民主法律時報

大生連・生健会に体する一連の弾圧と対応について(前編)

弁護士 須 井 康 雄

1 はじめに
昨年、淀川生活と健康を守る会(淀川生健会)に元会員3名の不正受給を口実として大阪府警の捜索が入り、その関係で、全大阪生活と健康を守る会連合会(大生連)、全国生活と健康を守る会連合会(全生連)まで捜索が及ぶ事態となった。
その経緯と対応などについて2回に分けて報告する。

2 三度にわたる捜索差押の状況

(1)
 2013年2月14日、大阪府警は、生活保護法違反で淀川生健会のA元会員を逮捕した(第一事件)。同時に、大阪府警本部警備部の警察官が多数のマスコミを引き連れて淀川生健会を訪れ、A元会員の名前が載った名簿、台帳、生活相談記録、住所録、入会申込書のほか、「大生連  年の歩み」、大生連の機関紙、会費納入状況に関する紙片を差し押さえた。

(2) 2013年9月12日、大阪府警は、生活保護法違反で淀川生健会のB元会員を逮捕した(第二事件)。大阪府警本部警備部の警察官は、同時に淀川生健会と大生連を捜索した。警察官は、淀川生健会でB元会員に関する生活相談記録や入会申込書のほか、生活保護の手引き、淀川生健会ニュース、一斉審査請求の取組に関する資料、生活保護の学習資料などを差し押さえた。また、大生連では、B元会員に関する資料はなく、大生連の定期大会決定集、事務局長交流会の資料、一斉審査請求の取組に関する資料などが差し押さえられた。同月17日に生活保護基準引き下げに対する一斉審査請求の取組を行おうとしていた矢先の出来事であった。

(3) 2013年10月10日、大阪府警は、生活保護法違反で淀川生健会のC元会員を逮捕した(第三事件)。淀川生健会、大生連に加え、ついに捜索は東京の全生連にまで及んだ。淀川生健会の捜索は曽根崎警察署の警察官が、大生連と全生連の捜索は大阪府警察本部警備部の警察官が担当した。警察官は、淀川生健会で、C元会員の入会申込書のほか、第二事件のことを伝える大生連ニュース、第二事件に関する抗議の書面を差し押さえた。大生連では、大会決定集と6月2日付けの「生活と健康を守る新聞」(第二事件より前に発行されたもの)の2点が差し押さえられた。全生連では、第二事件に関する抗議の書面、「月間生活と健康」、単組事務局長会議の資料、第二事件のことを伝える10月13日付の「生活と健康を守る新聞」、全国大会決議集などが差し押さえられた。

(4) なお、ABCによる各不正受給は、相互に何の関係もない、別個独立した事件である。

3 対応

(1)
 第一事件で、大生連は抗議声明を発し、淀川生健会は緊急集会を開いた。緊急集会には弁護士も同席・発言した。準抗告はしなかった。12の押収物のうち9点がAに関する書類であったため、捜索の関連性や必要性は否定しえないと考えたからである。しかし、公安を担当する警備部が登場していることや、組織にかかわる50年誌や機関紙が押収されていたことからすると、第一事件はのちの第二、第三事件への布石であったことは間違いなく、痛恨の極みである。

(2)
 第二事件では、大生連に対する捜索差押について準抗告を申し立てた。まず、関連性がないと明らかに考えられる大生連の捜索差押につき準抗告を申し立て、続いて、淀川生健会の捜索差押に対する準抗告を申し立てるつもりでいたが、大生連の準抗告申立の翌日、突然、大阪府警警備部の警察官が大生連と淀川生健会を訪れ、差し押さえた物すべてを返した。このため、淀川生健会の準抗告は、せずじまいとなった。また、大生連は弁護士とともに大阪府警本部を訪ね、抗議文を提出しようとしたが、市民窓口の警官が対応し、抗議文の受取を拒否した。

(3)
 第三事件では、大生連の捜索に弁護士2名が立ち会うことができた。第二事件の際、警察官は、大生連の役員に対し外部との連絡を禁止し、弁護士が立ち会うことができなかった。第三事件でも警察官は弁護士への連絡を禁止したが、大生連の役員は、前回のことを教訓とし、弁護士の立会を許さない法的根拠は何かと迫るなどして、弁護士に連絡することを認めさせた。このことが捜索令状の記載内容の正確な把握につながった。
また、第三事件では、大生連、淀川生健会とも捜索の翌日に準抗告を申し立てた。すると休日を挟んだ休み明けの日に大阪府警警備部の警察官が大生連と淀川生健会を訪れ、前回と同様、差し押さえた物すべての返還を申し出た。しかし、大生連や淀川生健会は、裁判所の決定に基づいて返還されない限り受領しない旨伝えて、受領を拒んだ。

(4)
 2013年10月25日、大阪地裁第  刑事部裁判官は、第二事件の大生連の準抗告を棄却した。理由は、差押物が還付されているから申立の利益なしということだった。また、同日、第三事件の大生連、淀川生健会の準抗告も棄却した。第三事件では差押物の受取を拒否していたため、中身に踏み込んだ判断がなされたが、要は捜索差押に違法性はないとのことであった。2013年11月5日、すべてについて特別抗告を行ったが、同月25日、最高裁は、中身についての判断もせず、特別抗告を棄却した。

4 2.4集会について

本件の一連の捜索差押の問題点については、後編で述べることとし、一連の捜索差押に対する抗議集会のご報告を先行する。
2014年2月4日、大阪市北区の北区民センターで、一連の不当な捜索に対する抗議の意思と団結を示すため「不当弾圧許すな! 怒りの集会」と銘打った集会が開催された。全国から生健会の会員や労働組合など他の団体から多数の参加を得て、参加者は780名にも上った。
社保協の方の発言が、特に心に残った。家賃保証会社の社員が、人のいる気配がするのに、1週間も督促状がドアに挟んだままになっていることに気づき、市役所に相談したが対応してもらえず、ネットで検索して出て来た社保協に相談した、社保協から連絡を受けた大生連の担当者がその家に行き、状況を確認し、市役所に同行申請をしたら、すぐに生活保護が認められた。その人は37歳にもかかわらず、ガリガリに痩せていたとのことだった。これは、つい最近の話である。
生活保護費の切り下げの問題などは、限りある予算の配分の問題としてとらえられることも多い。しかし、貧困から命を救い、人間らしい生活をできるようにするという活動がもつ価値は、誰も否定できないであろう。
その後、寒風をもろともせず、扇町公園から中津の阪急インターナショナル近くの公園までデモ行進をして、この日の集会は終わった。

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