民主法律時報

個人事業主に消費税分の負担を 押し付けるな!~消費税相当分の支払い等を求めた訴訟解決のご報告

弁護士 西念 京祐

 中小零細事業主のための独禁法研究会に、東淀川区民商を通じてご相談いただいた案件が、その後、訴訟となり、先頃、和解により解決しましたので報告します。

◆事案の概要◆

Aさんは、もともとB社の契約社員として家電量販店の店頭で、ケーブルテレビやインターネットサービス等の新規顧客獲得業務に従事していました。その成績が良好であったため、B社から独立を提案され、個人事業主としてB社と業務委託契約を締結し、同じ業務に従事することとなりました。個人事業主となることによって、Aさんには、基本委託料に加えて、顧客との契約獲得件数に応じたインセンティブ委託料の支払いを受けることが出来るようになるメリットがありました。

両者の間で交わされた、「委託料に関する覚書」という書面には、これらの委託料の金額が(消費税別)と明記の上、記載されていました。

ところが、B社は契約開始直後の1か月分についてはきちんと消費税分を加えて支払いましたが、2か月目からは消費税相当分を支払いませんでした。

疑問に思ったAさんが確認すると、B社の担当者(元上司)は、「Aさんは、まだ免税事業者だから支払えない」と説明したと言います。しかし、その後、Aさんが免税事業者ではなくなっても消費税相当分は支払われないままでした。

Aさんは、インセンティブの一部未払いや担当店舗から外された際のB社の対応にも強い疑問を抱き、当研究会にご相談されました。この時点で消費税相当分の未払い期間は5年10か月にも及んでいましたが、我々に相談するまで、消費税分が支払われないことを半ばあきらめてしまっていました。

◆消費税相当分の位置づけ◆

契約に際し業務委託料の金額が消費税別とされている場合、実際に支払うべき委託料の額は、消費税相当分を加えた額となります。この額が当事者間で合意した業務の対価に他なりませんので、これを支払わない行為は単なる債務不履行です。

また、取引先が、事業開始直後等で消費税の納税が免除されている事業者であったとしても、消費税相当分を不払いとすることは認められません。これを理由とする減額は不当な要請であり、本件より後である平成25年10月に施行された消費税転嫁対策特別措置法が禁ずる減額に他なりません。

したがって、消費税相当分は当然に払ってもらう必要があるのです。

◆和解による解決◆

Aさんの闘いは訴訟となり、消費税分の未払いの論点の他、インセンティブの前提となる顧客獲得件数のカウント方法や、Aさんの契約上の地位と担当店舗との関係に関する契約解釈等が争点となり争われました。

消費税分について、本件では覚書に明記されていたことが決定的となりました。B社は、最終的には、社内での連絡の行き違いにより生じた誤解によるものである等として、非を認めざるを得ませんでした。結局、裁判所からの強い働きかけもあり、5年10か月の消費税相当分の未払額約250万円を含む総額300万円の支払いを受ける条件での和解が成立しました。消費税相当分については、消滅時効が完成している部分についても支払を受けたこととなります。

消費税の税率がさらに上昇すると言われている中で、中小零細事業者が不当な負担を押しつけられることなく、受け取るべき正当な対価をきちんと受け取ることが出来るように、我々研究会では力を尽くしていきたいと思っています。

本件は、吉岡良治、喜田崇之、西田敦、岩佐賢次、金星姫、野条健人および西念が担当しました。

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