民主法律時報

書籍紹介 『自治体職員の働く権利Q&A』と『新基本法コンメンタール地方公務員法』

弁護士 大江 洋一

4月に相次いで地方公務員の法律関係についての書籍が刊行された。どちらも日本評論社による出版であるが、一つは、自治労連弁護団のメンバーである弁護士たちの手になるものであり、もう一つは研究者による執筆である。

自治労連弁護団は平成6年に結成されているが、その前史として、労働戦線の統一を巡っての労労間の熾烈な「組合費裁判」を通じて、事件に関わった全国の弁護士たちの交流と連携があり、自治労連の結成とともに、その繋がりをもとに生まれ、発展してきたものである。その意味では、まさに、自治体労働者の権利擁護の第一線の実践部隊と言ってよい専門家集団である。

私もその末席をけがした一人であるが、結成の当時も『自治体労働者の権利』というような表題で類似のものをつくった記憶がある。しかし、当時の時宜に適ったものではあったが、パンフレットというのが相応しい体裁と中身であった。

ところが今回は、れっきとした出版社からの書籍である。自治労連弁護団が、広く社会的な存在として認知されたことを示すものと言ってよかろう。内容的にも、まさに今、職場で様々に問題化している実践的な項目が広く取り上げられており、検討すべき問題点を平易に示し、判例・学説・実例等を偏りなく引用して現状の到達点を明らかにしつつ、今後の方向性についても示す努力をしている。

個々の論稿には執筆者の名がない。これは、まず全体討議が尽くされ、個々の原稿について、編集にあたった者が全体に十分目を通して、偏りがないかをかなり厳しくチェックしたことが窺える。文字通り弁護団が集団責任でその叡智を集めたものと言ってよい。
労働者や労働組合幹部などにとってのみならず、弁護士にとっても、検討の指針と解決の方向性を探る上では、この本が極めて有益であり、是非推奨したい。

あわせて、より突っ込んだ検討を希望されるときは、後者の『コンメンタール』と一緒に活用されることをお勧めしたい。こちらはそれぞれの問題について精通した研究者の執筆であり、理論的要請にも十分こたえるものであって、この両書が相まって地方公務員法を正確かつ遺漏なく学ぶことができる。

現業・非現業・特別職・期限付き職員や臨時職員など地方公務員法制は錯綜しているが、編者の西谷先生が、スマートに整理されており、私のもやもやを吹き飛ばしてくれた。継受したドイツ法には無いこの混乱が、正されるどころか悪乗りされていることに対しての憤りがひしひしと感じられる。「抜本的な発想の転換」によって「労働法と行政法の統一」を図る課題が、今後を担う後輩たちに託されたと言えよう。

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