民主法律時報

2019年権利討論集会を開催しました

事務局長・弁護士 須井 康雄

 2月16日、エルおおさかで2019年の権利討論集会を開きました。参加者は235名でした。
全体会では、南山大学法学部教授の緒方桂子先生(@Keikolein)に「非正規労働者をめぐる情勢と労働組合の取り組み」をお話しいただきました。

緒方先生は、職場における平等や非正規労働者の均等待遇を研究テーマとされています。権利討論集会の前日に、非正規の職員にも賞与相当額の一部支払いを命じた大阪医科大学事件の逆転勝訴判決が大阪高裁で出ました。このような朗報のなか、実にタイムリーなご講演となりました。

講演内容ですが、労働組合には、①非正規労働者の雇用安定の現実化、②均等、均衡処遇の現実化、③働き方改革推進法に向けた対応が求められるとのことでした。

雇用安定の点は、5年目の不更新を阻止できれば、年度末の不安感を解放され、働き続ける決心もでき、より高い技能を身に着けるための努力もする、労働者本人にも会社にもプラスの効果があると述べられました。そして、更新の合理的期待がある場合に更新拒絶を認めないと定める現在の労働契約法19条の由来となった日立メディコ事件最高裁判決について触れ、その事件では、①労働契約書に更新欄があらかじめ印刷されていたこと、②臨時員就業規則に年次有給休暇、定期健康診断、予防接種が規定されていたことという2つの事実だけで、雇用関係の「ある程度」の継続が期待されていたと認定されたものの、非正規労働者の実際の定着率が低かったことから、更新の期待が低かったとして敗訴したとのことでした。そのうえで、緒方先生は、期待というと個人の主体的意思に着目した表現に聞こえるが、「合理的期待」というのは、社内にいる有期労働者を会社がどういう風に制度的に扱おうとしているかが問われているのではないかと指摘し、更新期限を5年とする制度があっても、5年は無期転換権が発生する期間であり、そもそも労働者は無期雇用でもいつでも退職できるので、労働者の側から有期の契約を結ぶ合理的な理由は全くなく、会社にとってのみ解雇規制の回避として合理性があるような制度は労働契約法 条の雇用安定という趣旨に反し、不更新条項の是認は違法な制度に裁判所が手を貸すことになると指摘されました。

続いて、均等・均衡待遇の点ですが、①手当型、②コース区分型、③定年後嘱託型があり、①と③は最高裁判決が出て、最高裁は、非正規労働者の場合、合理的な労働条件の決定が行われにくいという前提で格差の是正が必要だという認識を示したとされました。ただ、均衡のとれた処遇の考え方として、(ア)労働条件の格差と職務などの違いの程度が一致すべきだという比例的均衡の考えをとるのか、(イ)労働条件の違いと職務の違いは厳密に一致していなくても法的に許される範囲にあればよいというグレーゾーン的な考えをとるのかは明確でないとされました。しかし、いずれにせよ、最高裁は、不合理ではないことの説明を会社に課したものであり、団体交渉で取り組んでいく重要性を強調されました。

緒方先生は、なぜ格差が許されないかを強く訴えました。1つは、憲法14条の平等原則に反することです。2つ目は、労働条件が相当低く、生活を脅かすほどの水準であり、生存権(憲法25条)の保障にも抵触することです。憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活」と定めており、死ななければよいというレベルではないのです。3つ目は、不合理な格差は、個人として生きてきてこの社会にいるという個人の尊厳(憲法13条)を侵害することです。人はその労働に対し等しく報われなければならず、このことは、人格の価値を平等とみる市民法の普遍的な原理であり、ここに格差是正に取り組む根本的な価値があるとのことでした。

最後に改正法との関係で、労働組合には、何が困っていて、どこを改善してほしいかをきちんと聞くことが求められている、病気休暇などを求めているケースも多い、求めるものは違うが、内部で話をして、どこから手を付けるかを決め、処遇決定理由の説明を求めることが重要であると話されました。

