弁護士 長瀬 信明
2016年10月21日、午後6時30分から、大阪憲法会議・共同センターによる秋の憲法大学習会「戦争法廃止!発動ストップ! 新たな情勢を学び、秋のたたかいの力にしよう!」がたかつガーデン(大阪府教育会館)8階で開催され、258名もの方が参加されました。
まず、藤木邦顕弁護士から開会のあいさつがあり、続いて、「戦争をさせない1000人委員会・大阪」の山本一英事務局長から連帯のあいさつがありました。
そして、渡辺治一橋大学名誉教授を講師に迎えて、講演「安倍改憲の新段階と運動の課題―参院選の共同が切り拓いたもの―」が始まりました。
渡辺教授は、まず参議院の結果について分析されました。
参議院の結果について、いずれの主要報道機関も「安倍自民党の勝利」を強調する一方、「野党共闘による勝利」を無視するものでした(朝日新聞、東京新聞ですら!)。渡辺教授によれば、参議院の結果にこの二つの顔があるとのことでした。
そして、なぜ悪政にもかかわらず安倍自民党が勝利したかについて、得票率について分析され、地方(とくに中国四国、九州、北信越)、人口減少や構造改革で痛んでいる地域で得票率を伸ばしていると指摘されました。こうした地域に安倍政権は、湯水のように公共事業投資をしていますが、当該地域の人々も公共事業投資で復活するとは思っておらず、大企業がおいしい思いをするのはわかっているが、二次下請け、三次下請けでもよいという思いから自民党を支持するとのことでした。
また、東京、それも千代田区、中央区、港区といった大企業の管理職層、とくに国際的な大企業の正規社員(グローバル経済、構造改革恩恵を受けている人たち)が居住する地域での自民党支持率が増加していると指摘されました。
ところが、大阪は違うそうです。自民党への得票率が全国平均を大きく下回っており、なんと沖縄をも下回る全国 位だそうです。大阪維新が原因かと思いきや、実は大阪維新ができる前からだそうです。大阪はグローバル経済等の恩恵を受けておらず、むしろ非正規労働者、高齢者といった人たちが多く、自民党への支持につながらないそうです。なお、大阪では民進党も弱く、民進党の得票率も全国 位だそうです。構造改革への改革を求める声が、おおさか維新へ流れているのだそうです。
このように自民党勝利の要因は、大企業本位の政策で痛んでいる地域と恩恵を受けている地域での勝利なのだそうです。
他方で、野党共闘の勝利についても分析され、自民党は11の選挙区で競り負けていますが、さらに野党共闘がすすめば、安倍政権は瓦解するそうです。
野党共闘もかつての安保共闘以上に大変ではあるが、民進党と共産党は、自衛隊に人殺しをさせないという点で一致しており、希望はあるとのことでした。
ところで、戦争法廃止の運動は、全国的な広がりをみせ、1580万人もの戦争法廃止の署名を集めました。
こうした戦争法反対の運動こそが今回の参院選の結果につながったとのことです。例えば、青森県は大逆転して野党が勝ちましたが、無党派層が野党共闘へ入れただけではなく、自民党支持層の15%、公明党支持層の25%が、地道な運動の成果で野党へ投票した結果だそうです。
ただ、野党共闘による勝利をもたらしたものの、安倍政権を倒すまでには至らなかった点については、野党共闘で受け皿をつくったが、皿に盛る料理が欠けていたとの指摘をされました。平和問題という半分しか盛られなかったが、これだけでは足りず、国民が求めている暮らしを豊かにする料理が足りなかったと指摘されました。
今後、なお一層野党共闘を強化しないといけないのことでした。
渡辺教授の講演の後、山田憲司事務局長から行動のよびかけがなされ、丹羽徹幹事長から閉会のあいさつで終わりました。