民主法律時報

労働弁護団第55回全国総会 ご報告

 弁護士 増 田   尚

 11月12日・13日の2日間にわたり、三重県鳥羽市の旅館・戸田家にて、日本労働弁護団の第55回全国総会が開催されました。
 総会では、水口洋介幹事長による報告があり、労働者派遣法の改正や有期、パート労働者の保護などの当面の課題で前進をかちとる運動が提起されました。同時に、これらの分野において、財界・使用者側が強烈な巻き返しを図っていることへの警鐘が鳴らされました。
 続いて、西谷敏・大阪市立大名誉教授による記念講演が行われました。西谷教授の講演は、近著「権利としてのディーセント・ワーク」の内容を基調としつつ、裁判による法創造の限界を踏まえた労働立法運動の必要性を強調されました。また、労働審判に関して、特に、解雇事案で復職を前提とせず解決金の支払で終了するケースが増えることにより、事実上の行為規範とされることへの懸念を表明し、権利義務関係を明確にする裁判闘争を労働紛争解決の中心と位置づけるべきと訴えられました。
 特別報告では、寺西笑子さんが、前日に勝利したばかりの過労死企業名公表訴訟を報告され、過労死防止基本法の制定を呼びかけられました。また、西川大史弁護士が、北港観光事件不当仮処分命令を必ず逆転し勝利する決意を表明しました。私も、職員基本条例案の違憲・違法ぶりを指摘し、廃案
に追い込むためにも全国的な運動を構築する必要があると訴えました。
 今年度の労働弁護団賞として、大阪からは、最高裁に労組法上の「労働者」性について基本原則に忠実な判断をさせて、「業務委託」労働者の権利保障を大きく前進させたINAXメンテナンス事件の弁護団と、高年法に基づく継続雇用に解雇権濫用法理を適用させ、高年齢者の雇用の安定と権利擁護にとって画期的な高裁判決を獲得した津田電器事件の両弁護団が受賞しました。両弁護団を代表して、河村学弁護士、谷真介弁護士がそれぞれスピーチをされました。
 最後に、「大阪・泉南アスベスト国賠(第1陣訴訟)大阪高裁不当判決に抗議する決議」、「職員基本条例案に反対し、否決・廃案を求める決議」など5本の決議を採択し、総会は終了しました。
 労働者の権利を擁護する弁護士として、裁判闘争と立法運動を車の両輪としてとりくむことの意義を再認識させられた労働弁護団総会でした。なお、来年度は、11月8日・9日に、東北地方での開催が予定されています。

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