民主法律時報

「なくそう! 官製ワーキングプア」大阪集会に170名が参加

弁護士 南 部 秀一郎


 11月23日、「なくそう官製ワーキングプア」大阪集会が、新大阪マルビルにて開かれましたので、報告します。
 この「なくそう官製ワーキングプア」集会ですが、公務現場で実際に働く非正規職員の方々が、それぞれのおかれた状況について語り、また現場の状況について様々な方向で分析していくことで、制度のスキマにおかれた非正規公務員の問題を解決していこうとする集会です。既に東京では5回開かれていますが、今回集会が東京以外では初めて大阪で開催されるということで、民主法律協会も共催の輪に入りました。集会当日は、秋最後の連休の中でも、170名以上の多くの参加者を集め、会場に参加者が入りきれない大盛況で、大変有意義な集会となりました。

 今回の大阪集会でも、非正規公務員当事者が、それぞれの「たたかい」について、報告しました。神戸刑務所訴訟の原告当事者からは、派遣社員が働くルールすらなく一人で業務を行わざるを得ない状況で、職員に意見をしたら、派遣切りされ、子どもを抱えながら、子どものためにも闘い、勝利に至った状況が報告されました。
 また、労働契約法改正後、非常勤講師・職員に5年以下の更新上限が設定されるなどの改正を無にする脱法的状況が横行している大学の現場からは、大阪大学での労使交渉についての報告がありました。研究者については、「研究開発力強化法」が、労働契約法の5年無期転換ルールを適用しないとしていて、この法律は本集会後、12月臨時国会で成立しています。
 郵政の現場からは、ジョブ型正社員制度が2014年度から導入され、期間雇用の非正規労働者がその雇用形態に移行するとの事前の説明があったのに、実際に概要が発表されると、非正規の職員比率が維持され、ジョブ型正社員制度が、正社員の雇用条件を切り下げるために使われ、非正規雇用をなくす制度になっていないことの報告がされました。非正規の現場が、安倍内閣の労働規制緩和のターゲットとされる生々しい状況の報告でした。
 また、大阪からは、吹田の在宅高齢者・障害者のデイサービス事業に携わってきた生活指導員の方々が、維新市長のもと、民間への業務委託により雇い止めされた事件の原告当事者の報告もありました。民主法律協会からは、同事件の代理人を務めている河村学弁護士が、非正規公務員の雇い止め裁判一般についての報告を行いました。その報告では、「任用行為」という、非正規公務員雇い止めに立ちはだかる大きな壁について説明がされました。しかし、非正規公務員は、法律上の根拠を逸脱した形で採用が広がり、非正規職員の比率が50%を超える自治体もあります。体勢不備の状況で、国・地方自治体が責任を逃れ、結果雇い止めされた公務員が、著しい不利益を被る状況に対し、労働者の声と運動で壁を乗り越えようと、河村弁護士は呼びかけました。吹田の事件についても、20年以上先進的な福祉事業に携わった職員が雇い止めをされ、大きな不利益を受けています。運動を盛り上げて、吹田でのたたかいに勝利できるよう、呼びかけがされました。

 その後も、様々な働き方で働く非正規公務員当事者によるミニシンポジウムや、総務省の非正規職員の調査に関する報告と情報公開請求の呼びかけ、韓国ソウル市の非正規をなくす取り組みなど、盛りだくさんの内容で集会は行われました。締めくくりとして、集会に参加された西谷敏大阪市立大学名誉教授、脇田滋龍谷大学教授、地方自治総合研究所研究員の上林陽治氏の、研究者3氏からの発言がされました。
 非正規公務員は、制度のスキマで、無秩序に広がっており、政府の労働規制緩和の影響も大きく受ける状況にあります。その中で、民主法律協会をはじめとする多くの団体が共催し、多数の参加者を集めた大阪での集会は大変意義があるものでした。大阪では維新の会のもと、組合敵視、安易な民営化と、公務員を「敵」扱いし、非正規公務員が増えています。労働環境も悪化しています。今後も、非正規公務員のたたかいを広げ、誰もが安心して、公務サービスを受けられるものとしたいとの考えを新たにしました。

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