民主法律時報

働き方ASU-NET 連続講座第1弾 「コロナ禍と憲法・地方自治」のご報告

弁護士 西川 翔大

 働き方ASU-NETでは、「コロナ禍と未来を考える~求められる公共性と日本の課題~」と題して、オンラインでの連続講座(全3回)を行っています。

2020年12月16日(水)19時からの連続講座第1弾では、「コロナ禍と憲法・地方自治~コロナ禍であらためて考える自治体民営化のゆくえ~」というテーマで、東京・八王子合同法律事務所の尾林芳匡弁護士にご講演いただきました。
当日は、オンラインの利点を生かして、これまで面識のなかった全国の方々にもご参加いただき、40名程度が参加されました。

講演では、まず憲法25条2項の「国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という規定を確認しました。これまであまり意識してこなかった規定ですが、新型コロナ感染者数が爆発的に増加する中、国が国民の健康や公衆衛生を支えるため良質かつ適切な医療を提供する体制が確保されるよう努める必要があること(医療法1条の1・1条の3)の根拠となる重要な規定であることが分かりました。

他方で、大阪の保健所の人員体制は橋下大阪府知事(または大阪市長)時代に大幅に削られ、現在のコロナ禍ではその影響を受け、保険・医療は極めて逼迫しています。尾林先生は、コロナ禍の状況下で、これまでの新自由主義的「構造改革」「行政改革」からの転換が改めて求められていることを主張されました。

その後、尾林先生からは自治体民営化の見直しの必要性について説明がありました。1999年に民間の資金やノウハウにより公共施設の建設と調達を行う法律(PFI法)が制定され、多くの自治体で公共施設の建設や整備等の行政サービスが民間企業によって行われるようになりました。しかし、行政サービスの民営化が進むことで、人件費削減のため行政職員は非正規・派遣等に代替し、雇用の不安定化が進み、自治体と大企業との癒着等による行政サービスの低下、公共施設の事故等の発生など様々な問題が生じるようになりました。

尾林先生は、このようなPFIをはじめとする行政サービス民営化の問題点を明らかにし、各地の住民が民営化の動きに反対運動を展開することが重要であるとお話されました。

働き方ASU-NETでは、今後もコロナ禍で改めて浮き彫りになった社会的課題に関してオンラインでの連続講座を行います。次回は、1月20日(水)19時から「コロナ禍と社会保障」というテーマで花園大学吉永純教授に、2月17日(水)19時から「コロナ禍と働き方」というテーマで脇田滋共同代表にご講演いただく予定となっています。まだまだ申込みを受け付けていますので、興味がある方は是非ASU-NETのホームページよりお申込みください。

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