民主法律時報

2023年権利討論集会のご報告

事務局長・弁護士 西 川 大 史

 2月18日、2023年権利討論集会を開催しました。
政府は、コロナの5類への引下げを決定しましたが、1月にはコロナの月間死者数が初の1万人超を記録しました。今年もコロナ感染拡大が深刻な中での開催でしたが、会場参加者数に上限を設定するなど感染対策を徹底し、会場とZoom併用のハイブリッド形式で実施しました。会場・オンラインあわせて256名の方々に参加いただきました。

川村雅則教授

 全体会では、北海学園大学の川村雅則教授に「労働者が主役の時代へ~カギは「無期雇用の実現」、「団結」にあり~」とのテーマで記念講演をいただきました。
川村教授からは、無期転換逃れの雇止め、非正規公務員、公契約条例、学生アルバイト・ワークルールなどについてお話いただきました。2023年3月は、研究者の10年雇止めや、非正規公務員の3年雇止めが危惧されます。無期転換逃れの雇止めも横行しています。「無期転換逃れ」が当たり前の社会にしてはならず、研究機関、自治体、会社すべての職場で無期転換逃れを許さないための取組みや、均等待遇の実現に向けての行動提起をいただきました。

川村教授が何度も強調されたのは「雇用の安定」です。労働者が安心して働き暮らすためには、雇用の安定が何よりも大切であり、労働者が主役の時代を迎えるためには雇用の安定、団結が欠かせません。雇用の安定はすべての労働者の願いであり、官も民も、正規も非正規も関係なく、団結して取り組むことの重要性などについて改めて確認することができました。

また、川村教授は、労働組合や過労死遺族の方を講師に迎えての授業や、高校生への出張授業を実践されています。身近な話題を例として、労使関係における力の不均衡を視野に入れ、労働組合(団結権の行使)こそが労使対等に欠かせないことなどについて、ワークルール教育を実践することの重要性を提唱されました。

川村教授のお話は、徹底的に調査されたデータや労働者のリアルの声などを踏まえた実践的な内容でした。また、話のテンポも良く、とても分かりやすく、あっという間の90分でした。雇用の安定の実現をはじめ、私たちの労働運動の活力となるお話をいただきました。

 全体会では、①労働法制の改悪(解雇の金銭解決制度の導入、裁量労働制の適用対象業務の拡大)に反対する決議、②非正規労働者の雇止めを許さず雇用の安定・待遇の改善を求める決議、③敵基地攻撃能力の保有及び軍事費の大幅な増額を定める安保3文書改定の閣議決定に反対する決議、④カジノ誘致計画に反対し、府民本位の政治への転換を求める決議を採択しました。

 

 午後からは、5つの分科会(①裁判・労働委員会闘争、②有期・パート、派遣など非正規雇用、③過労死、④フリーランス、⑤ハラスメント)を、会場とZoomのハイブリッド形式で開催しました。分科会の詳細については各分科会の報告をご覧いただきたいのですが、いずれの分科会も、時宣に見合った企画であり、最先端の理論や運動を踏まえた内容でした。

 今年も、オンラインの関係では、関西MICの方々に多大なご協力をいただき、音声トラブルもなく開催することができました。

 労働法制の改悪に反対し、労働者本位の労働政策実現のための闘いは続きます。敵基地攻撃能力の保有やカジノ問題なども看過することはできません。課題山積の今こそ民法協の出番です。権利討論集会の議論の成果を今後の運動の活力としていただけると幸甚です。

来年は2024年2月17日に権利討論集会の開催を予定しています。来年こそはコロナの不安に悩まされることなく権利討論集会が開催できることを願っています。

(各分科会の様子は次のページに掲載しています)

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