弁護士 南 部 秀一郎
1 はじめに
大阪府泉南市に本拠を置く消費生活協同組合オレンジコープで、配送担当者が労働組合を組織し、団体交渉を行っていたところ、労組員全員が解雇された事件につき、2月5日大阪地方裁判所堺支部において、地位確認及び不当労働行為に対する損害賠償を求める訴訟(以下「本訴」という。)について、和解が成立しました。この和解によって、雇用継続を求めたオレンジコープ労組の労組員2人について、4月1日より職場復帰することとなりました。本件については、民主法律時報において数度にわたり記事が掲載されています(2012年9月号、2013年5月号、2014年6月号)。事案の詳細や法的手続の経過等はそれらの記事に譲り、本稿では、本訴の状況、そして和解の意義、今後の課題についてお伝えします。
2 地位確認請求等の提起
本件については、2013年4月10日、大阪地裁岸和田支部にて、地位確認の仮処分決定を受けました。この仮処分決定を受け、早速2013年5月20日に地位確認の本訴を提起しました。その後、2013年9月11日に、労組員であることを理由とする解雇、団体交渉の場で行われた労組に対する嫌悪発言、組合員名簿を警察に提出するとする生協理事長の支配介入発言など、オレンジコープ労組、個々の労組員、及び上部団体である生協労連関西地連に対する不当労働行為について、損害賠償を追加請求し、事件は大阪地裁堺支部第1民事部に回付されました。
3 本訴の進行
本訴の進行については、仮処分、本訴と同時進行していた、大阪府労働委員会での不当労働行為救済申し立て事件で、2013年10月までに関係者の審問が終わっていましたので、審問調書を証拠として提出し、不当労働行為による損害論の立証に重きをおきました。そして、2014年5月29日に、大阪府労働委員会での全面勝利命令を受け、11月20日の証人尋問となりました。
4 和解勧告
証人尋問後、裁判所は、労組、生協双方に強く和解を勧告しました。裁判所は原告らに対し、「職場に旗を残す」という言葉を使い、労組員が職場復帰することを当然の前提として、和解条件の交渉を行うようすすめました。そして、3ヶ月の交渉の末、和解が成立しました。
5 職場復帰と労組の活動を保障する和解内容
和解では、職場復帰を求めた労組員が、2015年4月1日に生協に復帰することになりました。また、不当労働行為を受けた、オレンジコープ労組及び生協労連関西地連に対する解決金の支払いも、内容となりました。
加えて、不当解雇以前には、「生協施設を使わせない」とする生協側の行為があった団体交渉について生協施設の使用を認めることや、生協側の労組活動の尊重条項、組合費のチェックオフなど、労組の活動を保障する和解内容となりました。また、労組結成のきっかけとなった、残業代の未払いについて、タイムカードによる労働時間管理が明記されました。
更に、生協からは解雇及び本件訴訟に至った経緯について遺憾の意が示され、労組員の復職、生協が労組と共に円満な労使関係の形成に努めることを、生協の従業員及び生協組合員に公表することが盛り込まれました。
6 本件和解の意義
本件和解は、まず、労働者の職場復帰を勝ち取れたところに、その意義があると考えます。この結果に至るには、解雇無効による地位確認、未払い賃金の支払請求、不当労働行為に対する労働委員会での救済申し立て、未払い残業代の請求といった純粋な法律上の手続だけではなく、(相手方が生協だということで行えたものですが )監督官庁である近畿厚生局への働きかけや、行政文書の情報公開、そして広く支援を求める宣伝活動と、考えつく手段を全てとったことが、最後の和解を導いたのだと思います。そして、このような行為を可能にした、労働組合(それは当該だけでなく、様々な共同行動を行った争議団などをはじめとする皆様)の力、元をたどると、労組員らが残業代不払いに対し、労働組合を結成し団結したことが、労働者軽視の甚だしい理事長をはじめとする生協経営陣から和解を引き出せたのだと思います。
7 今後の課題と労組に対する更なる応援のお願い
しかし、本件では「現職復帰」は叶いませんでした。生協側は、生協商品配送の仕事を外注化したとして、労組員が求めた配送での職場復帰を認めませんでした。今後の団体交渉にかかってきますが、労組嫌悪をあらわにした、理事長をはじめとする生協経営陣の過去の言動を考えると、紆余曲折があることが予想されます。訴訟は和解という一定の解決を見ましたが、オレンジコープの職場に再びたった労組の旗が風に乗りはためくよう、今後も皆様の応援をいただけるようお願いいたします。
(弁護団は、鎌田幸夫、山﨑国満、谷真介、南部秀一郎、宮本亜紀)