民主法律時報

病院内でのハラスメント事件 提訴

弁護士 脇 山 美 春

1 はじめに

2022年8月10日、病院内での職場環境配慮義務違反・医師によるハラスメントにつき、病院に対し責任を追及する訴訟を大阪地裁岸和田支部に提訴しましたので、ご報告します。

2 事案の概要

原告A(50代女性)は、准看護師資格を保有しており、2020年11月21日より、被告である内科医院に、正社員の看護師として勤務してきました。同医院は、小児科・内科・循環器内科・皮膚科を擁する岸和田市内にある病院で、常時従業員5名程度の中小企業です。

しかし同医院は、①原告Aをはじめとする看護師スタッフに対し、電線コードから配線がむき出しになった状態のDCモニターを用いて患者に処置を行うように指示をし、原告Aら従業員及び患者の生命・身体に危険を伴う業務を行わせてきました。

また同医院は、②訴外介護事業所Bに対して、薬品を横流しし、訴外介護事業所Bに不法に薬品在庫を保持させてきました。

このような同医院の対応を不審に思ってきた原告Aは、主に②の点について、2021年9月 日頃、社会福祉協議会に相談をしました。

すると、同医院の医師(病院経営者)は、原告Aが相談に行ったことを知ると、原告に対し、継続してハラスメントを行いました。

具体的には、原告Aに対し「あなたがやっていることは違法だ、訴えるぞ。だんなも仕事辞めないといけなくなるぞ」等と言って脅迫をしたり、原告Aに対し、指示を記載したメモを無言で投げつけたり、まだ勤務が残っているにもかかわらず、「帰れ」と言って帰宅させる等しました。

原告Aは、①②をはじめとするこれまでの劣悪な労働環境、及び上記ハラスメント行為によって吐き気や下痢など身体への不調をきたすようになり、2021年11月末日をもって退職せざるをえませんでした。

3 本事件の重要性

同医院が原告Aに使用させたDCモニターは、従業員の身ならず患者の生命身体にも、感電の危険をもたらすものであり、これを使用させた行為は、明白な職場環境配慮義務違反に該当します。

また、2019年5月、パワハラ防止法が成立し、2022年4月1日以降は、中小企業にもパワハラ防止措置対策が義務付けられるなど、パワハラに対する社会的な関心は高まっています。そのような状況にもかかわらず、適法な相談行為を行った従業員に対し、上記の悪質なハラスメント行為を取ることは許されません。

交渉段階では病院はいずれの責任も否定していますが、裁判を通じて、病院側の責任を明らかにしていきたいと考えています。

民主法律時報アーカイブ

アーカイブ
PAGE TOP