記念講演のあと、奈良学園事件の不当労働行為救済命令と大阪医科大学事件の大阪高裁逆転勝訴判決の報告、外国人労働問題と憲法改正反対の行動提起がありました。
続いて、①外国人労働問題への取組強化、②憲法9条改正反対、③都構想・カジノに反対する決議を採択しました。

午後からは7つの分科会に分かれて、学習や経験交流を行いました。今年は、外国人問題と雇用によらない働き方の分科会が新たに開かれました。内容は、各分科会の報告に譲りますが、いずれも充実した学習と議論がなされました。
懇親会は、79名が参加し、各参加者に争議や情勢への取組をご紹介いただきました。また、音楽ユニオンの皆さんに楽曲を披露していただき、大変好評でした。
この権利討論集会で得た経験や人とのつながりを活かし、さまざまな課題に取り組んでいきましょう。

 

 

 

分科会報告


第1分科会 裁判闘争、労働委員会闘争における課題と展望 (報告:弁護士 足立 敦史)

1 はじめに
第1分科会は、パネルディスカッション方式で、前半は「不当労働行為とどう闘うのか」団交と街宣の実践について、後半は「どうなっているの? 裁判所」裁判所・労働委員会の活用方法について討論を行った。
2 「不当労働行為とどう闘うのか」(前半)
(1) パネラーは自交総連・庭和田裕之氏と航空連エミレーツ分会の方で、司会は西川大史弁護士が担当された。
(2) まず、団体交渉の要点について検討し、庭和田氏は、団交要求の按配を意識することが大事で「取り過ぎてもいけない」と注意喚起された。エミレーツ分会の方は、団交が終始会社ペースで進んだことの反省から、「団交獲得目標の明確化」の重要性を話された。続いて、団交対応について事例を挙げて検討し、会社が団交を規制してきた場合、会社のペースに乗らず、団交に応じなければ抗議することが本筋であること等が確認された。
(3) 次に、街頭宣伝について、庭和田氏は、街宣中にロープを張って通行を妨げない等「徹底して配慮することが重要だが、そのための工夫が継承されていない。」と問題提起をされた。エミレーツ分会の方は、「一番堪えたのは宣伝だった」と会社が本音を漏らしていたと街宣の実効性を報告された。
(4) 最後に、庭和田氏は、争議に踏み切るには「家族の理解と経済的基盤が最も大事。」と話され、エミレーツ分会の方は、「当事者への支援と寄り添いが何よりも支えになる。」とまとめられた。
3 「どうなっているの?裁判所」(後半)
(1) パネラーは、建公労・松澤伸樹氏、大阪争議団共闘・新垣内均氏、増田尚弁護士で、司会は、原野早知子弁護士が担当された。
(2) 松澤氏は、裁判所の問題点として、アクアライン仮処分事件を挙げ「担当裁判官が保全の必要性について他の裁判官の意見を聞いて突然方針を変更した。」等の問題点を報告された。新垣内氏は、パナソニックAIS配転事件に触れて「大阪地裁5民の裁判長は社会問題になっている介護問題を無視し、1986年の最高裁の判断枠組みを出ようとしない。」と問題点を報告された。増田弁護士は、これらの原因について「安倍政権になってから、官僚的統制がより強くなり、高裁で判断がひっくり返るのを恐れる傾向がある。」と分析された。
(3) 労働委員会の問題点について、松澤氏は、「中労委に行くのが大変。北港観光事件では中労委の西日本分室で開催できた。」と報告され、新垣内氏は、「命令が出るまでが長い。事務局の人手が少ない。」と体制の問題点をコメントされた。
(4) 裁判所と労働委員会の活用について、併用した場合、会社の出方が分かるメリットや、よくない判断が相互に影響しあうデメリットがあると確認された。増田弁護士は、「事件の性質により十分な協議・検討が必要。10年前の労働委員会はひどかった。裁判所・労働委員会に労働者を救済させるよう、どう変えられるかが課題。」と指摘された。
4 おわりに
分科会参加者は50名で、パネルディスカッション方式により問題点が浮き彫りになり、会場からの発言が絶えず、現場での掘り下げが進んだ。遠藤昇三名誉教授より、労働組合運動の再構築についてもお話頂いた。労働争議は最終的には労使間の話合いで決着するものであり、裁判・救済命令もその手段の一つにすぎないが、裁判・救済命令を有効活用するためにも運動が重要であることを学んだ。

