民主法律時報

朝日放送ラジオ・スタッフユニオン事件勝利和解で解決

弁護士 加 苅   匠

1 中労委で勝利和解
2021年7月 日、中央労働委員会で和解が成立しました。朝日放送ラジオの現場から朝日放送ラジオ・スタッフユニオン(以下、単に「組合」といいます。)の組合員らが追い出されてから、ちょうど1200日目。組合員らや支援の方々が努力を尽くした末に掴み取った勝利和解でした。

2 事案の概要と和解に至る経過
2018年3月 日、朝日放送ラジオでラジオニュースのリライト(新聞等の原稿をラジオ用原稿に書き換える業務)やデスク業務を行っていたスタッフら5名が結成した組合が、朝日放送株式会社(以下、「朝日放送」といいます。)に対して、朝日放送がスタッフらの派遣元会社である合同会社DH(以下、「DH社」といいます。)との間の労働者派遣契約の更新を拒否したことに対して、組合員らの雇用の確保等を求めて団体交渉を要求したところ、朝日放送はこれに応じませんでした。そのまま団交は開催されず、2018年3月末日を経過し、組合員5名は仕事を失いました。2018年5月7日、組合は、大阪府労働委員会に団交拒否の不当労働行為について救済命令を申し立てました。
2020年2月3日、大阪府労働委員会は、上記団交拒否について、朝日放送グループホールディングス(株)及び朝日放送ラジオ(株)の両社(2018年4月に朝日放送がグループホールディングス化されました。)に対し、朝日放送は予め労働者を特定ないし指定して派遣を受け、各人のキャリアや能力を評価して労働の対価に反映させており、派遣法や派遣先指針の定めを逸脱して、組合員らの採用や雇用に関して、事実上、雇用主と同視できる程度に、現実的かつ具体的に支配決定するに至っているとし、派遣先である朝日放送は労組法7条の「使用者」にあたり団交応諾義務があると判断する救済命令を出しました(具体的な判断内容や意義については、2020年3月発行の民主法律時報の報告をご覧ください)。
朝日放送グループホールディングス社らはすぐさま再審査を申し立て、闘いの舞台は中労委へ移りました。組合は、本件は団交拒否の問題にとどまらず、組合員らの雇用喪失の問題であると位置づけ、法人格否認の法理や黙示の労働契約の主張等を補充し、また高橋賢司立正大学教授の意見書を提出するなど追加の立証を行いました。また、組合は、中労委における和解解決も見据えて、2020年 月9日には大阪地裁に地位確認訴訟を提訴したり、組合の方では会社前や朝日新聞前での宣伝活動を続けたりして、プレッシャーをかけ続けました。朝日放送側は、当初は和解に消極的でしたが、徐々に態度を軟化させ、最終的には和解解決へと舵を切り出しました。

3 和解内容と意義
2020年7月 日、審査委員及び参与委員による働きかけもあって、和解金600万円で和解が成立しました。和解に際して、審査委員からは、非正規切りの再発防止にこだわった組合の意見を尊重し、朝日放送に対して、「組合は、再び労使紛争が起きないよう要望されていますので、会社らにその旨をお伝えします。」と、新たな労使紛争の勃発を牽制する異例の口頭表明を行いました。
解決金600万円という金額は、組合員5名の雇用喪失(解雇)の事例と捉えると十分なものではありません。まさに非正規労働者の雇用を軽視する社会情勢を反映する結果となってしまいました。
しかし、派遣先企業による派遣労働者らの組合に対する団交拒否の事案の解決金としては画期的な数字です。中労委も、派遣先の使用者性を認める勝利命令の存在を前提に、本件が単なる団交拒否事案ではなく組合員の雇用の問題も含んでいると考えたからこそ絞り出された金額であり、その点では大いに評価できるものです。

4 おわりに
本件は、多数のご支援をいただき、なんとか勝利和解で解決することができました。ご支援ご協力ありがとうございました。
本件は解決しましたが、組合は存続し、本件の経験を生かして、今後も朝日放送や放送業界における非正規労働者を擁護するための活動に取り組むこととなりました。引き続き、非正規労働者の権利擁護のために闘う朝日放送ラジオ・スタッフユニオンへのご支援をよろしくお願いいたします。

(弁護団は、村田浩治、河村学、加苅匠)

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