民主法律時報

個人委託労働者の権利獲得の闘い

JMIUビクターアフターサービス分会 分会長 山 口 則 幸

 2014年2月20日、最高裁はビクターサービス事件で会社側の上告を棄却しました。個人委託労働者の団結権団体交渉権が認められ、会社の団交拒否が不当労働行為にあたるとした大阪府労働委員会の命令が確定しました。個人委託契約であっても、その実情をみて労組法上の労働者といえると判断しました。
 私は、25年前にビクターのサービス会社と、ビクター製品の修理を行う「代行店」として、業務委託契約を交わしました。契約の名称は、業務委託でしたが、実際働き始めると、個人事業主ではなく、待遇面を除けば、社員と変わりありませんでした。社員と同じ制服を着て、サービスセンターに9時までに出社し、朝礼にも社員と一緒に出ました。社員は土・日が休日ですが、私たち代行店はよほどの事情がない限り平日週1回の休日で、社員以上に会社のために働いてきました。業務委託とは名ばかりで、何の自由もなく、社員以上に会社に縛られていました。
 仕事が多い時は、週に一度の平日の休日も返上して働きました。仕事が少なくなり、収入が減っても、会社は何も保証してくれることもありません。仕事が少なくなった時、真っ先に代行店が人員整理の対象になるのも見てきました。一生懸命働いて、体を壊しても、けがをしても何の保証もありません。支払い率を一方的に下げられても何も言えません。一人で何かを要求してみたり、改善を求めても聞いてもらえず、文句を言いたくても契約を解除されるのではないかと、声を上げることも出来ませんでした。
 そんな不安定、無権利な状態をどうにかしたいと思い、代行店の仲間が団結して組合を作りました。団結して、団体で話し合いを求めたら、会社も、きちんとした話し合いの場を持ってくれると思いました。そして組合を結成して、条件の改善のために、会社に話し合いを求めました。
 長年、会社のために働いてきて、会社の一員であると思っていたのに、会社は、私たちの労働組合を認めず、まったく会社とは関係の無い部外者でもあるかのように、交渉に応じませんでした。
 私たちは、会社の団交拒否の不当労働行為をやめさせるために大阪府労働委員会に救済を求めました。そして大阪府労働委員会、中央労働委員会、東京地裁、東京高裁、最高裁、東京高裁差し戻し審、最高裁上告不受理となり、私たち個人請負労働者の労働者性が認められ、委託契約者の団結権、団体交渉権が確定しました。実に団体交渉をするために7審、9年の年月を費やしました。
 この間会社は、団体交渉に応じないばかりか、組合を敵視し、潰すことに必死になりました。業務上必要なパソコンの使用を禁止し、サービスセンター内への立ち入りも禁止し、担当区域の削減、1日の仕事量を7件あったものを3件までと、上限を決めてしまわれました。収入は激減し、生活もできない状態に追い込まれました。さまざまな労働組合や支援の方々のカンパや支援金、物品販売などでこの闘いを続けることができました。労働者の権利獲得のために、頑張ってくることができました。
 ただ、団体交渉をすることのために、労働委員会、法廷闘争で9年もかかることは固定給のない労働者にとって耐えがたいものです。声をあげようとしても、このように長い裁判闘争では声が上げられません。もう少し迅速な解決が必要です。

 社員として雇用するのではなく、個人委託契約にすることによって、人件費や社会保険料の負担、雇用責任の回避が出来ます。最低賃金の保証もありませんから、仕事が無くなっても、ほったらかしにしていてもよいのです。これほど会社にとって都合のいいことはありません。こんな便利な雇用形態はありません。こんな労動者が団結して、会社に自分たちの意見を言える権利を認めた今回の最高裁の決定は非常に有意義なものであったと思います。

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