民主法律時報

派遣法「改正」を阻止せよ!

事務局次長・弁護士 古 本 剛 之

 安倍内閣は、2014年3月に労働者派遣法「改正」案を第186通常国会に提出しましたが、重大な誤記があったために6月に廃案となりました。その後、第187臨時国会に再度提出しましたが、衆議院の解散によって同年11月に再び廃案となりました。
しかし、安倍内閣は、ほぼ同内容の法案を三度、第189通常国会に提出する方針を明らかにしています。公明党の申し入れを受けて多少の修正が入りましたが、小手先だけの修正で、本体部分に何ら変わりはありません。
同法案では、派遣労働者を、派遣元との間で雇用期間の定めをしていないか(無期雇用派遣)、しているか(有期雇用派遣)に分け、無期雇用派遣については派遣先が無制限に利用できるものとしています。
有期雇用派遣については一定の「制限」を設けるとしていますが、その「制限」とは、同じ派遣労働者の継続的な受け入れは同一組織単位で3年まで、同じ事業所での派遣労働者の継続的な受け入れは3年まで(過半数労働組合等から意見聴取さえすれば繰り返し延長可能)とするに過ぎません。
この仕組みでは、派遣先は、たとえ過半数労働組合等が反対しても、永続的に派遣労働を受け入れることが可能で、また、同じ派遣労働者を継続的に使用したい場合には、部署(組織単位)を変更することにより永続的に使用することができるのです。
これによって派遣期間制限は容易にすり抜けることができ、ほとんど意味のない制限になってしまいます。2015年10月1日からは、違法派遣状態(期間制限違反等)の場合に、派遣先が労働者に直接雇用申し込みをしたとみなす改正派遣法40条の6が施行されますが、その適用場面を大幅に減らして骨抜きにするものでもあります。
また、同法案では、派遣先が派遣労働(派遣労働者)を不要とするときは何時でも契約解除できることは従前と全く変わりありません。また、均等待遇を義務づける規定は盛り込まれておらず、劣悪な派遣労働者の労働条件について何らの改善を図るものではありません。さらに、キャリアアップの資料にするという名目で、派遣先が派遣元に労働者の働きぶりに関する情報を提供することとなっていますが、これはむしろ派遣先が好ましく思わない労働者の差し替えを求めるために利用される危険性が大きいものです。
同法案は、労働者の生活と権利を守る不可欠の原則として認められてきた直接雇用の原則を実質的に破棄するもので、「正社員ゼロ」「一生涯派遣」「労働者の無制約な使い捨て」につながるものです。労働者の権利と生活の保障を奪ってひたすら搾取するような社会には未来はありません。
民法協においても、大阪労働者弁護団などと共催の街頭宣伝に取り組んでいます。4月17日には、金沢大学名誉教授の伍賀一道先生講演の学習会も予定しています。みなさん、是非ご参加をお願いします。そして、この悪法を必ず三度の廃案に追い込みましょう。

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