うように、人間としての尊厳を守るための岩盤としての労働時間規制を守る闘いをともに進めていかなければなりません。

 この後、垣沼陽輔氏(大阪ユニオンネットワーク代表)、宮木義博氏(全労働省労働組合近畿地方協議会)、寺西笑子氏(過労死防止大阪センター)、及び、北村諒氏(関西学生アルバイトユニオン)からの団体発言、労働時間法制改悪に断固反対する集会アピールの提案及び採択があり、最後に、大川一夫弁護士(連合大阪法曹団・代表幹事)からの閉会挨拶により、終了しました。

 昨年11月、過労死遺族らの奮闘により、過労死等防止対策推進法が施行されました。仕事と生活を調和させ健康で充実して働き続けることのできる社会を実現するため、協力・協同して「残業代ゼロ」法案を撤回させる運動を広げなければならないという決意を共有できた集会であったと思います。

民主法律時報アーカイブ

アーカイブ
PAGE TOP