民主法律時報

2022年権利討論集会 分科会・プレ企画の報告

第1分科会
 裁判・労働委員会をどうたたかうか

大阪労連 藤原 邦昭

第1分科会

1 第1分科会では「裁判・労働委員会をどうたたかうか」をテーマに後記の3つの事件でパネルディスカッションと意見交流を行いました。

2 守口市学童保育指導員雇止め事件のパネラーは守口学童労組の中尾書記長、司会は原野早知子弁護士。守口市では2019年4月に維新市長が誕生し、学童保育を民営化し、共立メンテナンスに委託しました。共立は、守口市で長年働いてきた指導員と1年の雇用契約を締結しましたが、組合員らを雇止めにしました。府労委は、昨年 月 日、「雇止めをした組合員を職場に戻すこと」などを命じる救済命令を交付し、府労委命令が確定しています。

中尾書記長からは「会社は、団体交渉で、命令を履行するが、組合員を職場に戻すと今働いている指導員が辞めると言って職場に戻さない」、「裁判所の進行協議で、裁判長に私たちの切実な想いを訴えました」、「職場復帰に復帰に向けて頑張りますので、ご支援をお願いします」との訴えがなされました。

3 枚方市組合事務所事件のパネラーは枚方市職労の市本逸也委員長と中西基弁護士、司会は片山直弥弁護士。枚方市に維新市長が誕生してから、市当局は、組合ニュースの内容に介入し、組合事務所から退去するように通告しました。府労委は、2020年11月30日、組合事務所からの退去通告は不当労働行為であるとの命令を交付しました。市当局は命令を不服として取消訴訟を提起し、組合は機関誌への介入が不当労働行為であるとして再審査請求をしており、現在も係争中です。
市本委員長からは、「労働組合の言論の自由や民主主義を守るために闘う」との決意が表明されました。

4 近畿大学事件のパネラーは近畿大学教職員組合の藤巻和宏書記長と西川大史弁護士、司会は藤原。
藤巻書記長からは、大学に新たな代理人が就任したことで、交渉はスムーズに進み数件の労使紛争が解決しましたが、2021年以降、団交拒否を繰り返し、労働者代表選出選挙に管理職が介入するといった不当労働行為などが語られました。近畿大学における労働争議の件数は異常であり、法人による組合嫌悪は甚だしいものがあります。

5 ほかにもフロアー発言として「堺学童不当労働行為事件」「大阪市労組組合事務所事件」「朝日放送スタッフユニオン事件」「りんくう総合医療センター賃金未払い事件」「大阪市食肉市場事件」の当事者から報告がありました。
会場参加者26名、Zoom参加者27名でした。

 

第2分科
 ストップ! 雇止め

     弁護士 高橋 早苗

堀金弁護士の報告

第2分科会では、「ストップ! 雇止め」をテーマに掲げ、主として有期雇用職員の雇止め事例について報告・議論していきました。

前半は、2021年10月25日に勝訴判決を勝ち取られた放送大学徳島学習センターの雇止め事件について、同事件の代理人である堀金博弁護士よりご報告を頂き、引き続き当職から近年の雇止め事例について報告を行いました。放送大学事件の判決は、不更新条項が設けられ、それに異議を述べていなかったとしても、直ちに労働者が承諾したとみるべきでないとし、不更新条項は労契法18条の無期転換ルールの趣旨・目的を潜脱する目的であったと認定し雇止めを認めませんでした。本判決では更新への合理的期待の判断において、更新上限への反対運動や団体交渉をしていることも有利な事情としており、運動面での大切さも痛感する判決でした。

報告を受けての議論では、不更新条項を受諾した場合の判断が分かれていること、最初から上限が設定されているケースでも期待を持たせるような言動があれば合理的期待ありとされる場合もあること、使用者の合理的な期待を持たせるような言動についてはメール送信等で証拠化しておくことが重要であるといった発言がありました。また、実際の労働現場では就業規則が見せられておらず上限が設けられているかといった確認もできないといった報告もありました。

愛須勝也弁護士

後半は守口共立メンテナンス事件について、代理人の愛須勝也弁護士、当事者の水野さんからご報告頂きました。同事件では、雇止めを無効と判断し復職及び賃金の支払い等を命じた大阪府労働委員会の救済命令が確定していながら、いまだに職場復帰させておらず給与相当額を振り込むのみというあまりにもひどい実態が報告されました。会場からは、このような使用者側の対応は労働委員会命令の軽視につながるおそれがあるとのもっともな指摘がなされ、同弁護団・原告団としても過料制裁の申立てほか様々な対抗措置を検討しているとの報告と、支援の力も借りて動かしていきたいとの力強い言葉がありました。

