民主法律時報

労働組合に対する規制・攻撃に対向して―地域労組とよの面談強要禁止仮処分を題材として

弁護士 鎌 田 幸 夫

1 はじめに
 
 労働組合が本社、営業所周辺で街頭宣伝行動を行ったことに対して、会社が街頭宣伝禁止の仮処分を行ってくることがある。北港観光バス・街宣活動禁止の仮処分では、2011年5月に不当な仮処分決定が出されたことは記憶に新しい。
 私も、今年2月、自交総連傘下の学習塾の労働組合の街頭宣伝禁止の仮処分事件を担当した。同事件は当事者間で話し合いがつき、仮処分は取り下げられた。そして、今年4月、「地域労組とよの」に対する面談強要禁止等の仮処分事件を担当した。同事件も、当事者間で話し合いがつき、仮処分自体は取り下げられた。遅くなったが、簡単に報告したい。


2 事案の概要と経過

 北摂にある介護施設に勤務していたAさん(未成年)が、平成25年3月末、勤務態度、無断欠勤を理由として解雇され、両親が地域労組とよのに相談し、組合に加盟し、解雇撤回を求めて団体交渉を申し入れた。第1回団体交渉で、組合側が労働条件や解雇の根拠規定等を確認するために就業規則の開示を求めたところ、会社側は「施設内に置いている」との回答であった。そこで、地域労組とよのの書記長らが、就業規則の開示を求めて施設を訪れたところ、施設側は開示を拒否し、団交申入書の受取も拒否したので、強く抗議した。
 そして、再度、書記長等が、施設を訪れ、就業規則の開示と解雇の撤回を求めた。そうしたところ、施設側は、組合側が大声を出して騒ぎ、入居者らが怯えたとして、平成25年4月、とよの労組相手に、面談強要禁止等の仮処分を提起した事案である。また、施設側代理人は、組合に対して、解雇の効力は団体交渉ではなく訴訟で争えばよいと通知してきた。
 同事件は、大阪地裁民事1部に係属した。事実関係としては、組合側が施設を訪れた際に大声で騒いだか、入居者が怯えて業務に支障があったかなどが争点であったが、労働部ではないので、本件解雇が無効であること、労働組合活動や団体交渉権の意義についても丁寧に主張した。そして、就業規則他関係資料が訴訟の書証として提出されたこと、施設側が組合側との団交に応じることが確認できたので、当事者間で合意して、仮処分は取り下げで終了した。なお、同事件は、現在、施設側と解雇無効と地位確認を本訴で争っている。 


3 若干の感想

 ①自交総連に対する街頭宣伝禁止の仮処分と②とよの労組に対する面談強要禁止の仮処分とは、少し、違いがあるような気がする。①は、使用者側が組合員に対する不利益扱いを続け、今後、解雇等の紛争に発展することを見込んで、事前に組合の足を止めることを目的としており、その意味で計算されたものである。②は、労働紛争に不慣れな使用者側の過剰反応ともいえる対応である。①は労働部に係属し、②は保全部に係属した。
 ①のようなタイプは、街頭宣伝行動に至った経過、動機・目的の正当性、内容の真実性と相当性、態様の正当性を詳細に主張立証し、街頭宣伝行動が、表現の自由の行使、団結権・団体行動権の行使として正当性の範囲内であることを徹底的に主張していくことになる。
 ②のようなタイプは、労働組合や団体交渉権の意義、裁判事項であるからという理由で団体交渉を拒否できないことなど当然のことを丁寧に裁判所や相手方に説明、説得していく必要がある。
 いずれにせよ、今後も、使用者側が、労働組合の宣伝活動や団体交渉を継続していくことを嫌って、仮処分や地位不存在確認訴訟などを提訴することが予想される。個別事案に応じて対応することになるが、いかなる事件も、労働組合活動権や団交権の行使は、裁判闘争と車の両輪であることは基本としなければならないし、労働組合活動が萎縮することがあってはならない。

 

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