民主法律時報

裁判・府労委委員会例会報告 ―― 労働契約法20条裁判について

弁護士 西川 大史

1 はじめに
2018年4月19日、裁判・府労委委員会の例会がエル・おおさかで開催されました。今回は、労働契約法20条裁判(大阪医科大事件、郵政西日本事件)をテーマとしました。参加者は22名でした。

2 大阪医科大事件について
大阪医科大の20条裁判について、谷真介弁護士から報告をいただきました。大阪医科大事件は、大阪医科大の研究室秘書として業務を行ってきた有期雇用のアルバイト職員の女性が、正職員との間の基本給や賞与等の労働条件が大きく相違することは労働契約法20条に違反するとして提訴した事件です。事案の概要や判決の骨子などは、民主法律時報2018年2月号の拙稿を参照ください。

大阪医科大事件は、原告の請求を全面的に棄却した不当判決ですが、谷弁護士は、判決が、①労働条件の相違の不合理性について、同一・類似の職務内容の正社員労働者がいるのに、大学の正職員全体を比較対象としたこと、②「年収55%」の相違を本人の能力や努力で克服可能で不合理ではないとしたこと、③被告が主張すらしていない「長期雇用のインセンティブ」を強調して、正職員にのみ賞与を支給することも合理性があるとしたことなどの判決の不当性を強調しました。

3 郵政西日本事件について
郵政西日本20条裁判については、河村学弁護士と原告の方から報告をいただきました。郵政20条裁判は、集配業務等を担当する期間雇用社員らが、正社員に支払われている各種手当の支払是正を求めて提訴した事件です。大阪地裁判決は、原告らが請求した手当のうち、年末年始勤務手当、住居手当、扶養手当について不合理な労働条件の相違と判断しており、原告の一部勝訴判決でした。事件の概要や判決の骨子などは、民主法律時報2018年4月号の河村学弁護士の原稿をご覧ください。

河村弁護士からは、判決について詳細な説明をいただき、そのうえで、労働契約法20条は、ワーキングプアと格差克服を目指す非正規労働者保護の運動と社会的世論の高まりの中で、運動の成果として成立したものであること、非正規労働者の労働条件を引き上げる大きな可能性を秘めていることを強調するとともに、積極的な活用と運動の展開を問題提起いただきました。

また、原告の方からは、正社員と同じ仕事をしていたのに正社員と同じように手当が支払われず、しかも年末年始には長期にわたって家族とゆっくり過ごすことができず多忙な業務に力を注いだにもかかわらず、正社員にのみ年末年始勤務手当が支払われていたことなどが悔しくて、原告になることを決意したとの裁判への思いを語っていただきました。また、職場では正社員・非正規社員問わずみんなが裁判を注目していたことなどの報告もありました。

なお、日本郵政では、判決直後に、正社員の住居手当を廃止すると発表しました。判決で、不合理な労働条件の相違であると認定されたにもかかわらず、その住居手当を廃止することに、河村弁護士や原告、参加者からは怒りの声があげられました。

4 意見交換
皆さんの労働契約法20条についての関心は高く、労働契約法20条や両事件についての質問が相次ぎました。
たとえば、両事件ともに、同じ大阪地裁の労働部(裁判長はいずれも内藤裕之裁判長)の判決なのに、結論が異なるのはなぜかといった、裁判府労委委員会ならではの質問も出されました。さらには、本来、非正規労働者の労働条件を引き上げて正社員との格差を是正するための労働契約法 条が、正社員の処遇を下げることで非正規労働者との格差を是正する方向で用いられることの危険性や、非正規労働者の権利を実現すべく裁判所を動かすためにも今後の運動がより一層重要であるなどの意見も出され、闊達な議論・意見交換がなされました。

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