民主法律時報

裁判・府労委闘争委員会例会報告 ――エミレーツ航空事件をテーマとして

弁護士 片山 直弥

1 はじめに
2017年10月30日、裁判・府労委闘争委員会の例会がエル・おおさかで行われました。今回は、「エミレーツ航空事件」をテーマに、個別事件の検討を行いました。

最初に、弁護団の森信雄弁護士から会社の特徴、解雇までの経緯、労働委員会・裁判での闘争内容などの詳細なご報告を頂きました。
次に、航空連スカイネットワーク大阪エミレーツ航空分会の原告から運動に主軸をおいてのご報告を頂きました。
最後に、頂いた報告内容を踏まえて、活発な議論が交わされました。

2 エミレーツ航空の特徴
事案については、民主法律時報2017年11月号(No. 539)で原告の方が執筆しました「エミレーツ航空は日本の法律を守り、3名を復職させ、労働環境の改善を!」をご覧いただければよいか、と思うのですが、例会でお聞きしていて特に印象的だったのは、「エミレーツ航空は、完全にトップダウン式の外資企業であって、日本支社単独では解決能力がない」という点です。

少し詳しく書きますと、エミレーツ航空は王族国家であるドバイに本社があり、その会長兼最高経営責任者も殿下が務めています(驚くべきことに会社内でも「会長」ではなく「殿下」と呼ばれていたようです)。そのため、さきほどは「外資企業」と書きましたが、「王族が行う国営に近い企業」というのが実情のようです。

3 上記2に由来する問題点及び闘争上の課題
エミレーツ航空の「完全なトップダウン式」や「日本の法律を守る意識が薄い姿勢」(=労働組合を軽視・敵視する姿勢)という問題は、このような企業体質に由来するのでしょう。

ただ、企業体質は、一朝一夕で改善できるものではありません。そのため、労働闘争としては、解決能力のない日本支社ではなく解決能力のある本社等を動かすためにどうするか、を考えねばなりませんでした。

そこで、労働闘争として通常は、労働委員会か裁判か、また、裁判をするにしても仮処分か訴訟か、と選択的に行うことが多いですが、本件では、「手数を増やして追い込んでいこう」という考えで、そのすべてを行い、また、運動としても国外にダイレクトに伝えられるSNS(=FacebookやTwitter)の活用まで行ったと聞いています。

4 さいごに
エミレーツ航空は、原告側ほぼ全面勝訴の一審判決を受けて控訴をしたようです。上記3のように、問題の根がとても深い事件ですので、裁判や労働委員会での活動のみならず、それ以外の運動も重要になると思います。運動のさらなる活発化のために、私自身、応援していきたいと思います。そして、よいご報告が頂けることを期待してやみません。

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