民主法律時報

教育の機会均等のために―― 朝鮮学校高校無償化裁判

弁護士 金 星姫

 2010年に施行されたいわゆる「高校無償化制度」の対象から、全国の朝鮮高級学校を除外した国の処分につき、2017年7月28日、大阪地方裁判所第2民事部は歴史的な判決を言い渡しました。①文部科学大臣が大阪朝鮮学園に対してなした、就学支援金の支給対象校に指定しないという処分を、政治的な判断に基づきなした処分であって違法・無効であると断じ、②大阪朝鮮高級学校は要件を満たしているので、支給対象校として指定せよという義務付けの判決を言い渡したのです。

主文が言い渡された瞬間、法廷いっぱいに拍手と歓声が響き渡り、傍聴席にいた人も原告代理人席の弁護士も皆、手を取り合ったり抱き合ったりして歴史的なこの判決に立ち会えた感動を分かち合っていました。この瞬間を、私は一生忘れることはできません。

思い起こせば、2012年の秋、私は、ちょうど、司法試験に合格し司法修習生になっていました。高校無償化法が施行されてから2年程経ったにもかかわらず、朝鮮学校の指定については審査手続が凍結されたままであり、この問題を巡って弁護団が結成され、勉強会や会議が行われていたところでした。私はまだ弁護士ではありませんでしたが、丹羽雅雄弁護団長や原告である学校法人大阪朝鮮学園の了解のもと、弁護団会議に出席し、議論の状況を勉強させていただきました。また、7月集会において「朝鮮学校授業料無償化適用排除問題を考える」と題した分科会を開き、この問題を広く知ってもらうための活動もしました。「弁護士でなくても、今、自分にできることを精一杯やろう」という気持ちでいっぱいでした。

私が弁護士登録をしてすぐの2014年1月に、大阪が先陣をきって提訴をし、裁判が始まりました。私もすぐさま弁護団に加入し、弁護士としてこの裁判に携わり始めました。弁護団の諸先輩方の背中を追いかけながら、議論を積み重ね、弁護団全員の魂がこもった書面を毎度提出し、裁判所に訴えかけました。今回のこの素晴らしい判決は、弁護団だけの力ではなく、朝鮮学校の生徒達や教員の方々が、忙しい中、時間を作って署名活動や街宣活動に立ち、支援の会のみなさんが雨の日も風の日も府庁前で「火曜日行動」に立って子どもたちの学ぶ権利を保障せよと訴え、みんなの力で得られた勝利の判決です。

また、裁判の結果にかかわりなく、当事者、支援の会、そして弁護団が手に手を取り合って、4年半もの長い間、行政の差別的取り扱いに屈することなく、声を上げ闘い続けたこと自体が大きな大きな勝利だと思います。

しかし、まだ、闘いは終わっていません。大阪の判決に先立って、7月19日に広島地裁が判決を言い渡しましたが、その判決は、大阪判決とはかけ離れた内容であり、「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与する」(第1条)という高校無償化法の素晴らしい理念が一切汲まれていない極めて残念な内容でした。

広島では控訴審が始まりますし、大阪でも国が控訴したため控訴審が始まることとなりました。また、東京・愛知・福岡でも裁判が続いています。東京では9月13日に第一審判決がでる予定です。

一日も早く、全ての朝鮮高級学校が就学支援金の対象校に指定され、朝鮮学校に通う生徒たちが就学支援金を受けてのびのびと学ぶことができるよう、引き続き、弁護団の一員として全力で励む所存です。今後ともこの裁判に大きな関心を寄せていただきますようお願い致します。

(弁護団は、丹羽雅雄弁護士(弁護団長)、金英哲弁護士ほか、合計22名)

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