第2分科会 直接雇用原則を取り戻そう (報告:弁護士 片山 直弥)

 第2分科会では、「直接雇用原則を取り戻そう」をテーマに議論が行われました。参加者は15名でした。
 第1に、村田浩治弁護士から労働者派遣法の歴史についての解説を頂きました。
派遣労働は直接雇用原則の例外として位置づけられており、労働者派遣法は例外的な取扱いであることを前提にいわゆるポジティブリスト方式(=例外として許されるものを列挙する方式)で成立しました。その後、規制緩和によっていわゆるネガティブリスト方式(=例外として禁止するものを列挙する方式)に転じてその後原則と例外が曖昧になっていったのです。労働者派遣法の歴史を省みることは、直接雇用が原則であることを確認するとともに、今後派遣の働き方が広がるおそれがある中で労働組合がその問題点(=「例外」と「原則」の曖昧となっている点)を認識して組合運動としてどう取り組むかが重要になっていることを確認するきっかけとなりました。
 第2に、安原邦博弁護士から2017年9月以降行ってきた派遣労働者のためのネット相談(実態把握のためのアンケートを含む)、2018年11月に行った派遣労働者のためのホットラインについての報告を頂きました。
ネット相談はネットで寄せられた相談に弁護士がメールで回答するというもので、ホットラインは電話で寄せられた相談に弁護士がその電話で回答するというものです。ネット相談は時間的制限がないこともありホットラインに比べると派遣労働者も相談しやすいようだ、との所感を頂きました。今後も派遣労働者が相談しやすい仕組みを作り、派遣労働者の労働実態を把握していくことの必要性が確認されました。
 第3に、現在係属中の各裁判についての報告を頂きました。報告を頂いた事件は、①ライフ社(対東リ)事件、②全港湾事件、③大阪医療刑務所事件、④派遣通勤費訴訟の4つで、①ないし③では労働契約申込みみなし制度の適用を主張する上で争いになっている点について報告があり、④では労働契約法 条を根拠に格差是正を主張する上で争いになっている点について報告がありました。
 第4に、ご自身も派遣労働者として働いていた経験を持つ山本さん(仮名)から現在の派遣業界について報告を頂きました。
オフレコということでお話いただいた内容もありますので、詳細は割愛します。ただ、弁護士が議論している内容(例えば、派遣労働者の直接雇用化)と実際の派遣労働者が望んでいる内容との間にずれがあるのではないか、実際の派遣労働者の中で直接雇用を望んでいる人は8割もいないのではないか、という指摘にはとても驚きました。今後どのような運動を進めるか、を考える上で無視できない点であると思います。
 最後に、各労働組合からこの間の取組みについて報告を頂きました。中には派遣労働者に関する労働協約を締結しており、条件を満たせば正社員となることができることを明確にしているところもありました。派遣労働者に関するモデル協約書を作って交渉をしてはどうか、という意見が出るなど活発な意見交換・交流がされました。私もこの日頂いた意見を今後の活動に活かしたいと思います。

 第3分科会 働き方改革から見る非正規労働者が現場で使える規定 (報告:弁護士 鶴見 泰之)

