民主法律時報

JMITUダイトク分会不当労働行為救済申立事件―― 府労委救済命令の報告 ――

弁護士 冨田 真平

 大阪府労働委員会に申し立てた、株式会社ダイトクによる、JMITU大阪地方本部傘下の地域支部きずなダイトク分会に対する不誠実団交及び同組合員である沖野氏に対する不利益取り扱いについての救済申立について、2018年10月23日、ついに救済命令が出された。

ダイトクは、トラックスケールや産業用・空港用はかりの製造販売業等を業とする従業員が20名程度の株式会社であり、かねてからサービス残業が蔓延するような状態で、従業員が低賃金の中で働かされていた。そのような中で藤村氏の解雇事件等をきっかけにJMITU地域支部きずなダイトク分会が結成された。組合の公然化後、会社側からの組合に対する嫌がらせがはじまり、組合員の沖野氏の賃上げが全く行われなくなるとともに一時金もわずか10万円程度のものになった。組合は、このような会社側の態度に抗議を行い、藤村氏の解雇問題や賃上げや一時金の問題、利益隠しの可能性が高い同族会社への高額な地代家賃の支払いの問題や未払いの残業代の調査・支払いなどについて団体交渉を重ねてきた。しかし、会社側は、代表取締役などの役員を団交の場に全く出席させず、組合の質問に対してほとんど無言で答えず、資料の提示も行わないなど、団交において一貫して不誠実な態度をとり続けた。

このような中で、救済命令を突破口に、不利益取り扱いや藤村氏の解雇事件も含め、運動で解決していくために、労働委員会に沖野氏に対する不利益取り扱いと不誠実団交についての救済申立を行ったのが本事件である。

 府労委命令では、団体交渉拒否については、ほぼ組合側の主張を認め、藤村氏の解雇撤回職場復帰の要求以外の団体交渉事項について、会社側の交渉態度が不誠実団交に当たることを認めた。

命令では、一時金の問題については過去の売上や経常利益について回答しなかった点や賞与の決定方法について組合の質問に答えなかった点、賃上げの問題についても十分な説明を行わなかった点などが不誠実団交に当たると判断された。また、未払い残業代の問題についても、消滅時効が完成している以上義務的団交事項に当たらず被救済利益もないという会社側の主張を退け、不誠実団交の成立を認めた。加えて、ダイトクスケールへの地代家賃の支払い等についても、地代家賃の支払いに関して利益隠しが疑われていると組合側が主張していること、会社側が賞与回答において売上のみならず利益の上昇率を回答の根拠としていること及び利益と経費が密接な関係を持つものであることから、これらの事項が組合員の賃金に無関係であるとはいえないとして、これらについて一切回答しなかった会社の態度が不誠実であると認定した。もっとも、藤村組合員の解雇撤回等の要求については、不誠実団交の成立は認められなかった。

このように、不誠実団交については、組合側の主張をほぼ認められ、賃上げや一時金だけでなく地代家賃の支払いという会社のいわば経営上の事項についても組合員の賃金との関係性が認められ、不誠実団交の成立が認められた。

 他方で、昇給及び賞与についての不利益取り扱いについては、会社や社長による恣意的な運用がなされた可能性を指摘しつつも、基本的には、組合員と非組合員の賃金格差の存在や、その賃金格差について組合員であるが故の不利益取り扱いであったことについての証拠が足りないということで、不利益取り扱いは認定されなかった。

不利益取り扱いについては、組合員が沖野氏しかおらず、非組合員の資料がほとんどない中で、申立ての段階からその立証については厳しい見通しではあったが、労働委員会の中でも求釈明や物件提出命令の申立てを行うなどして、なんとか会社側に資料を開示させ、立証を試みた。その中で一定の資料が開示されるなどして、賞与については一部格差の存在が明らかとなったが、最終的には立証のハードルの高さに阻まれた形となった。この点については、ハードルの高い物件提出命令など労働委員会の制度上の問題点も感じた。

今後、同命令をどのように活かし、どのような闘いを展開していくかについては、当事者・組合・弁護団で検討していきたい。

 (弁護団は、鎌田幸夫弁護士、清水  亮宏弁護士、及び冨田真平)

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