民主法律時報

派遣先の使用者性~全港湾阪神支部・団交拒否に対する不当労働行為救済申立~

弁護士 西川 大史

1 はじめに

全港湾阪神支部は、一般社団法人日本貨物検数協会(日検)による団体交渉拒否の不当労働行為について、2016年11月16日に、大阪府労働委員会に不当労働行為救済申立を行いました。
本件の主たる争点は、労働組合法第7条の「使用者」性です。

2 日検の検数業務

日検は、国際物流の検数、検量、検査などを営む一般社団法人です。日検の事業の一つである検数業務とは、港での荷物の積卸の員数を検数して、荷主側と船会社の相互間に介在し、貨物の正確な個数・重量等を受け渡すというものです。検数業務には専門的技術を要するため、日検など4つの協会の職員や、4協会を定年退職し協会OBとして指定事業体へ移籍した労働者でなければ行うことができません。指定事業体とは平成11年派遣法改正・平成12年港湾の規制緩和により、港湾に派遣労働者が入って来る可能性があったため、港湾労組と旧労働省の懇談により、協会を定年退職したOBの受け皿として発足したもので、仕事内容は4協会と同じで、作業服も4協会の社名が入った同じ物を着ており、見た目では指定事業体と区別は付きません。

日検の指定事業体の一つに名古屋市に本社を置く日興サービス株式会社があります。日興サービスの従業員の検数業務は、日検の名古屋支部の職員が直接指示をしています。日興サービスの従業員は、日検の名古屋支部の職員からの直接の指揮命令の下、日検名古屋支部受託の検数業務を日検名古屋支部から各現場に派遣されて検数業務をおこなっています。
日興サービスの従業員の就労実態はまさに派遣労働であり、日興サービスの従業員にとって日検は実質的に派遣先なのです。

3 日検による団体交渉の拒否

日興サービス及び日検では、日興サービスで働く全港湾阪神支部及び名古屋支部に所属する組合員に対して、就労差別などの不当労働行為が繰り返されてきたため、全港湾阪神支部及び名古屋支部は、2016年3月に、愛知県労働委員会に対して不当労働行為救済申立を行いました。すると、日検は、その直後に、全港湾阪神支部に対して和解を申し入れ、日検は全港湾阪神支部に対して不当労働行為を是正することを約束したのでした。また、日検は、全港湾阪神支部に対して、「指定事業体からの職員採用に関しては、平成28年度から平成30年度まで、毎年度約120名の採用を実施するよう努力する」ことについても文書で確認しました。

そこで、全港湾阪神支部は、指定事業体からの職員採用に関する確認に基づいて、日検に対して、日興サービスで働く全港湾の組合員を採用するよう申し入れました。しかし、日検では、指定事業体からの職員採用について、新たな条件を付するため、全港湾阪神支部は、日検に対して、指定事業体の職員の採用について、団体交渉を申し入れたのです。

ところが、日検は、「日興サービスの従業員と労使関係にない」など回答して、団体交渉の申し入れを拒んだのです。全港湾阪神支部では、指定事業体から職員採用をするには、日検との団体交渉が不可欠であるとして、再度、団体交渉を申し入れましたが、日検は、団体交渉を受ける立場にないとの回答に終始し、団体交渉の申入れを拒んだため、不当労働行為救済申立に及びました。

4 日検は「使用者」

全港湾阪神支部が日検に対して団体交渉を求めている事項は、日検と全港湾阪神支部が確認した、指定事業体で勤務する労働者を日検で採用することの実現であり、日検でなければ決定することができません。また、日検は、全港湾阪神支部及び名古屋支部からの不当労働行為救済申立に対して自ら和解の申入れを行い、不当労働行為を是正することも約束し、今般の団体交渉で求めている指定事業体からの職員採用に努力すると自ら確認しているのです。

日検は、指定事業体の労働者の転籍や採用に関する基本的な労働条件等に対して、現実的かつ具体的な支配力を有しているとともに、指定事業体の労働者との間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的にあるのです。日検が「使用者」であることは明らかです。

5 さいごに

派遣先の使用者性については、近時、消極に解する裁判例や労働委員会命令が散見されます。しかし、本件では、日検が「使用者」であることが明らかなケースであり、使用者性が必ず認められなければなりません。
理論面・運動面ともにご支援をお願いします。

(弁護団は、坂田宗彦、増田尚、冨田真平各弁護士と西川大史)

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