民主法律時報

A信用組合事件不当判決

弁護士 馬越 俊佑

1 はじめに
平成28年11月18日、A信用組合事件が判決を迎えましたので、ご報告いたします。

2 事案の概要

原告は、筆記試験や2回の面接を経て、A信用組合から内定を受けました。内定後も原告は金融関係の資格をとり、採用前アルバイトにも卒業式以外全て出勤するなど、真面目に取り組んでいました。
入組後も、原告は一度も遅刻欠席をせず、真面目に就労していましたが、A信用組合はコミュニケーション能力が不足している等として、見習期間を3ヶ月延長しました。

原告は見習期間延長後も、A信用組合が義務付けている全国信用組合中央協会主催の通信教育において高得点を取得し、表彰を受け、また銀行業務検定法務4級を取得するなど、真面目に就労してきました。

しかし、A信用組合は、「初歩的な事務処理の内容が理解できず、正しい判断ができない」などとして、解雇したのです。
原告は城北友愛会、金融ユニオンに加入し、3回にわたり団交を行いましたが、A信用組合が解雇撤回に応じることはありませんでした。
そこで、解雇無効確認等請求訴訟を提訴したのが本件です。

3 争点

本件の争点は、①見習期間延長の有効性と②解雇事由の有無です。

4 裁判で明らかになった事実

裁判では、A信用組合が主張している事実が見習期間を延長するような事実でないことが明らかになりました。例えば、A信用組合は、原告に伝票を取ってくるように頼んでも「ハイ」と言って立ち上がったまま立ち尽くした、伝票の意味を分かっていなかったなどと主張しました。しかし、伝票がある棚は縦三列横十数列あり、入組後一ヶ月の新人が直ぐに見つけられないことは明らかでした。このような事実をもって理解力がないなどとは到底言えません。

また、尋問では、コミュニケーション能力を付けるためにチラシ配りをさせていたという被告の主張について、原告代理人が当時の原告の研修担当者に対して、通常の研修から離れてなぜチラシ配りをさせていたのかという質問に、職員の夏季休暇の関係であったと思う、などと証言するなど、明らかに被告の主張と矛盾するような証言もされました。このことは、チラシ配りが原告のコミュニケーション能力不足を補うためでなく、A信用組合の宣伝として行われていたことを示しています。

さらに、原告の問題点について、研修担当者らが口を揃えて、一番の問題はコミュニケーション能力であるなどと述べましたが、原告と話をしてみれば明らかなとおり、コミュニケーション能力に問題があるような青年ではありません。このことは端的にA信用組合があげる原告の些細な失敗について、研修担当者が重視すべきものではないと考えられていたことを示しています。

このように、裁判ではA信用組合の主張の矛盾がいくつも明らかになりました。

5 不当判決

しかしながら、大阪地方裁判所は、①本件見習期間の延長は有効であるとし、②本件解雇は留保解約権の行使として客観的に合理的な理由があるとしました。

①見習期間延長の主な理由は、原告のコミュニケーション能力不足を指摘するものですが、原告は研修担当者からコミュニケーション能力の不足を指摘されたことはなく、研修ノートにそのような注意も見受けられません。明らかに誤った認定と言えます。

また、②解雇を有効とする主な理由は、原告が、チラシ配りに時間を費やされ不十分となった研修、及び退職勧奨を受けながらプレッシャーの中で記載した研修過程における顧客宅での「伝票の書き間違い」でした。新人であれば、研修中の書き間違いはありうるものであり、間違いを指摘されながら成長するものですが、まさに若者の成長を止めるような事実認定と言わざるを得ません。

弁護団は、判決を受け、直ちに控訴致しました。

6 この裁判の意義

原告は極めて真面目な人物です。裁判でも裁判官がA信用組合側に、「原告は真面目なんでしょう」と質問したのに対して、A信用組合側の複数の証人がこれを肯定する証言もしています。また、原告は今年のある国家試験では上位で合格するような能力面も極めて優秀な人物です。

真面目で成長しようとすることを怠らない若者が成長過程での失敗を理由に解雇されるのであれば、若者の成長はありえません。
私たち弁護団は、成長しようとする若者の努力を認めない企業と徹底的に闘っていきます。

(弁護団は、鎌田幸夫、馬越俊佑)

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