民主法律時報

大阪・泉南アスベスト国賠訴訟―上告代理人就任のお礼と今後の闘いについて

                                                                  弁護士 谷  真 介

 大阪・泉南アスベスト国賠訴訟について、今年8月25日の耳を疑うような大阪高裁判決(三浦潤裁判長)から、すでに4か月が経ちました。
 高裁判決は、アスベスト被害に関する国の責任を正面から認めた地裁判決を根底から覆し、未だ病苦に苦しむ被害者を奈落の底に突き落としました。判決内容もまたひどいもので、国の規制権限行使のあり方について、工業製品の製造等によって労働者の生命健康に被害の発生が懸念されても、厳格な許可制とすれば、工業技術の発達と産業社会の発展を著しく阻害し、労働者の職場自体を奪いかねないと言い放ち、憲法で最も尊重されている国民の命と健康と、経済発展とを天秤にかけました。また、被害者らが健康被害を受けたのは、事業者が労働者に防じんマスクを徹底せず、労働者自らも防じんマスクを着用しなかったからだとして、国の責任を全否定しました。泉南の石綿産業の実態や原告らの被害を正視せず、劣悪な環境で必死に働き国の経済発展を下支えしてきた原告らをばっさりと切り捨てたのです。
 勝利を確信していた原告団は、まさかの逆転の敗訴判決に打ちひしがれました。しかし、全国から多数の判決に対する怒りの声、原告団への励ましの声をかけてただき、原告団もこの不当判決に絶対に屈するわけにはいかないと、原告全員で最高裁に上告しました。最高裁には、この判決は全国民が許さない、正当と評価する者は誰一人としていないということを示すため、上告理由書・上告受理申立理由書の提出に併せ、全国の弁護士に上告代理人への就任を依頼したところ、全国で1008名の弁護士に代理人に就任いただくことができました。民法協会員弁護士におかれては、ほとんど全ての方に就任をいただき、この場をお借りしてお礼を申し上げます。11月22日には、弁護団が渾身の思いで作成した上告理由書、上告受理申立理由書を提出し(弁護団のホームページhttp://www.asbestos-osaka1.sakura.ne.jpにアップする予定です)、年明けからは、いよいよ最高裁に対する要請行動も開始します。
 ところで、高裁判決の後、大阪地裁第8民事部において同時並行で進んでいた2陣訴訟(被害者数33名)が10月26日に結審し、判決言渡し期日が来年3月28日午後2時に指定されました。同じ大阪での判決ですので、大阪高裁判決の影響を受けることは必至ですが、逆にそれを乗り越えて勝訴判決が得られれば、不当な大阪高裁を覆したと評価することができます。原告団・弁護団・支援一同、この2陣判決を最重要と捉え、また建設アスベスト訴訟や尼崎クボタ国賠訴訟など来年全国で判決が続くであろうアスベスト被害について国の責任を問う訴訟と一緒になって、不当な高裁判決を絶対に最高裁で覆し、泉南アスベストの全面解決まで戦い抜きたいと決意をしています。どうぞ今後とも、変わらぬご支援をよろしくお願い致します。

平成24年1月21日(土)午後2時30分~ 泉南アスベスト国賠原告を励ます新春の集い 泉南市立樽井公民館
平成24年3月28日(水)午後2時~ 2陣大阪地裁・判決言渡し
                午後3時~ 報告集会(大阪弁護士会館2階ホール)

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