弁護士 藤井 恭子
2021年5月17日に、大阪市立木川南小学校の久保敬校長が、大阪市長と大阪市教育長に対して提言を行ったことから、市長と教育委員会が校長に対する懲戒処分を示唆し圧力を加えるという重大な問題が生じています。
校長が行った提言は、大阪市立小中学校における緊急事態宣言中の授業について、オンライン学習をさせるとの市教委の方針によって、現場が混乱しているという事実の指摘と、児童生徒と保護者・教職員に大きな負担がかかっているという訴えであり、正当な教育施策批判であることは明らかです。
この提言が、市長と教育長に対して送付され、ネット上でも共感とともに広がりを見せたことについて、一部の議員と教育委員会が問題視し、懲戒処分を示唆する動きを見せています。
また、松井市長は校長の提言について「ルールに従えないのであれば、組織を出るべきだと思う」と発言しました。
市長の発言と、一部議員・教育委員会による一連の動きは、現場の声に耳を傾けようとせず、批判をする者に対しては圧力をかけて従わせるという、維新政治の独断・高圧的な姿勢が極めて強く表れたものと言えます。
6月2日、民法協は、「大阪市立小学校長の『提言』を理由に懲戒処分を示唆する動向に抗議し、全ての子どもたちの学ぶ権利の保障及び安心・安全な教育の実現を求める声明」を発表し、自由法曹団大阪支部とともに、教育長に対して申入れを行いました。
また、市長に対しても、声明文を送付するとともに、子どもたちが安心・安全な教育を受けられる施策を実現するよう申入れをしました。
現場の声を無視して、トップダウンで教育施策を行い、従わない者に対してパワーハラスメントとも言うべき圧力を加える松井市長と、それに阿るような教育委員会の姿勢は、強く非難されるべきです。
今回の申入れは広く報道されており、大阪市の教育施策に対する問題意識が広がるきっかけとなったと思います。
今後も、本件及び大阪の教育施策に対して、注視していかなければなりません。