民主法律時報

東大阪セブン-イレブン事件 控訴へ!

弁護士 西 念 京 祐

1 不当判決

2022年6月23日、大阪地方裁判所(横田昌紀裁判長)は、東大阪セブン-イレブン事件に関し、本部による契約解除の有効性を認め、松本実敏オーナーに、店舗の明渡や違約金の支払い、営業損害の支払いを命ずる判決を言い渡した。

セブン-イレブン東大阪南上小阪店を経営していた松本氏は、2019年2月に、人手不足を理由に時短営業に踏み切った。当時、24時間営業は、コンビニフランチャイズ契約において、加盟店が従うべき絶対のルールとされていた。前年5月に妻をがんで亡くしていた松本氏は、24時間営業のシフトを維持するため、抗がん剤治療を受けながらも店舗に立たねばならなかった妻を思い、24時間営業の拘束について、命までを奪われる契約に縛られなければならないなどということがあるだろうかと考え、担当者とも協議を重ねた上で、時短営業に踏み切ったのである。

松本氏の行動は、コンビニフランチャイズ契約のあり方に大きな風穴を空けた。行動は世間の支持を受けて、公正取引委員会が時短営業について本部は加盟店と十分に協議しなければならないこと等を内容とするガイドライン改正をするまでに繋がった。

実は、本部は、松本氏が時短営業に踏み切った直後に、時短営業が契約違反であることを理由として契約解除を通知していた。ところが、その後、この問題が大きく報道され本部への批判が強まったことを受けて解除は撤回した。しかし、それまでの約7年間の営業期間中には問題としていなかった、松本氏の接客対応やツイッター投稿を問題として、2019年12月30日に契約解除を強行したのである。

この契約解除の有効性が争点となった本件の訴訟で、裁判所は、本部の主張した解除事由を全面的に認め、松本オーナー側が主張した解除に至る事実経過や背景についての主張には全く向き合おうともしない「不当判決」を言い渡した。

2 フレンドリーサービスに違反するとの判断

裁判所は、フランチャイズ契約により、加盟店は本部及び加盟店全体のブランドイメージを保つ責務を負うとする。その根拠に、システムマニュアルには、「加盟店のオーナーもセブン-イレブン・イメージの維持に努める責任があると記載されていること」や、トレーニングテキストには、「フレンドリーサービスについて、感じの良い接客に関する注意喚起がされている」ことを挙げる。

そして、「利用客からお客様相談室に対し、苦情が申し立てられ、その中には、松本氏の言動が本部のブランドを傷つけるとの指摘をするものがあったこと」や苦情申立ての件数が近隣店舗に比べ「群を抜いて多い」等の事実を認定し、接客対応が「フレンドリーサービスを逸脱しており、本部のブランドイメージを低下させるものといわざるを得ない」とした。感じの良い接客に違反していることを理由に、生計をかけた継続的契約の解除を認めたのである。

しかし、自ら生計の手段としてコンビニ経営を開始し、昼夜を問わずシフトに入り、経営を続けているオーナーが、利用客の嫌がるような店舗づくり、接客対応などする筈がない。松本氏の店舗のバックヤードには、「お客様に喜んでいただきかわいがってもらえる少しでも地域社会に貢献できるようなお店づくりを みんなのお店をモットーに従業員全員でつくりあげていけるようがんばります。」と書かれた紙が掲示され、オーナー及び従業員は勤務開始時にこれを読み上げてから勤務に入ることが徹底されていた。お客様に喜んでもらえる店作りを目指したからこそ、東大阪南上小阪店は、時にランキングで上位に入るような安定した商品売上げを達成していたのである。

違いがあるのは、長時間駐車やゴミの持ち込みなど他の利用客に迷惑をかけるような行為をする利用者への姿勢であった。松本氏は、迷惑行為を許さないことが一般客に喜んでもらえる店づくりに繋がると考え、迷惑行為には毅然とした対応を取り、それが、その相手からの苦情件数の多さに繋がっていた。

この点、判決は、「近時、接客業において横柄な態度や理不尽な要求を行う一部の利用客によるいわゆるカスタマーハラスメントが社会問題化していることは公知の事実であるが・・・仮に一部の利用客に問題があったとしても、松本氏は、本部の加盟店として、全国的に統一されたブランドイメージを確保するために相当な接客対応をすることが求められるから、松本氏独自の基準による接客対応が許容されるものではないというべきである」と判示している。

加盟店オーナーの接客における苦悩を全く顧みず、何ら実態の無いブランドイメージを高みに置いて、オーナーの独立事業者としての裁量を否定したのである。
短い紙面では、この判決の酷さを語り尽くせない。我々は7月5日に不当判決に対して、控訴したところである。控訴審においても、是非、支援の継続をお願いしたい。

(弁護団は、大川真郎、坂本団、西念京祐、喜田崇之、加苅匠)

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