弁護士 長瀬 信明
2016年6月6日、在阪法律家8団体(大阪社会文化法律センター・大阪労働者弁護団・大阪民主法曹協会・自由法曹団大阪支部・青年法律家協会大阪支部・日本労働弁護団大阪支部・民主法律協会・連合大阪法曹団)共催で「STOP! 安倍政権雇用破壊 解雇規制と労働時間規制を守れ!」がエル・シアターで開催され、312名が参加しました。
鎌田幸夫民法協幹事長による開会のあいさつから始まり、来賓の山口健一大阪弁護士会会長、民進党のおだち源幸参議院議員、日本共産党の清水ただし衆議院議員からそれぞれ激励のお言葉をいただきました。
続いて大阪労働者弁護団の奥山泰行弁護士から「労働法制の動きと安倍政権の狙い」と題する情勢報告を受けました。昨年後半以降の労働法改正の議論は、安倍政権の憲法改正(選挙の勝利)のための道具として利用されており、自民党が一定以上の勝利を収めれば、労働法制についても明らかな「改悪」が一気に進むことは明らかであると強く訴えられました。
基調講演は川口美貴関西大学教授による「安倍政権の雇用戦略の問題点と課題」でした。まず、労働時間・労働契約終了法制をめぐる状況について説明され、労基法(労働時間法制)改正案の問題点について詳細な解説をいただきました。
労働時間規制の意義として、①労働者の労働負担(業務量)の限定と労働者の健康の保障、②労働者の自由時間保障(家族的責任との両立も含めて)、③雇用の創出(ワークシェアリング)を挙げられ、現行の労働時間法制の概要について解説された上で、(a)「新たな適用除外制度」、(b)裁量労働制の拡大、(c)フレックスタイム制のさらなる弾力化について検討されました。
そして、説得的な理由を述べられた上で、(a)「新たな適用除外制度」については導入すべきではない、(b)裁量労働制は拡大すべきではない、(c)フレックスタイム制のさらなる弾力化(精算期間の延長)は支持できないと結論づけられました。
労働契約終了法制に関する提案と問題点についても詳細な解説をいただきました。
まず、使用者による一方的労働契約終了(解雇・契約更新拒否等)の規制の意義と現行法制、そして、雇用終了に関する規制改革会議の提案の主な内容について解説をいただきました。
その上で、「解決金制度」の是非について、かかる制度を導入すると、当初は、「労働者側からの申し立てのみを認める」こととしても、その後、「使用者側からの申し立ても認める」制度に変更される危険性がきわめて大きいこと、現行法においても、違法な解雇の対象となった労働者は、「復職」か「損害賠償」かいずれかを選択することができるし、あっせんや労働審判、和解において、金銭解決が可能であることを理由に否定的な見解を述べられました。
最後に、労働時間法制及び労働契約法制それぞれについて「改悪」ではなく「改正」に向けてのご提案をいただき、終了しました。
基調講演の後は、現場からの報告・スピーチということで、まず、損保業界における「先取り」の実態について、松浦章兵庫県立大客員研究員から報告を受けました。裁量労働制が本来対象外であるはずの営業職にまで適用され、いずれすべての労働者に広がるおそれがあるとのこと、多くの労働者に対して払われるべき残業代が払われていない実態についてご報告をいただきました。
また、不当解雇事件から職場復帰を果たした当事者の方から、体験したこと、実感したことをご報告いただくとともに、解雇の金銭解決制度の不当性を訴えました。
そして、昨年2月立ち上がった関西学生アルバイトユニオンの学生の方から、活動内容、重い奨学金を負担せざる得ない学生の置かれている状況、非正規労働者が増加したあおりを受け、学生バイトが基幹的業務を担わされ、学業に専念できない状況等について報告がなされました。
また、エキタス京都の橋口昌治氏から、最低賃金時給1500円の運動について、ご発言をいただきました。年収計算するとそれほどでもないが、不安無く暮らすためには、せめて時給1500円が必要となるとのことでした。
そして、ミナセン大阪の黒河内政行共同代表から、7月の参院選の重要性について、自己の体験を織り交ぜながら、訴えがなされました。
現場からの報告・スピーチの終了後、アピール案が司会から読み上げられ、採択されました。そして、集会スタンディング・アクションとして、「なくせ!長時間労働」、「反対!解雇自由化法」と書かれたポテッカーを参加者全員で掲げました。
最後、連合法曹団の大川一夫弁護士から閉会のあいさつで終了しました。