民主法律時報

コロナ禍から雇用を守れ!――ブラック企業対策! 労働判例研究ゼミ

弁護士 西田 陽子

1 コロナ禍でも元気な判例ゼミ

2020年9月17日、秋の「ブラック企業対策! 労働判例研究ゼミ」が民法協事務所とzoomの併用で開催されました。
今回は、コロナ禍における整理解雇がテーマでした。73期修習生から豊川義明弁護士まで、幅広い年代が参加しました。発表により与えられた素材をもとに、参加者のそれぞれがコロナ禍での新しい労働問題について自分の頭で考え議論する、大変刺激的なゼミとなりました。

2 ゼミの内容

①整理解雇の一般論
担当は加苅匠弁護士。基本書や判例に基づき、丁寧に整理解雇の一般論を紹介し、議論の土台を作りました。豊川弁護士からは、主張立証責任の所在や年齢差別の問題等について、どのように考えるかという投げかけがあり、参加者一同、基礎基本が奥深いものであることを学べました。

②日立メディコ事件(最判昭和61年12月4日 労判486号6頁)
担当は西川翔大弁護士。zoom開催にあわせて、パワーポイントで見やすく事実関係が整理されたレジュメ(力作!)を用いての発表でした。第1審と控訴審・最高裁の判断のポイントが良く分かり、当時の労判の解説が既に解雇制限の正当化根拠から本判決を批判していたことを知ることができ、大変勉強になりました。

③コロナ禍における整理解雇法理の再構成
担当は筆者。コロナ禍の特徴を整理し、解雇制限の正当化根拠に遡り、コロナ禍における整理解雇法理を再構成しようという新しい試みでした。とくに、日立メディコ事件との関係では、コロナ禍において非正規が優先的に解雇されることに合理性があるのかという問題提起をしました。コロナ禍の整理解雇に関する参考文献は少なく、「道無き道を行く」発表でしたが、少なくとも議論の素材を提供することはできたようで、活発な議論が行われました。

④雇用調整助成金に着目した整理解雇の無効主張(弁護団事件報告)
担当は川村遼平弁護士。コロナ禍で整理解雇をされた弁護団事件につき、使用者が雇用調整助成金を利用しなかったことやその時期等に着目した主張について端的で分かりやすい報告がありました。中西基弁護士からは、「雇用調整助成金を利用しない解雇は、社会的相当性を欠き、整理解雇の4要件を検討するまでもなく無効ではないか?」との挑戦的な問題提起がありました。

3 次回ゼミ日程(ご参加お待ちしております!)

次回は11月27日(金)午後6時半からの開催を予定しています。引き続き、コロナ禍における労働問題を取り扱う予定であり、次回も挑戦的な問題提起と刺激的な議論がなされること、間違いありません。是非ご一緒に、新しい労働問題を考えてみませんか。みなさまのご参加をお待ちしております。

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