民主法律時報

在阪法律家五団体講演会「宗教右派とジェンダー」

弁護士 藤 木 邦 顕

2023年3月6日、大阪の法律家団体五団体共催のハイブリッド講演会「宗教右派とジェンダー」を開催しました。(注)法律家五団体とは、民主法律協会、自由法曹団大阪支部、大阪社会文化法律センター、青年法律家協会大阪支部、大阪弁護士九条の会です。

2022年7月の安倍晋三元総理銃撃事件の後、急速に統一協会批判が起き、宗教右派と政治とのかかわりが議論されました。五団体の問題意識としては、統一協会のみならず、神社本庁などの宗教右派が改憲を扇動していること、その際九条だけではなく、再々家庭観やジェンダー問題がとりあげられていることから、今回の講師を斉藤正美先生にお願いすることになりました。

斉藤先生は富山大学非常勤講師で、専攻は社会学、フェミニズム・社会運動研究です。男女共同参画社会実現へのバックラッシュが起こった時から、右派への調査を開始し、共著『社会運動の戸惑い―フェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動』(勁草書房)他の著書があります。その多くが、宗教右派の当事者を含めた生の声を聴き、そこから右傾化や改憲論、特に家族をめぐる政治の動きをリポートするもので、事実にもとづく迫力があります。

3月6日は、弁護士会館の会場に斉藤先生にお越しいただき、WEBを含め、30名の参加がありました。

斉藤先生は、統一協会だけでなく、神社本庁、モラロジー、崇教真光、新生仏教などが日本会議に加入し、共通して「伝統的家族」を重視していること、自民党安倍派を中心に政治とのかかわりを持ち、LGBT法案について、差別禁止は分断を産むと主張し、理解増進法案にしたこと、パートナーシップ制度にも反対したことをまず指摘しました。そして、1990年代後半から従軍慰安婦、夫婦別姓、性教育を攻撃し、その後、婚活、ライフプラン教育を推進し、家庭教育支援条例制定を進め、福井県ではジェンダー関係図書を図書館から撤去させる運動などを推進したことを紹介しました。こうした運動は、安倍元総理のジェンダーフリーや男女共同参画は「偏った価値観を社会革命運動として展開するので警戒しましょう。」という考えに集約されます。

自民党安倍派の家庭観は単純な戦前回帰ではないと斉藤先生はコメントされていますが、神社本庁などは、日本人は「皇室をいただきながら大きな家族のように生きてきた農耕民族」とも言っており、かなり復古主義的です。宗教右派が政治を利用したのか、逆に政治が宗教右派を利用したのかわかりませんが、改憲論がこのような勢力によって進められていることは注視する必要があります。

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