さらに、大阪労連から最賃引上げ宣伝、学習会、非正規差別NGパレード等の各取組みについて報告頂き、大阪自治労連の仁木将書記長からは会計年度任用職員制度の実情と課題について報告頂きました。内容が盛りだくさんで十分に議論の時間が確保できなかったことは反省点ですが、同分科会が今後の雇止めを防止するための一助となれば幸いです。
参加者数は、会場17名、Zoom22名でした。

 

第3分科会
過労死・過労自殺をなくすために

      弁護士 川村 遼平

第3分科会のテーマは、「過労死・過労自殺をなくすために」です。

上出恭子弁護士

はじめに、上出恭子弁護士から、脳・心臓疾患の労災認定基準改正についてご報告いただきました。厚労省では「運用上の留意点」と呼ばれる通達も作成されており、認定基準と通達の総合的な理解が実務上極めて重要です。また、労働時間が過小評価されるリスク等の問題点についても、短い時間の中でわかりやすく解説していただきました。

次に、化学一般関西地方本部顧問の堀谷昌彦さんから、三星化学工業の職業性膀胱がんに関する損害賠償請求訴訟の勝利報告をしていただきました(2021年5月11日福井地裁判決・確定)。労組

立野嘉英弁護士

の闘いを描いたドキュメンタリー「なくそう職業がん」(DVD)のご紹介もいただきました。

続いて、立野嘉英弁護士から、トヨタのパワハラ自死事件の和解成立についてご報告いただきました。再発防止に向けた体制構築・ハラスメント研修の実施・評価基準の見直し・遺族への報告といった企業の対策を含む和解を成立させるまでに代理人としてどのように交渉を進めたのか、今後に活用できる示唆に富んだ報告をしていただきました。

岩城穣弁護士

最後に、岩城穣弁護士から、これまで取り組んだ多くの事例をもとに、実際に企業の謝罪や再発防止策を盛り込んだ解決事例についてご報告いただきました。和解案は非公開になってしまうことが多く、実際に成立した和解の具体的な文言をこれだけ多く知ることのできる場はなかなかありません。たとえ謝罪まで折り合いがつかないケースでも、亡くなった労働者の功労に感謝する旨の文言を入れるように提案するというお話が特に印象的でした。

参加者は全体で36名ほど(うち会場参加は11名)で、法曹関係者や労働組合員、過労死事件の当事者を中心に、学生やマスコミ会場など幅広い方にご参加いただきました。皆さんからも、活発なご意見や、ご自身の事件の報告が寄せられました。
1年に1度、各自が自身の取り組みを振り返る有意義な場になったと思います。

 

第4分科会
歴史的勝訴判決に学べ! これからの社会保障

      弁護士 脇山 美春

第4分科会

第4分科会は、「歴史的勝訴判決に学べ! これからの社会保障」と題して開催されました。参加者は27名(会場15名(事務局含む)、Zoom12名)でした。

前半は、生活保護基準引下違憲訴訟大阪弁護団事務局長である和田信也弁護士より、2021年2月22日の勝訴判決の中身や、この判決の意義についてご講演をいただきました。続いて支援の会の雨田信幸さんより「原告を中心とした運動」についてお話をいただき、大阪原告団の共同代表の小寺アイ子さんよりひとことお話をいただきました。

質疑の中では、小寺アイ子さんから「生活保護受給者は白米だけ食べていればいいんだ」と聞いて、そうではないだろうという思いから原告になった、というお話が聞け、和田信也弁護士からは、大阪弁護団の高裁でのたたかいの進捗についても聞くことができました。

後半では、県立広島大学准教授で、貧困論の専門家である志賀信夫先生より、前半の話もふまえながら、これからの社会保障はどうあるべきか、あるべき社会保障の実現のためにはどうしていかないといけないのか等について1時間程度お話をいただきました。詳細は後日の報告に譲りたいと思いますが、今世界では「貧困」とは、「自由」が保障されていない状態のことをいうとされていること、日本でもこのような貧困概念を広げていくためには、「差別」をなくしていく必要があり、多方面での連帯が必要であること等、今後の民法協の活動に必要な示唆をいただきました。

討論の中では、年金者組合からの訴訟の現状・活動の報告や、志賀先生のご講演を聞いての参加者からの感想、意見が寄せられ、志賀先生が参加者の意見をうけて発言をしてくださる場面もありました。

