民主法律時報

2月開催「ブラック企業対策!判例ゼミ」のご報告

弁護士 片桐 誠二郎

2月26日(月)に開催しました「ブラック企業対策!判例ゼミ」についてご報告いたします。今回の判例ゼミは、「労基法上の労働者」をテーマとして開催しました。参加者は総勢15名(現地8名+zoom7名)で、うち2名は司法修習生でした。今回は、次の裁判例を検討しました(括弧内は報告者)。

①イヤシス事件(垣岡彩英弁護士)
リラクゼーションサロンの経営等を目的とする会社が運営する店舗でリフレクソロジー等の施術等に従事していた原告らが、割増賃金を請求した事案(肯定)
②企業組合ワーカーズ・コレクティブ轍・東村山事件(松村隆志弁護士)
一般貨物自動車運送事業等を目的に設立された企業組合で、荷物配達業務に従事していた原告が未払割増賃金及び付加金等の支払を求めた事案(否定)
③NOVA事件(筆者)
語学スクール、学習塾等の経営を行う会社で英会話教師として勤務していた原告らが、年休権侵害や健康保険加入義務懈怠を主張して損害賠償を求めた事案(肯定)

裁判例①に関しては、判決では時間的拘束性から記載されている点が特徴的だとの指摘や、本件各契約書に「委託時間は1日8時間から10時間を目途とする」と記載されていた点に関し、「委託時間」というものはあり得るのかといった疑問などが出ました。

裁判例②の判決に対しては、ワーカーズコレクティブの原則からすると使用者は観念されず、当該事案はそのような形態での運営がうまくいかなかったことを示す一例ではないかとの意見があった一方で、原告が運営会議の決定事項に拘束されるとしても原告が参加して意見を述べることができたのであるから労働者性を肯定することにならないという論理はいかがなものかといった意見もあり、参加者間でも見解が分かれました。

裁判例③の検討では、横浜南労基署長(旭紙業)事件と同様に業務の性質からどの程度の拘束が認められるかを丁寧に判断している点が評価できるといった意見がありました。また、テーマからは外れますが、健康保険加入義務懈怠による損害額に関連して、三庵堂事件・大阪地判平成10年2月9日労判733号67頁があることを参加者で共有しました。

最近ではアマゾン配送ドライバーの労災申請において労働者性が認定されたこともあり、労基法の諸規定の適用を受ける前提である「労働者」の考え方を直近の裁判例の検討を通して振り返ることができ、大変有意義な時間を過ごすことができたと思います。

次回は4月22日午後6時から「休職期間満了と労働者の地位」をテーマとして開催します。次回も活発な議論ができればと思いますので、奮ってご参加ください。

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