民主法律時報

労働相談懇談会のご報告

弁護士 西 川 大 史

1 はじめに

 2012年9月12日、国労会館において、労働相談懇談会が行われました。参加者は、約30名でした。

2 労働情勢報告

 まず、懇談会の冒頭、私から、前回の労働相談懇談会以降の労働情勢の報告を行いました。この間も全国各地で多くの労働事件の提訴や判決が出されていますが、昨今の労働裁判で目を引くのは何と言っても、前回に引き続き「大阪市問題」の関係です。
 思想調査アンケートの国賠訴訟提起のみならず、地下鉄の回送電車内で喫煙していた運転士に対する停職1年の懲戒処分、大阪市教組の教育研究集会についての学校使用不許可の取消訴訟など、今後も引き続き注目していきたいと思います。

3 改正派遣法・労働契約法の活用を考える

 今回の学習会は、井上耕史弁護士から、「改正派遣法・労働契約法の活用を考える」をテーマに講演をいただきました。派遣法、労働契約法(有期労働)ともに、労働者の期待を大きく裏切る骨抜きの改正でありますが、改正内容のみならず、改正法をいかに活用するか等について、厚生労働省のパンフレットを参照しながら分かりやすく説明いただき、まさに目から鱗の学習会でした。

(1)改正派遣法の活用
 まず、井上先生から、重要な改正点として、法の目的に、「派遣労働者保護を図る」(1条)と明記されたことを指摘いただきました。派遣法が労働者保護の法律であることを明確に位置付けることができ、今後は派遣先が是正指導に従わない場合、民事上の責任肯定や、義務的団交事項であることがより肯定されやすくなるものであります。
 また、今回の最大の改正点であり、2015年10月から施行される、みなし労働契約申込み(40条の6)について、①派遣禁止業務への派遣、②無許可・無届派遣元事業主からの派遣、③派遣受入期間制限違反の派遣、④偽装請負の各違法行為については、派遣先が知らず、かつ知らなかったことについて過失がない限り、違反時点において、派遣先から派遣労働者に対し、その時点における派遣労働者の労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなすという改正内容について説明いただきました。それとともに、派遣労働者が承諾の意思表示をして初めて直接雇用となるため、派遣労働者に対し承諾しない旨の意思表示を強制させるおそれや、また、違反行為終了日から1年以内に派遣労働者が承諾しないと直接雇用とならないため、いつまで違法状態が継続していたのかに注意を要することや、さらには、もとの労働契約が無期であれば、直接雇用も無期雇用となる反面、もとの労働契約が有期であれば、直接雇用も有期雇用にしかならないため、直接雇用申込み時に、今後は更新しないとの不当な要求がつくのではないか、1回目の契約更新時に雇止めされた場合の雇止めの有効性等の問題点についても分かりやすく指摘いただきました。
 このように限定的であり、かつ問題点も多々あるとはいえ、みなし労働契約申込みが規定されたことは非常に大きいのではないでしょうか。

(2)改正労働契約法の活用
 次に、改正労働契約法について、有期労働契約の期間の定めのない契約への転換(18条)、雇い止め法理の法定化(19条)、不合理な労働契約の禁止(20条)といった改正内容について説明いただきました。そして、有期労働契約の期間の定めのない契約への転換について、転換後の労働条件は、現に締結している有期契約と同一でしかなく、正社員になれるわけではないため、「無期雇用労働者」という中間的な地位が生まれることにより、正社員よりも簡易な手続による解雇も有効となるのではないかという危惧や、有期契約より低い労働条件を就業規則で定めて転換を妨げるおそれ等についても指摘いただきました。

4 さいごに

 今回の懇談会は、改正派遣法、労働契約法をいかに活用するかについて学ぶことができ、非常に貴重な学習会でありました。
 労働相談懇談会は、最新の法律やテーマ等について、その分野に長けた講師からの講演をもとに学習議論できる貴重な機会であり、毎回学ぶことが非常に多いものです。
 次回は、12月11日(火)午後6時半から、国労会館での労働相談懇談会を予定しています。多くの組合員、相談員、弁護士に参加いただき、学習議論、交流することで、労働相談懇談会がより充実したものになることを願っています。

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