民主法律時報

全港湾阪神支部の職場及び団交見学の報告

弁護士 片山 直弥

1 はじめに

先日、新人学習ツアーとして全日本港湾労働組合(以下「全港湾」という)阪神支部の「職場」及び「団交」を見学させて頂きました。
以下、簡単ではありますが、見学の内容を報告させて頂きます。

2 職場見学について

2017年3月1日、株式会社大運の舞洲事業所における倉庫周りの作業を見学させて頂きました。
株式会社大運は、海運貨物取扱業を中心に海上コンテナ輸送・通関・倉庫業などを行う企業です(同社ホームページ参照)。
私は、この職場見学を通して、荷物を安全に届けるための作業に内在する危険性を垣間見ることができ、ひいては、団交の重要性も感じることができました。

抽象的な話では退屈かと思いますので、具体例を挙げたいと思います。
倉庫周りでは、コンテナへの荷物の積み降ろしの作業が行われます。ちなみに、コンテナは、「屋根のあるもの」と「屋根のないもの」とに分かれます。屋根のないコンテナの重量は、それのみで5トンです(なお、屋根のないコンテナの画像は、インターネットで「フラット・ラック・コンテナ」と検索すれば簡単に見ることができます)。

この屋根のないコンテナは、単に荷物を積むだけではいけません。なぜなら、ガタつき、荷物が痛んでしまうからです。荷物のガタつきを抑えるためには、木枠で固定する必要があります。この木枠は、チェーンソーや釘打ち機を用いて作りますので、労働者にはケガの危険が伴うことになります。
また、屋根のないコンテナは、バランスを考えて積まなければ重機での移動の際に転覆してしまうおそれがあります。すなわち、重機での移動には、転覆したコンテナの下敷きになる危険や重機に轢かれる危険が伴うことになります。
さらに、倉庫周りという屋外の作業ですので、特に夏場は熱中症の危険が伴うことになります。

以上のように、荷物を安全に送るための作業には、さまざまな危険が内在しています。「荷物の安全」と「労働者の安全」のどちらを重視すべきか、は改めて問うまでもありません。しかし、残念なことに、使用者は、ややもすれば労働者が「機械」や「駒」であるかのように考えがちです。使用者に対し、労働者が血の通った「人間」であることをしっかり認識させるためにも、また、労働環境の改善を求めるためにも、団交が重要であることを改めて感じました。

3 団交見学について

その後日(=3月28日)、団交(春闘統一集団交渉)を見学させて頂きました。
全港湾は、港湾産業で働く人及び港湾に関連する事業で働く人を中心に2万名が結集した「全国単一組織」という組織形態をとる労働組合です(同組合ホームページ参照)。他に多く見られる「企業別組合」と異なり、交渉力が相対的に強い、企業の枠を超えた労働条件の基盤を設定できる、という長所があります。また、全国レベルの労働組合において短所となりがちな柔軟性・機動性の欠如については、企業別に分会を置くことで対応しています。このように、全港湾は、非常に優れた形態であると思います。

私は、この団交見学を通して、全員で勝つために一人ひとりが全力を尽くす精神に触れることができました。

団交は、ホテルの宴会場において行われました。
所狭しと並べられた席に、組合側と経営側が向かい合って座りました。
そのような状況で、まず、全港湾統一要求(賃金等)に対する回答等が発表されました。
また、回答は賃金に関するものしかなされませんでしたが、いわゆる2018年問題(=労働契約法18条による無期転換を避けるために行う雇止めの問題)や介護休業時の賃金に関する意見交換等もなされました。組合員の中には雇止めや介護休業に直接関係のない方もいらっしゃることでしょう。他の組合員の問題を我が事として捉え、組合全体でたたかう。このような姿勢に感動すら覚えました。

初めて団交を見学した私の目からは、活発な議論がなされているように見えました。しかし、最近は、賃金等の額に関する回答しかなされず、個別事項について実のある集団交渉がなされなくなってきているようです。
加えて、使用者側から、「産業別組合との労使協定は独占禁止法に抵触する」として集団交渉自体をなくそうとする意見も出ているようですが、上記2でも述べましたように、労働者が血の通った「人間」であることをしっかり認識させる場として団交は必要不可欠です。
今後も集団交渉の場を持ち続けて頂きたい、また、2017年春闘においても粘り強く交渉を続けて前年以上の成果を勝ちとって頂きたいと思います。

4 さいごに

以上のように、このたび、新人学習ツアーということで、「職場」及び「団交」の見学をさせて頂きました。また、その中で、通常の弁護士業務ではなかなか見ることのできない場面に立ち会わせて頂けました。
最後になりましたが、本企画についてご協力を賜りました全港湾阪神支部の皆様には、このような貴重な機会を頂戴しましたことを厚くお礼申し上げます。

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