民主法律時報

働き方ASU―NET10周年記念日韓シンポジウム「韓国若者運動に学ぶ――高まる韓国労働運動のうねり」

NPO法人「働き方ASU-NET」理事 北出  茂

2016年10月14日、日韓シンポジウム「韓国若者運動に学ぶ―高まる韓国労働運動のうねり」が開催されました(於:エルおおさか、参加者約100名)。
シンポでは、まず、森岡孝二さん(代表理事)から「ASU―NETの 年と労働NPOの役割」と題した挨拶があり、この 年間の活動などの報告がありました。

講演は、趙誠柱(チョウ・ソンジュ)さん(韓国ソウル市元労働補佐官・元韓国青年ユニオン)で、テーマは「韓国青年たちの挑戦―ソウル市における労働/青年政策の事例」というものでした。

講演の前半は、韓国青年ユニオンの活動についてでした。
氏が強調していたのは、「世代別」「個人加盟」(企業別、正社員中心ではなく)のユニオンの必要性でした。韓国の青年たちは「企業別労組は、正規職が中心で、非正規の問題にさほど関心を寄せない」ことから、自分たちは孤立していると感じていたそうです。そこで、あらたに世代別労働組合である「韓国青年ユニオン」を結成したと語りました。その際に見本(モデル)にしたのは、日本の「首都圏青年ユニオン」だと明言していました。

また、マスコミを上手に味方につけながら運動を進めてきたことを氏は強調されていました。
例えば、(日本でも一時流行した)「注文してから30分以内に配達します」というようなピザ屋チェーンの話をして、「これは非人間的な働かされ方だ」という社会的告発をして廃止に追い込んだりしています。ユニオンや当事者の利益だけでなく、社会全体を巻き込むような公益性のある社会的な運動を展開してきたわけです。

講演の後半は、ソウル市における労働・青年政策の事例を話されました。
とりわけ、ソウル市長に、パク・ウォンスンさんが選ばれて以降、労働政策が市民参加を重視して行われるようになりました。

前半の話とのつながりでいえば、韓国青年ユニオンのOB・OGが、政治、行政など、多方面に活躍していることが特徴です。労働政策課、青年政策課などで、行政の政策に関して、ともに話し合う場を得られるようになり、自分たちの意見が政策に反映されるようになったということです。ソウル氏で7300人が正規職へ転換されたことは、その顕著な例といえます。さらに、「最低賃金は青年たちの賃金である」というキャンペーンの下、最低賃金委員会の改革に取り組んでおり、最賃委員会に韓国青年ユニオンが入るなど、政治を推し進める原動力にもなっています。

政治や行政を上手に使う点について、氏は、(「強い組合」には自分たちだけで物事を動かせるというような自負があるかも知れないが)韓国青年ユニオンは「弱い組合」だから自分たちだけでは何もできないことを理解している、だから政治にも行政にもコミットしていくのだ、という趣旨の話をされていました。

まとめとして、上記シンポジウムは、ASU―NET設立10周年記念のつどい(第25回つどい)として開催されました。
このシンポを通じて、問題の「可視化」や、様々な組織と連携して戦略的にキャンペーンを組む手法、政治への働きかけなど、韓国若者運動から学ぶことは多いと感じました。
そして、今なお「残業代ゼロ法案」の導入が図られようとしているなかで、改めて、労働NPOの役割を再認識するとともに、まともな働き方の実現へ向けて、果たしていくべき課題は多いと感じました。
これまでと同様、活動家支援共同(Activist Support Union)として、今ある働き方の問題を世に知らしめ、本来あるべき働き方を示す役割を果たしていきたい。
明日(ASU)を切り開くために。
私たちは、みなさまとともに、これからも歩み続けます。

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