民主法律時報

「2013年 春の憲法学習講座」の報告

弁護士 西 川 大 史

1 はじめに

 大阪憲法会議・共同センターは、2013年3月17日、大阪府教育会館で「2013年春の憲法学習講座」――9条をまもり、憲法をいかす共同を広げ、改憲阻止のゆるぎない多数派を――を開催しました。
 自民党が2012年4月28日に憲法改正草案を発表し、国会でも改憲派が多数を占めているなど、憲法改悪の流れが急加速する中、273人が参加し、名古屋大学名誉教授で憲法会議代表委員の森英樹先生の講演、赤旗の政治部記者・中祖寅一氏の特別報告に学び、改憲阻止に向けた運動、取り組みを広げることの大事さを改めて確かめ合いました。

2 憲法の原点に立ち返った運動を

 「政権再交代でどうなる憲法、どうする憲法」と題して講演をされた森先生は、自民党の「日本国憲法改正草案」について、条文に即して分かり易く説明をされました。憲法の前文を廃棄し、憲法9条2項を削除し「国防軍」を明記していることや、「公の秩序」を口実に人権に制約を加え、憲法  条が定めている改正発議要件を現行の衆参両院議員の3分の2から2分の1に緩和することなど自民党の「日本国憲法改正草案」の問題点を詳しく批判されました。

 また、森先生は、安倍首相が  条改憲を公言したことについて、「首相が憲法の条文を名指しして改定を公言したのは初めて」と指摘され、  条改憲の本音は、9条改憲をやりやすくするためだと指摘すると同時に、「その狙いが9条改定にあると指摘するだけでは押しかえせない。権力を縛るという本質に対するごまかしであることを明確にすることが重要だ」と述べられました。
 さらに、森先生は、自民党が「自主憲法制定論」を強調しながらも、「日米同盟推進」を掲げるといった安倍政権の改憲路線の矛盾を厳しく断罪され、「憲法9条の精神は、もめごとを軍事で解決しようとするなというもの」であり、「殴り合いでは、何も変わらんぜよ」という坂本龍馬の台詞を用いて、今こそ憲法の原点に立ち返って運動を進め広げることが大事だと語りかけられました。

3 草の根の世論を

 森先生の講演に続いて、しんぶん赤旗の政治部記者の中祖寅一氏が「改憲勢力の動向と深まる矛盾」と題して特別報告を行いました。改憲派の動向や国会の状況について、赤旗政治部記者ならではの緻密で鋭い取材活動のエピソードも交えて特別報告をされた中祖氏は、96条改悪には改憲勢力内部からも、「9条改悪の狙いが丸見え」「まずハードルを下げるやり方が国民的に疑われる」などの声が出ていることを紹介されるとともに、集団的自衛権の問題についても、「許されない」と長年言ってきた自民党自身の主張とも食い違うことや、内閣法制局の反対など矛盾だらけだと述べられました。

 また、中祖氏は、参院選で自民党や日本維新の会などの改憲勢力の動きを止めるたたかいと同時に、改憲勢力が国民投票に持ち込むことができないように、憲法を守る幅広い草の根の世論をつくることが重要だと述べられました。

4 改憲反対の国民世論形成に向けて

 学習会の冒頭、大阪憲法会議幹事長の梅田章二弁護士が、「参院選で改憲派を落選させて、憲法を守る立場の議員を一人でも多く送り、改憲反対の国民世論を示そう」と呼びかけられました。
 憲法改悪の流れが進む中、改憲反対の国民世論を多数とするために、憲法の原点に立ち返り、憲法を守る草の根の運動を広げていくことの重要性を改めて学び確認することができた一日、それが2013春の憲法学習講座でした。

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