民主法律時報

労働法研究会「大学教員の雇止め」を開催しました

弁護士 清 水 亮 宏

2023年4月1日(土)13時から、労働法研究会を開催いたしました。会場(エルおおさか)とZoomのハイブリッド開催で実施し、合計30名以上の方にご参加いただくことができました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

今回のテーマは「大学教員の雇止め」でした。大学教員による無期転換権行使を回避する目的で、2023年3月末に大学教員が雇止めされてしまっている実態があります。このような雇止めの動きに対抗するため、今回のテーマを取り上げました。

まず、羽衣国際大学事件について、弁護団の鎌田幸夫弁護士・中西基弁護士からご報告をいただきました。同事件については、2023年1月18日、大阪高等裁判所が、大学教員任期法4条1項1号の解釈を示し、事案に即して同号の該当性を否定する逆転勝利判決を出しています。報告では、高裁判決の内容、労働者側の主張の内容、大学教員任期法4条1項1号の解釈や学説について、詳細にご報告いただきました。大学教員任期法の恣意的な適用を認めなかった高裁判決の意義がよくわかりました。また、高裁段階で意見書を執筆いただいた金沢大学の早津裕貴准教授の論文(労働法律旬報2022年7月上旬号掲載)についても詳しくご紹介いただきました。

続いて、2023年2月に提訴したばかりの大阪大学非常勤講師解雇(雇止め)事件について、弁護団の中村和雄弁護士からご報告をいただきました。訴訟に至る詳しい経緯をはじめ、予想される争点(労働者性等)について詳しく解説いただきました。大阪大学は、非常勤講師に関し、2022年4月に雇用契約に変更するまでの期間は準委任契約であったと主張しているため、労働者性が問題になっています。この点について、文科省の通知「大学が請負契約等を締結した者を活用して授業を実施する場合の留意点」の内容を踏まえてご報告・解説いただきました。また、更新上限規程の有効性、大学教員任期法4条1項1号該当性等のその他の論点についても詳しく解説いただきました。

最後に、2事件の報告を踏まえて、参加者間で議論・討論を行いました。大学教員の更新上限についてどのような実態が存在するのか、大学教員に契約期間や更新上限を設けること自体に対してどのように歯止めをかけていくのか、前記の文科省通知の位置付けについてどのように考えるべきか、などの点について、活発な意見交換がなされました。

次回の労働法研究会も、ホットなテーマを取り上げて議論したいと考えておりますので、ぜひ参加をご検討ください。

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