第3分科会では、「働き方改革から見る非正規労働者が現場で使える規定」をテーマに、報告、議論が行われました。参加者は事前申込者数よりも10名も多い37名でした。
 パートタイム労働法が改正され、有期雇用労働者も規定の対象となったこと、均等待遇に関する規定が有期雇用労働者にも適用されることになったこと、また、均衡処遇に関する規定が、従来の「短時間労働者の待遇」という文言から、より具体的に「短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇」と改正されたことなどを当職が報告しました。
谷弁護士からは、不合理な待遇の禁止等に関するガイドラインを説明していただきました。通常の労働者よりも待遇の水準を低く設定した新たな管理雇用区分を設けることによって均等待遇・均衡処遇を回避することはできないこと、定年後継続雇用労働者もパートタイム労働法8条の「その他の事情」にあたること、「賞与」が「手当」の項目から独立したことなど、2016年に公表されたガイドライン案から変更された点を紹介していただきました。
 労働契約法20条に関する裁判の報告を2件していただきました。
1件目は、谷弁護士及び原告の方から、権利討論集会の前日に言い渡されたばかりの大阪医科大学事件の大阪高裁判決を報告していただきました。非正規職員に賞与を支給しないことが不合理であると判断したことは画期的です。
郵政ユニオンの森田さんからは、郵政西日本裁判の大阪高裁判決を報告していただきました。雇用契約期間が5年を超えているか超えていないかで線引きをして、5年以下の契約社員に、祝日給、夏期冬期休暇、病気休暇を支給しないことを不合理とはいえないと判断したことについて、疑問が投げかけられました。
 毎年恒例となった寸劇が今年も行われました。常勤職員に対して非常勤職員へ契約内容の変更を迫る使用者とのやり取り、 分未満の時間外労働を切り捨てようとする使用者との交渉の様子、労働基準監督署の受付で、監督官を呼び出すための交渉の仕方を、労働組合や当事者の方々が演じました。
 関西圏大学非常勤講師組合の江尻さんからは、立命館大学では、2016年度からの採用者について雇用期間を通算5年とする就業規則を作成したこと、大学は制度の廃止を拒否していることや、関西大学などで非常勤講師に大学教員任期法を適用して無期転換権を 年に引き延ばしていることなどが報告されました。
大阪府内の教育機関の当事者の方からは、勤務している学校とのこれまでの闘いが報告されました。出勤日数が他の常勤教員よりも少ないことを理由に差別的取扱いを受けたことがきっかけで、紆余曲折があったものの非正規組合に加入しました。その後、経営悪化を理由に、常勤教員から非常勤講師へ契約内容を変更することを学校側から告げられたので、労働組合に相談したところ、真剣に取り合ってくれないので、地域合同労組に加入し直し、団体交渉を行った結果、常勤教員の地位のまま契約が更新され、無期転換の申込みも行えました。
金融ユニオンの浦野さんから、三菱UFJ銀行では2015年から無期雇用制度が導入されたものの、労働条件は有期雇用のときと変わらず、臨時給与も退職金の支給もないこと、昼食手当が正規職員よりも低いことなど、厳しい現状が報告されました。
自治労連の仁木さんから、会計年度任用職員制度の解説が行われました。現在、大阪府下の自治体では、非正規職員の割合が %を超えるところが多く、2020年4月から、非正規職員が会計年度任用職員という位置付けになること、会計年度の雇用しか保障されておらず、いつ雇止めをされるのかの不安を抱えながら働いていることなどが報告されました。

第4分科会 考えよう! 働き方改革関連法徹底利用 (報告:弁護士 和田 香)

