民主法律時報

第1回労働相談懇談会「労災手続について」

おおさか労働相談センター相談員 舛 田 佳代子

2021年11月18日(木)、国労大阪会館で第1回の労働相談懇談会を開催、7産別・5地域の組合員と弁護士その他、合計 33名が参加しました。今回の学習会テーマは「労災手続」で、あべの総合法律事務所の上出恭子弁護士に講師をお願いしました。「裁判・地労委から見る情勢報告」は大阪法律事務所の加苅匠弁護士にお願いしました。

加苅匠弁護士による直近3か月の情勢報告では、シフト制労働者の休業補償問題、改正された育児・介護休業法の概要、公立学校教員の労働時間問題、「偽装請負」事案で「みなし制度」が認められた事例、学童保育の雇止めに関する救済命令、業務委託ではなく労働者性が認められた事例などについての報告が行われました。

「労災事案の基礎」と題した上出恭子弁護士による学習会は「労災の基本に関するQ&A」からスタート。質問形式の事例検討に会場は引き締まった雰囲気に包まれました。

続いて労災保険の基本として5つの補償(療養・休業・障害・遺族・葬祭料)を確認、9月に改定された脳・心臓疾患の労災認定基準と昨年5月に改訂された精神障害等の労災認定基準について厚労省のパンフなどを資料に学習がすすめられました。

その中で、脳・心臓疾患に関しては、厚労省労働基準局補償課が、事案発症前の時間外労働に関わって「月の時間外労働が65時間から70時間であっても、一定の負荷要因があると認められるときは適切な評価を行う」旨の通達を出していることや、精神障害等に関しては、認定の判断となる「具体的な出来事」や「強度」についての具体例などが説明されました。

事前に寄せられていた「交通事故の事例」についても、自動車保険では過失割合によって支払われる額が変動するのに対して、労災では損益相殺の対象とならない特別支給金が支払われるので、過失割合が大きいときは労災が有利な時があることや、また後遺障害の認定では、労災の方が労働者救済の立場から有利な判断をする傾向があるなどの説明がありました。

会場から出た「労災申請と傷病手当申請のいずれを優先させるか」という質問には、難しい判断になるがとした上で「労災認定には時間を要するので、傷病手当を受けた後、労災が認められ支給されたら健康保険に返金するという方法もある」とのアドバイスがありました。

密度の高い内容でしたが、上出弁護士のテンポの良い語り口調にアッという間の学習会となりました。「専門性のある先生のお話は大変勉強になりました」「苦手意識があるのですが勉強できて助かりました」と好評でした。

引き続き労災関連の学習を積み、組合活動や労働相談に活かしたいと思います。

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