民主法律時報

旧大阪シンフォニカー交響楽団(現大阪交響楽団)事件

弁護士 牧  亮 太

1 事件の概要
 私は、昨年の6月ころから弁護団に加入しました。私が加入してから行ったことは、相手方(大阪シンフォニカー協会)が実質的に団体交渉に応じない状況が続いていること(不誠実団交)についての府労働委員会への不当労働行為救済申立てでした。
 もっとも、このシンフォニカ-事件には、実は、2004年からはじまった組合員への嫌がらせ、2007年の花石さんの降格処分(首席奏者からトゥッティー・一般奏者への降格)という何年もの間続く労使間の争いが背景にあったのです。特に、花石さんの降格事件については、府労委・中労委で花石さんへの降格処分が不当労働行為であると認める救済命令が出ていたにもかかわらず、相手方は東京地裁へ取消訴訟を提訴したという経緯がありました。
 そうしたことから、私が弁護団に加入してからの不当労働行為救済申立は、そうした長年の争いを終結させるという目的がありました。

2 花石さんが長年にわたり被ってきた被害
 相手方(大阪シンフォニカー協会)の不誠実団交や、それに先立つ花石さん降格事件などの不当労働行為の原因は、相手方の代表理事の組合軽視・嫌悪にあります。代表理事は、団体交渉に出席することはなく、いつも権限のない者が団交に出席し、「回答は持ち帰って後日行う」という回答を行うだけという完全に団体交渉が空転した状態が続いていたのです。花石さんの問題も、団体交渉において話し合うことさえできない状態でした。
 長きにわたる労使間の争いが続く中、不当に降格処分を受けた花石さんは、月額8万円の給与減額のみならず、首席奏者としての権限を剥奪され、音楽家としての誇りをも傷つけられ続けたのです。

3 難航した和解案の検討
 府労働委員会では、委員より、早い段階で和解が提案されました。相手方の一連の不当労働行為は明かであったことから、後はどのような条件で和解ができるのか、ということだけが問題でした。
 こちらからは、花石さんの主席への復帰(降格処分前の地位への復帰)とバックペイ、他に組合が団交で求め続けてきた要求(例えば、消耗品の補助等)を提示しました。しかし、相手方から提示されたのは、花石さんの主席への復帰だけでした。
 相手方の態度は固く、最後は、花石さんら組合側が相手方の提案をのむか否かだけとなりました。組合としては、長年にわたる闘いの中で、少しでも成果を獲得して、一緒に闘ってきた組合員や組合員以外の人にも闘いの意義を理解して欲しいという気持ちがありました。他方で、花石さんの地位の回復というどうしても組合が獲得したかった目的が目の前にあるという現実もありました。
 最後は、組合は花石さんの主席への復帰を選びました。この組合の話し合いには、弁護団も参加したのですが、結論を出すための話合いは、府労委での争いよりも深刻なものでした。まさに苦渋の決断で、最後は花石さんの主席復帰という当初の獲得目標を保持することとしたのです。
 私は、本格的に労働委員会への申立事件に参加したのは今回が初めてで、組合の方々が方針を決める過程を見ることができたことは貴重な体験でした。

4 最後に
 私は、花石さんら組合員の演奏を聴かせてもらったことがあります。音楽の全くの素人である私が聴いても感動する素晴らしい演奏でした。音楽家のような芸術を業とするには、大変な努力と才能が必要です。音楽家のような、子供の頃に職業にしたいと思うような仕事(私の場合はプロ野球選手です)は、どれも特別な努力と才能を要するものだと私は思っています。子供の夢となるような職業において不当労働行為が行われ、素晴らしい演奏者が力を発揮できなくなるということは、法律上違法というだけにとどまらず、子供の夢を壊し、大人の文化にも悪影響を与えるものだと思います。それだけに、今回の相手方の対応は許されるものではなく、花石さんの主席復帰という成果を勝ち取ったことは非常に意義のあることでした。
 本事件は、和解ができましたが、相手方の対応を見ると、まだまだ労使関係が円満なものになったとはいえない状況があります。これからも、シンフォニカ組合の方々が自由に演奏できる日が続くことを切に願います。

      (弁護団は梅田章二・小林徹也・今春博・笠原麻央・牧亮太です。)

 

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