1 はじめに
第4分科会は、『考えよう!働き方改革関連法徹底利用』と題し、分科会を開催した。
分科会は、2部構成とし、第1部では、井上耕史弁護士を講師に迎え、『改正労基法徹底利用! 過労死防止に改正労基法をどう使うか』として講演を頂いた。
第2部では、『ハラスメントと闘う!近年の傾向と対策』として岩城穣弁護士に講演頂いたうえで、ハラスメントを受けた当事者2名の方から事案のご報告を頂いた。
そして、参加者から各職場の現状や取り組みを発表頂いたり、全国過労死をなくす家族の会からの参加者から訴え等を頂くなどした。
以下、報告を行う。
2 講演『改正労基法徹底利用! 過労死防止に改正労基法をどう使うか』
働き方改革一括法について、悪法ながらこれをいかに利用するかは、難しいながら重要な問題である。
講師の井上弁護士からは、有給休暇の付与の義務化、客観的な方法による労働時間の把握義務等、従前の労基法の規定から前進した部分についての説明と共に、高度プロフェッショナル制度の導入に関して労働組合の役割が一層重要となったことの指摘等があった。
また、参加者から、附帯決議の内容が紹介され、これを活用すべきとの指摘もなされた。
さらに、参加者の各職場における労働時間の把握の現状や労働者の過半数を獲得するための取り組み、有給休暇の取得状況等が報告された。その中で、運転労働に従事する労働者から、労働時間規制が必要な職場であるにも拘らず、今回の労働時間規制の対象外となっていることに対する落胆の意見が出された。
また、過労死の遺族や参加者から、自分たちの子どもが長時間労働に従事していること、親として言い聞かせても責任感などから長時間労働の職場で勤務を続けていることに対する強いジレンマの声もあり、労働者と家族の間の温度差を感じると共に、真面目な労働者を過労死させる社会の仕組みの一端を感じた。
3 講演『ハラスメントと闘う! 近年の傾向と対策』及び労働者の報告
近年、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメント等の上位概念としてハラスメント、という言葉の利用が提唱されている。
講師の岩城弁護士からは、ハラスメントには様々な類型があること、長時間労働とハラスメントが組み合わさったときに特に労災が起こりやすいことなどが紹介された。
その上で、実際にハラスメントを受けて精神疾患に罹患し、労災や民事訴訟を戦っている当事者の方からの報告を頂いた。職場でハラスメントが起きた場合に被害労働者のその後の人生に与える影響の大きさを改めて感じる報告であった。
4 おわりに
分科会参加者は28名、大学生や議員事務所の職員など幅広い参加者を迎えて、それぞれ活発な意見交換がなされた。特に、各職場の現状に関する報告や、職場で過半数を獲得するための非正規労働者の取り込みなどの活動報告は現在の労働環境を知ることのできる貴重な機会であった。

第5分科会 雇用によらない働き方は自己責任でよいのか? (報告:弁護士 加苅 匠)

第5分科会では、「雇用によらない働き方は自己責任でよいのか?」と題して、雇用によらない働き方をテーマに議論しました。参加者は21名でした。
第1部として、出版ネッツ(出版業界で働くフリーランスのユニオン)元委員長でジャーナリストの北健一さんより、情勢や厚労省検討会での議論状況について基調報告をしていただきました。フリーランス保護の方向性として、「労働者概念の見直し(拡大)」や「優先度の高い課題について個別法等での対応」があることや、現状でも労働組合を活用した保護の在り方があることについて解説いただきました。
第2部では、雇用によらない働き方の実態を知るために、それぞれの団体より、職場での問題や実際のトラブルについて報告を頂きました。
自交総連の松下末宏さんより、新しい働き方として注目されているライドシェア問題について報告していただきました。出版ネッツ関西でトラブル相談を受けている山崎亮一さんからは、関西の出版業界で実際に発生したトラブルの内容、それに対する出版ネッツの取組みについてご報告いただきました。音楽家ユニオンの藤田直子さんとユニオンに所属する音楽家の方々からは、音楽家の働き方や音楽家ユニオンの取組みについて報告いただきました。それぞれの職種で働くフリーランスの実態や問題意識を共有することができました。
第3部では、雇用によらない働き方保護のあり方について議論しました。岩佐賢次弁護士より、独占禁止法を活用したフリーランス保護の在り方について「人材と競争政策に関する検討会報告書」(公取委、2018年2月)の報告がありました。また、西川翔大弁護士より、フリーランスについて労基法上及び労組法上の労働者性が争われた事例について報告がありました。
雇用によらない働き方は多種多様であり、その保護の在り方も新しい論点で、引き続き議論が必要です。フリーランス自身は、まだまだ自分の働き方に着目されていることやトラブルの解決方法を知らないのが現状です。雇用によらない働き方が着目され、その保護の在り方が議論されていること、現状でも労働組合を活用した解決方法が存在することを、広く周知することが必要であることを共有することができました。

第6分科会 あなたの職場にもやってくる外国人労働者 (報告:弁護士 清水 亮宏)