終始穏やかな雰囲気の中、様々な方のご意見をうかがうことができました。来年は、本会での学びを生かした分科会を開催できればと思っています。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

 

プレ企画1
 直接雇用を実現させよう――直接雇用申込みみなし制 度を活用しよう

      弁護士 大西 克彦

プレ企画1 村田浩治弁護士

2月9日、権利討論集会のプレ企画第1弾として「直接雇用を実現させよう・直接雇用申込みみなし制度を活用しよう」との題で、現在も法廷闘争が続く日検事件と東リ事件での判決で得られた成果の活用を目指した企画が行われました。Zoomで行われたことで、全国から63名を超える参加者となりました。

本件プレ企画は、(1)日検事件の報告、(2)東リ事件の報告、(3)村田浩治弁護士の「派遣法を活用して派遣をなくそう」との講演の構成で行われました。

まず(1)日検事件では、弁護団の富田弁護士から事件の内容、裁判の経過等について説明が行われ、その後当事者の方から熱のこもった報告がありました。当事者の方の報告で特に記憶に残ったのは、周りからは「日検さん」と呼ばれて、日検の社員と同じ仕事をしているのに日検職員と待遇が大きく違うことや、裁判でも問題になっている労働者派遣契約に変更したことを会社側が労働者に1年間黙っていたことが申込みみなしを否定する理由に使われていることでした。こんな騙しが許されるとは思えませんので、最高裁での判断が注目されます。

続いて(2)東リ事件では、当事者の方からも熱い報告がされました。一審敗訴判決が覆り、偽装請負や申込みみなしを認めて東リの従業員であることを確認した控訴審判決までの現状を報告されました。その後、弁護団の安原弁護士からは、一審判決と控訴審判決の違い(偽装請負を認めた控訴審でのポイント)について詳細な報告がありました。特に①東リのような工場組織に組み込まれた請負では、請負でない他の部門との比較が重要であること、②申込みみなしの時点だけでなく、過去の働き方(偽装請負の状態)も積極的に主張することで、偽装請負や「偽装請負等の目的」の認定で重要となることを強調されていました。

(3)村田弁護士からは、派遣法の歴史、労働者派遣(間接雇用)の現状、現在消極的な労働行政に対し、東リの高裁判決が基準として用いた労働者派遣と請負との区分を定めた労働省告示三十七号の活用方法についての説明がありました。形式的な判断に陥っている労働行政を東リの高裁判決を使って変えて行く行動が必要であることを特に強調されていました。

最後に参加者の方から、労働行政の活用や今後の派遣では均衡均等処遇が手掛かりになることなどの多数の意見が出されて閉会となりました。

 

プレ企画2
 「雇用によらない働き方」の課題と未来~フランチャイズ契約の実態や当事者の闘いから考える~

      弁護士 西念 京祐

プレ企画2 木村義和先生

「雇用によらない働き方」に関して、今年は、フランチャイズ契約を中心テーマとするプレ企画(Zoom)を実施しました。2月10日、約60名の方に参加いただき、有意義な学習および交流を図ることができたと思います。

まず、基調講演として、愛知大学の木村義和准教授に「フランチャイズ契約における加盟店の地位に関する問題点」と題するご講演を頂きました。ほとんどのフランチャイジーにとって多大な投資をして始めたフランチャイズ契約が長く継続することは生活の基盤として極めて重要です。ところが、多くのフランチャイズ契約は期間を定めた契約となっており、しかも、契約を更新するか否かは原則として自由と考えられているため(民法上の契約自由の世界)、本部が更新拒絶を恣意的に行い得る実態があること、恣意的な更新拒絶が加盟店に対する本部の相対的な立場を極めて強くしていること等が説明されました。また、加盟時の契約に盛り込まれた違約金条項に縛られ、契約解消が問題となる場面で違約金請求を恐れて本部の言いなりにならざるを得ない現状があることや、これらの問題を解消するためにフランチャイズ基本法の制定が重要であることが提言されました。

後半は、独禁法研究会で取り組んでいる事案の当事者らからの報告と交流が図られました。結成総会を開いて間もないECCジュニアホームティーチャーズユニオンからの報告に対し、既に21回もの団体交渉を重ねてきたヤマハ英語講師ユニオンから、仲間が増える喜びとこれからに向けた意気込みがメッセージとして語られる場面もあり、独禁法研究会の取り組みや、民法協の雇用によらない働き方企画の積み重ねが、社会に新たな化学反応を起こしていることを感じさせる、よい機会となったと思います。様々な取り組みの結節点として、これからもこの企画を継続していきたいと改めて感じることが出来ました。

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