民主法律時報

緊急シンポジウム「なぜ電通過労自殺事件は繰り返されたのか」報告

弁護士 馬越 俊佑

 2016年11月15日、緊急シンポジウム「なぜ電通過労自殺事件は繰り返されたのか」がございましたので、ご報告いたします。参加者は 名でした。

過労死問題の背景――隠れブラック企業の実態――

はじめに、松丸正弁護士より、過労死問題の背景について以下のとおり報告がありました。
電通といえば大企業であり、過労死問題は特定のブラック企業の問題ではなく、このような大企業でも起こる問題だと考えるべきだ。
平成3年8月27日に引き続き、平成27 年12月25日、当時24歳であった高橋まつりさんが過労自殺し、過労死等防止対策白書元年の事件となってしまった。
過労自殺が繰り返された原因は、一言でいうなら、「隠れブラック企業」の存在である。
両者に共通するのは、申告されていた労働時間と実際の労働時間が大きく食い違うことである。
他の事件からもいえることだが、労働時間が適正に把握されていない。三六協定があっても、労働時間が適性に把握されていないのに、どうやって規制するのか。企業風土の問題という人がいるが、そうではない。労働時間の把握、これがなければ、コンプライアンスも無意味であり、労働者の健康、生命は守れない。これが一番の問題である。

過労死遺族からの発言

次に、住宅建材メーカー管理職過労死事件について、和田香弁護士より報告があり、その後、ご遺族から発言を頂きました。
この事件は、建材メーカーに勤めていた管理職の男性(40歳)が、心室細動により死亡した事件で労災認定がされています。会社は、管理職であったことから労働時間を把握・管理していませんでした。死亡前6ヶ月の各月の時間外労働時間は100時間を超えており、過労死ラインである 時間を優に超えていました。安全配慮義務の内容として、労働時間の把握・管理は必須であり、管理監督者(そもそも本件は管理職に該当しないが)であっても同様です。
ご遺族からの発言は、切実な体験談であり、中でもお子さんに対する以下の内容の発言が特に印象に残っています。
今回の電通過労自殺事件を見て、自分の子供だと思うと直ぐに感情的になってしまいます。なかなか難しいと思うけど、仕事は生きていくために必要で、自分の社会的意味を持つために必要だと思うけど、自分をもっともっと大切にして欲しい。自分が自分を大切にすることは間違っていることじゃない。何が何でも仕事に行かないといけないと思わないで欲しい。自分で自分自身を守れる。それが大事だと子供たちに伝えていきたい。

森岡孝二教授から報告

次に、森岡孝二教授から、「過労死から見た日本の労働時間と『働き方改革』」について、報告を頂きました。森岡教授からは、今回の安倍内閣の改革は、「企業に任せる」というもの、政府が法による規制をしなければならない。労働組合も声を上げ、政府に迫らないといけない。との報告があり、労働時間規制と残業代支払い義務の強化、その前提としての労働時間の把握の義務付けが重要であるとのことでした。
その後、質問の時間があり、様々な質問がありましたが、割愛させて頂きます。

閉会の挨拶

最後に岩城穣弁護士より以下の通り、閉会の挨拶がありました。
過労死防止法ができて、意識が変わってきている。グランフロントで行ったシンポジウムでは480人の参加があり、意識が高まってきている。国民の世論が重要である。みんなが他人事だと思っている間は、過労死はなくならない。私たち自身が立ち上がらないといけない。組合も声を上げなければならない。共有していかなければならない。
との呼びかけがありました。

感想

過労死ご遺族の話を聞けた大変貴重な機会であり、松丸弁護士、森岡教授からのご報告も大変勉強になりました。過労死がなくなるよう私たちも団結しなければなりません。

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