第6分科会では、「あなたの職場にもやってくる外国人労働者」と題して、外国人労働者の問題について議論しました。労働組合やマイグラント研究会のメンバーなどが参加し、参加者は28名でした。
分科会は3部構成で行い、特に外国人労働者から労働相談を受けた際の対応について重点的に議論しました。
第1部「先行する労働組合の取組みに学べ」では、徳島労連書記長の森口英昭氏から「外国人技能実習生の相談活動について」と題してご講演いただきました。繊維業における外国人技能実習生(中国人が中心)の劣悪な働き方(長時間労働、時給300円の低賃金労働、寄宿舎の寮費や光熱費が賃金を低く抑える手段となっている実態など)を紹介いただきました。また、留学生への通訳の依頼や、中国語教室の開催など、言葉の壁を乗り越えるための取組みについても報告いただきました。
第2部「外国人就労の仕組みと外国人労働者の抱える問題」では、マイグラント研究会所属の弁護士が取り組んでいる外国人労働者の労働事件を紹介しながら、外国人労働者を取り巻く諸問題について学習しました。技能実習生の残業代請求事案の紹介では、ベトナム人技能実習生の当事者から、経緯や思いについてご発言いただきました。その他、技能実習打ち切り事案や労災事案の紹介を通じて、在留資格の問題や外国人労働者に多発している労災事故の問題などについて議論・学習しました。
第3部「あなたは外国人労働者の相談に対応できるか」では、参加者を6~8人程度のグループに分け、あらかじめ用意した設例について、労働組合としての対応を議論しました。日本語を話せない労働者から突然相談があった場合にどのように対応するか、在留期限が迫っている労働者の解雇事案について労働組合としてどのように対応するかなど、外国人労働者の特有の問題について、議論と解説を通じて学びました。
外国人労働者の増加が見込まれる中で、外国人労働者の問題を共有する良い機会となりました。

第7分科会 改憲を阻止するための運動論~発議されても諦めない~ (報告:弁護士 辰巳 創史)

第7分科会は、「改憲を阻止するための運動論 ~ 発議されても諦めない~」と題して、国民投票が実施された最悪の場合を想定して、どのような運動を行うかの方法論を実践的、具体的に議論した。
分科会の前半は、広告代理店に勤務している方を講師に迎え、人を振り向かせるには、人の注意を引き付けるにはどうしたらいいかの方法論を具体的に話していただいた。
ある商品を買ってもらう広告をする場合は、いきなり「買ってください」では、人は引いてしまう。恋愛に例えると、ある人と交際したいと思っても、いきなり「付き合ってください」ではなく、普通は、まず好きになってもらうために様々なアプローチをするはずである。エジソンは、トースターを買ってもらうために、まず一日3回食事をするよう人々に啓蒙した。そうすると、パンを食べる機会が増えるからである。このような例をたくさん引きながら、具体的に話してもらった。さらに、事前に参加者から提供していただいた、実際に街頭で配布したチラシも講師に見てもらい、評価してもらった。詳細は後の報告に譲るが、どうも我々の作るチラシは、文字が多く、結論を押し付ける傾向にあるようである。また、講師から、多くの人に伝えるために、SNSがいかに重要か、立憲民主党の行った例を挙げて解説していただいた。
その後、杉島幸生弁護士から、パワーポイントを使って、分かりやすく国民投票運動でできることを解説してもらい、参加者数名から、実践の報告もいただいた。
分科会の後半は、参加者を4名ほどの小グループに分けて、ワークショップ形式で、実際にどんな運動をしたいかを議論した。参加者全員が議論に参加するという形式は、新鮮な試みであり、前半の講義も踏まえて、ユニークなアイデアが多く出された。
西晃弁護士から、チラシなど宣伝方法の工夫は必要だが、我々の運動としては、立ち位置を明確にして宣伝を行うこと、すなわち、「私たちは、憲法改正に反対です!」ということを明確に打ち出すことは、やはり重要であるということが確認された。
分科会参加者は22名であった。

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