民主法律時報

大阪市労組組合事務所団交拒否事件 大阪高裁勝利判決

弁護士 冨 田 真 平

 大阪市労組の組合事務所の供与についての団交申し入れに対する大阪市の団交拒否について、大阪府労働委員会が行った救済命令の取消を大阪市が求めた訴訟で、2022年2月4日に、大阪高裁(大島眞一裁判長)は、大阪市側の請求を棄却した1審判決を維持し、大阪市の控訴を棄却する判決を出した。

 本件については、府労委の勝利命令や大阪地裁での勝訴判決の際にたびたび報告してきたため、事案の詳細は省くが、以下概要を述べる。

組合事務所の退去を巡る闘い(第1ラウンド)では、労働委員会での闘いでは大阪市の不当労働行為が断罪されたが、裁判での闘いにおいては不当な高裁判決が、最高裁決定(2017年2月1日)により確定し、大阪市労組は、2017年3月、断腸の思いでこれまで守り抜いてきた本庁舎の組合事務所を明け渡した。

他方で、団交拒否を巡る闘い(第2ラウンド)では、大阪市が2012年度使用不許可処分時以降、組合事務所の使用その他を交渉議題とする市労組の団交申入れを管理運営事項(地公法 条3項)や労使関係条例を口実として一貫して拒否し、事務所明け渡し後の2017年3月に行った組合事務所の供与についての協議や不供与の理由の説明、組合の不利益の回避、代替措置の存否・条件の協議などを団交事項とした団交申入れに対しても、団体交渉を開催しなかったことから、市労組は、2017年9月に、団交応諾命令とポストノーティスを求め、府労委に救済の申立を行った。そして、2019年1月には府労委が団交拒否を労組法7条2号、3号違反と認め団交応諾、誓約文の手交を命じる救済命令を交付し、大阪市が大阪地裁に提起した取消訴訟においても、2021年7月 日に大阪地裁が大阪市の請求を棄却する判決を出した。

これに対し、大阪市が控訴したため、大阪高裁に闘いの場が移った。

 大阪高裁は、大阪府労委命令や1審判決と同様に、管理運営事項や労使関係条例を盾に一切団体交渉にさえも応じない不当な大阪市の態度が正当な理由のない団交拒否及び支配介入にあたると判断した。

地公労法が適用される自治体職員で構成される労働組合において労働条件だけでなく労使関係に関する事項も義務的団交事項になるかについて、法律の定め方が不十分であり、義務的団交事項にあたらないとした古い公労委命令や東京地裁判決もあったことから争点となったが、本判決は府労委命令や一審判決と同様に義務的団交事項となることを認めた。

また、管理運営事項とそうでない事項が混在する場合の使用者の義務について、(一定の条件付きではあるが)団体交渉となし得る可能性のある事項を具体的に挙げて確認するなどの方法により団体交渉可能な事項を具体的に確認すべき義務があるとした。

これらの点は、いずれも自治体の労働組合の今後の闘いに大いに活用できるものである。

 大阪市は上告しても勝ち目がないことから、上告を断念し、これにより団交応諾・誓約文の手交を命じた府労委命令が確定した。組合は、同命令に基づき、直ちに団交に応じるよう大阪市に求めており、また2月25日には大阪市から組合に対し誓約文の手交も行われた。

団体交渉に応じるという使用者として当たり前のことすら拒否してきた大阪市に、同命令に基づいてまず団体交渉に応じさせることは正常な労使関係を取り戻すための第1歩となるものである。そして、団体交渉を行いながら組合事務所の問題を含めて労働組合が自由な活動を展開できる正常な労使関係を取り戻すための闘いが今後も続いていく。

最後に第1ラウンドから続く大阪市との闘争に対する今までの皆様の多大な支援に対し深く感謝したい。

(弁護団員は、豊川義明弁護士、城塚健之弁護士、谷真介弁護士、及び冨田の4名。)

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